女子高生チームがロケットを製作
2008年10月に開かれたロケットガール養成講座の様子(写真:秋田大学ものづくり創造工学センター提供、下も)
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 養成講座に集まるのは、ものづくりに興味はあっても、ロケットの実物すら目にしたことのない高校生。複数のチームが開発結果を持ち寄り、全体システムを最適化するタイプの開発プロジェクトなど体験したことはない。それぞれのチームが持ち寄る成果が一つでも欠ければ、目標は達成できない。それどころか、一つの失敗ですべてが無に帰す可能性がある。

 「高校生にとっては、製作期間や技術的にかなりハードな目標。正直、作れるとは思っていなかった」と、土岐教授は振り返る。

 ロケットガールのプロジェクトには、女子高生の製作体験だけでなく、もう一つの仕掛けを組み込んだ。主に指導するのは、大学の先生ではない。製作のヒントを与える役目は、理工系の大学に通う女子大生の先輩が担う。ものづくりに興味を持つ女子高生に、ロールモデルの存在を示すためだ。

 「日本は女性研究者の割合が欧米に比べ半分以下。でも、科学に興味がある女性は少なくない。同じ理工系でも医薬系には一定の割合で女子が進学します。それは、ロールモデルがいるから。先輩たちの存在を示すことが大切と考えた。指導役の大学生にとっても人に教えることで、自分を見つめ直し、成長することにつながる」

 土岐教授は、こう狙いを話す。

顔つきが変わる高校生

ロケットは打ち上がった
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 最初に集合した女子高生たちの顔には、興味だけで何が何だか分からず途惑う表情が浮かぶ。だが、数カ月の製作期間、合宿などを経て、女子高生の顔つきががらりと変わる。プロジェクトを通じて追い込まれ、自分が担当する開発工程への“責任”が生まれるためだ。

 ロケットガールたちの取り組みに土岐教授は目を見張った。彼女たちが、短期間に意外なまでに多くのことを吸収したからだ。ロケットは無事に完成。うまく動かない部分もあったが、ロケットは打ち上がった。秋田での取り組みが話題になり、「ロケットガール養成講座」はその後、東京など他の地域にも広がりつつある。

 「これはいける」――。

 土岐教授らは、高校生が持つ無限の可能性にものづくりの将来を賭けた。ロケットガールの成功で、高校生を対象にした宇宙技術の全国大会「缶サット甲子園」プロジェクトが実現に向けて大きく動き出した。

―― 次回へ続く ――