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モノでありヒトである会社との縁

梅谷 哲夫=日経ビジネス 編集長
2009/06/22 15:00
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 皆さん、はじめまして。このコラムでは、新聞や雑誌が取り上げた主にビジネスに関する報道を題材に、学生の皆さんへのメッセージを綴っていきたいと考えています。新聞や雑誌を読む人も、読まない人もどうぞお付き合い下さい。

 今回は「株主総会」の報道が多いシーズンなので、「株主」や「会社」について考えてみたいと思います。3月期決算企業の株主総会は毎年この時期にピークを迎え、2009年の上場企業の株主総会は6月26日に最も集中して開催されます。今年は、「もの言う株主」とされる投資ファンドの存在感が低下した、という報道が目立っています。世界的な金融危機で投資ファンドが勢いを失い、保有する企業の株を買い増すどころか、相次いで売却せざるを得ない状況に追い込まれたからです。

 経済のグローバル化、とりわけ金融のグローバル化を受けて国際的な企業買収が活発になり、「会社は誰のものか」という議論が幾度となく繰り広げられてきました。「株主総会で数的な優位をもって議案に影響力を行使できるのは株主だから、会社は株主のものだ」。いや、「いくら株主がおカネで会社を支配しようとしても、経営者や従業員がソッポを向いて働かなくなったり、会社を去って行ったりしてしまえば元も子もないから、会社は株主のものとは言えない」――。こんな議論に対して1つの明快な論考を展開したのは、東京大学の岩井克人教授でした。

 岩井教授は著書「会社はこれからどうなるのか」「会社はだれのものか」を通じて、会社=法人企業は「2階建ての基本構造」をもっていることを喝破しました。会社は2階部分ではモノとして扱われ、株主に株式を通じてモノとして所有されている。一方、1階部分では会社はヒト(法人)として扱われ、工場やオフィス、商品、特許といった会社の資産を所有しているのです。

 奴隷制度があった昔はともかく、近代社会ではヒトがヒトを所有することはありません。ヒトはモノを所有し、モノはヒトに所有される。従って、会社は「法人」という法律上のヒトという性格を与えられ、モノである会社資産を所有しているのです。皆さんが会社に就職する際も、ヒトとしての会社と雇用契約を結ぶことになります。

 他方、株主が所有するのはモノとしての会社です。株式という側面から見ると会社はモノであり、モノだからこそ株主に売買される。この観点からは、「会社は株主のもの」といえます。ただ、例えば株主がある食品販売会社の株式を所有しているからといって、その会社の店舗を訪れて商品をタダで食べたら、窃盗罪で訴えられてしまいます。株主が所有しているのはあくまでもモノとしての会社(2階部分)であり、ヒトとしての会社が所有している会社資産(1階部分)ではないからです。

 会社とは、妙な2重構造を持つ悩ましい存在。ジキルとハイドのような二重人格ではなく、物格と人格を併せ持っているのです。このうち2階部分のモノを強調してきたのが「株主主権論」で、米国型の会社のあり方。1階部分のヒトを重視してきたのが日本型の会社のあり方と言えるでしょう。もっとも、会社が2つの性格を持っている以上、結局は両方の部分をバランス良く保つことが重要です。株主にとっても、経営者や従業員にとっても、さらには取引先や地域住民にとっても良い存在となることが求められます。

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