難しい「会社の正体」の見分け方

 私自身は20数年前の就職活動の際、活字でも映像でもいいから自分で何か情報を発信したいと考え、新聞社、出版社、テレビ局を受けました。その時は「会社の実利と道徳のバランス」といったことは真剣に考えませんでしたが、「犯罪報道と人権」というテーマにはいろいろな関心を持っていました。今から振り返ってみると、これがメディアにおける実利と道徳の問題だったのかなぁ、と思います。

 今でこそ、誰かが逮捕された時、「○○容疑者」と報道されますが、当時は「逮捕された○○」と呼び捨てで報道され、起訴されると「○○被告」とする報道が一般的でした。こうした呼称問題に加え、どんな場合に匿名で報道するかという匿名報道問題もよく議論されていました。

 メディアにとってはセンセーショナリズムに走った方が世間の関心を喚起し、一見すると実利に結びつきそうですが、度を過ぎたモラルなき報道はやがて信頼を失い、実利にもならないケースが多いわけです。言論の自由、表現の自由とも絡み、このバランスは極めて難しい問題です。

 モノとしての会社と、ヒトとしての会社。会社にとっての実利とモラル。強い会社と、良い会社――。皆さんも就職活動をしている時、どこまで意識しているかどうかは別にして、会社のこうした2つの面を考えているのではないでしょうか。

 こんな不況の時代でも、きちんと利益を出していて、株価も極端には下がっていない会社がいい……。しかし、待てよ。いま株価が上がっていても、これは短期的な現象ではないのか。いま利益が出ているといっても、リストラをした結果であり、一時的なものではないのか。中長期的な成長力、潜在的な技術力、研究開発力、組織力などを考えると、必ずしも現在の株価や利益水準だけでは推し量れないなぁ……。こんな思いを巡らすこともあるでしょう。

 モノであり、ヒトでもある会社の正体をつかむことは、彼女や彼のココロを読むことより難しいことかもしれません。利己的な側面がある一方で、「会社は社会の公器」と言われるように、株式を公開していれば一段と公的な側面も問われます。会社選び、会社研究ということはそれだけ大変なことですが、会社について真剣に考えておけば、就職した後もきっと役に立つことでしょう。就職活動はいい機会ですから、あっさりと思考を停止することなく、深く考えてみて下さい。