1965年の就職人気ランキング1位は東洋レーヨン(現東レ)、2位は大正海上火災保険(現三井住友海上火災保険)、1970年の1位は日本航空、2位は日本IBM。時代とともに産業構造は変遷し、企業の浮き沈みも当然あります。フィンランドの携帯電話会社、ノキアはもともと製紙・パルプ会社だったし、金属加工業で創業したシャープの社名の由来は大ヒットしたシャープペンシルでした。

 石油から太陽光などへのエネルギーシフトが進んでいけば、20年後、30年後は油断ではなく、「陽断大敵」「陽断禁物」と言われる時代になっているかもしれません。そんな時代に、産業界はどうなっているのか。シャープは電力会社になっているかもしれないし、石油元売り会社は燃料電池会社になっているかもしれません。中部国際新空港では6月27日、警備・案内業務用として1人乗りの電気自動車が実用化されましたが、航空、鉄道、電気自動車などで公共交通機関の棲み分けも変わっていくでしょう。

 企業の本業がいま絶好調でも、それにどれだけの将来性があるのか、果たして進化を続けられる分野なのか。本業以外の事業で、中長期的な収益源に育てていくための種まきはしているのか。日経ビジネスではかつて「会社の寿命は30年」と唱えましたが、先を読む力とそれを実行する力は企業が活力を生むうえで極めて重要です。

 外交力、政治力は国際的に非常に心もとない日本ですが、世界がいま必要としている環境・省エネルギー分野の技術力では抜きん出たものがあります。経済・政治の大転換期と言われる時代だからこそ、これまでは業界の下位だった企業が別の業界の上位に一気に転じる可能性は十分あるでしょう。大転換期は常識も変わります。これまでの常識に捉われすぎて、常識的なことを守り続けることがむしろ「油断」になってしまう時かもしれません。