このウェブ・サイトの編集に携わるようになって,理工系の大学生の声を聞く機会が格段に増えたことを,前回のコラムでお話ししました。ただ,これまでの取材先は社会人の技術者や経営者がほとんどだったので,学生へのコネクションが特にあったわけではありません。そんな私を助けてくれているのが,学生時代の友人です。

 高校時代の部活の同期が5人いるのですが,卒業後20年以上たった今も,彼らとは年に数回会うほどの付き合いが続いています。偶然ですが,5人とも大学は理工系に進み,その後は企業に就職しました。私も学生生活や就職活動,会社生活の経験はありますが,それは自分一人の体験談に過ぎません。「ほかの人はどうなのかな」と思ったときに,気軽に話を聞くことができるのが,こうした友人です。実は,前回のコラムでお話しした「大学での研究と,就職後の仕事の結びつき」についても,彼らの意見を聞いたりしています。

 一方,大学時代の同期や先輩・後輩とは,卒業後これまで,あまり会う機会はありませんでした。理工系大学ですので,学生時代に読者の皆さんと同じような経験をしてきた人は,たくさんいるはずです。そこで,ちょうど7月に大学の部活のOB会が開かれることを知り,十数年ぶりに参加してみることにしました。ただ,OB会に参加する同期のメンバーが他にいなかったため,心細く思いながら参加することになりました。会場に行ってみると,同期だけでなく,比較的年齢の近い先輩・後輩もいません。はるか年上の先輩と,顔を見たこともない若い後輩ばかりです。

 それでも,自己紹介を兼ねた一人ひとりの簡単なスピーチをキッカケに少しずつ溶け込んでいったのですが,このとき大きな助けになったのが2年下の後輩I君です。少し遅れて会場に入ってきたI君は,毎年のようにOB会に参加しているようで,はるか年下の後輩とも顔なじみのよう。I君にたくさんの後輩を紹介してもらい,一気に皆とうち解けました。

 こうなれば,話は弾む一方です。2次会に場所を移して,大学のこと,就職のこと,会社のことなど,次から次へといろんな後輩の話を聞きながら,私も自分の体験談などを話しつつ,このウェブ・サイトのことも紹介しました。

 さらに,今回のOB会に参加したことがキッカケとなり,後日,私が関西に遊びに行くときに,大阪在住の同期の二人と約15年ぶりに会うことになりました。学生時代の友人とはありがたいもので,会った瞬間にお互い15年前の仲に戻り,ざっくばらんに話ができます。すぐに飲み放題付き2時間3000円の居酒屋に行き,話に花を咲かせました。しかも,幸運なことに,二人とも会社勤めを経て大阪大学の准教授と招へい准教授になっていたので,会社と大学のそれぞれの話を聞くことができました。

 今回お話ししたのは小さなエピソードですが,社会に出ると,気軽に話を聞けたり相談できたりする相手がとても大切になります。そんなとき,力強い味方になってくれるのが学生時代の友人です。ときには,損得を度外視してまで相談に乗ってくれる。これほど心強いことはありません。そこまで強力な味方を,社会に出てから“仕事の関係”を超えて作ろうと思ってもなかなか難しいと,多くの人が言います。私もそう思います。学生の皆さんには,「生涯の友」となる友人を,ぜひ学生のうちに作ることをお勧めします。