コスト構造を抜本改革 損益分岐点を引き下げる

——この1年余り,厳しい状況が続きましたが,アルプス電気の最近の状況はいかがですか。

片岡 2009年の初頭には,受注が前年同月比60%減という月もありましたが,夏ごろからわずかながら上向く傾向が出てきました。しかし,受注水準は過去数年の平均の70〜75%程度で,本格的な回復にはまだ至っていない状況です。市況を見てみると,売り上げの伸びがあまり見込めないなか,さらに円高が直撃しており,デフレをより深刻なものにする恐れが出てきています。政府の経済政策や為替動向の影響いかんでは,景気の二番底が懸念されており,電子部品業界の先行きも予断を許さない状況が続いています。

——この状況にどう対応しているのですか。

片岡 今回の危機は1990年代前半のバブル崩壊以上に深刻なものであり,経営構造を根本から見直さなければ,乗り切ることはできないでしょう。短期的な改善策と中長期的な改革を,同時に進める必要があります。

アルプス電気においても,早期には売り上げの増加が期待できない状況で,収益改善施策やコスト構造を抜本的に見直す構造改革を引き続き推し進めています。設備投資の精査や,材料費・諸経費の節減を継続して実施し,損益分岐点をさらに引き下げるなど,引き続き成果を上げていかなければなりません。

日本のものづくりの 強みを再認識すべき

——電子部品業界は過去何回も危機をしのいで今日まで発展してきています。そういう強さを今でも堅持していると思いますが。

片岡 日本の電子部品メーカーは,小さな会社でも専門性のある大変高い技術を持っています。日本の機器メーカーは斬新なアイデアや新しい価値を持つ商品を,数多く世に出してきましたが,それらを共に支えてきたのが電子部品メーカーの技術力です。機器メーカーと電子部品メーカーが,開発の段階から対等な立場で知恵を絞りながら技術力を高めてきたからこそ,世界をリードする商品を生み出すことができたのです。日本の電子産業の強みを生かすことで,これからも裾野を広げ,成長していくことができると考えています。

——今回の危機に直面し,改めて感じたことはありますか。

片岡 今回の不況で電子産業界は大きなダメージを受けていますが,ある意味では警鐘を鳴らしてくれたと受け取ることもできます。最近は,新しい機能を持った機器が現れても,すぐにコモディティー化してしまい,これに部品も対応せざるを得ない状況が多くなってきました。このままでは,簡単にまねされてしまうものづくり,価格競争だけのものづくりとなってしまい,業界全体が不健全な形になってしまうでしょう。この現状を打破しなければならないと強く思っています。

——技術的優位性を生かし現状を打破するにはどうすればよいのでしょう。

片岡 アイデアだけを出し,設計・製造は外部に任せてしまうというスタイルや,購入部品をアセンブルするだけでは,利益の出るものづくりにつながりません。創意工夫によって生まれた多様なアイデアを,つくり方そのものにも工夫して織り込んでいくような,ものづくりの原点に立ち返る必要があります。こうした取り組みを積極的に進めて技術レベルを上げ,電子部品メーカーそれぞれが,独自のものづくりを強化することで強い競争力の維持・向上につながると信じています。

強まる新興国での部品調達 地場メーカーへ販路拡大も必要

——IMFによると,世界のGDPに占める新興国の割合は2014年には50%を超えます。とりわけ一大生産国となっている中国などを,どのようにとらえていますか。

片岡 機器メーカーの多くは中国で生産することで,大幅なコストダウンを狙っていますが,安い労務費だけでそれを実現することはできないのではないでしょうか。現地で開発し,現地の部品を使い,現地で作ることが必要になってくると思います。そのために機器メーカーは中国で購入できる部品の検証を始めています。それに応えられる現地のサプライヤーが出てくると,日本の部品メーカーは品質が良い,バラエティーがあるといったセールス・ポイントだけでは通用しなくなります。

中国系の電子部品メーカーは,確実に品質レベルを上げてきています。例えば金型生産からプレス加工まで内作で対応するなど,現地の企業はさまざまな取り組みを行っています。今はまだ技術力が十分とはいえない面もあり,模造品のような製品もなかにはありますが,ビジネスが拡大すれば,品ぞろえや多機能化などの課題を乗り越える能力もあると思います。こういう企業は我々にとって,強力なライバルになるでしょう。

——それに対して日本メーカーはどのように対応すべきでしょうか。

片岡 常に新技術・新製品の開発を進めるのはもちろんですが,これまでの製造方法や設備投資の考え方を見直すとともに,中国市場の動きをよく見て,売り方も変えていかなければならないと考えています。これまでの日・欧・米を中心とした機器メーカーへ部品を供給するビジネス・スタイルに加え,中国現地メーカーへの販路も拡大するとともに,今後は力をつけてくるODMやEMSメーカーなどに対して,日本の部品メーカーも現地で設計し,部材調達から加工までできるような取り組みも,ますます重要になってきます。

グリーン・デバイスへの対応 パワー・エレクトロニクスで強み

——グリーン・デバイスがクローズアップされています。ここは日本の電子部品メーカーの出番ですね。

片岡 日本はGDP当たりの生産高CO2原単位の排出量が,主要先進国のなかでは極めて少ないという実績を上げています。そのような省エネ生産を可能にした技術や方法を,正当な対価で世界に展開すれば,地球の温暖化防止や環境保全に貢献することができます。また,グリーン・デバイスは低炭素社会実現に不可欠であり,それを供給する電子部品産業の役割は極めて大きいといえると思います。

——具体的にどう取り組みますか。

片岡 グリーン・デバイス事業は環境対応製品の充実とエネルギーの活用という2つの方向で,省エネ,蓄エネ,創エネに取り組むことがポイントになると思います。

アルプス電気においても,パワー・エレクトロニクスの領域には,省エネルギーに貢献する極めて効率の高い電力変換・電力制御デバイスなど,数多くの製品や技術があります。次世代パワー・エレクトロニクスのキー・パーツに,我々の得意とするメカトロニクス技術,高周波技術,材料開発・応用技術,薄膜プロセス技術などを応用し,中長期的には大きく発展させていきたいと考えています。

世界的にもハイブリッドカー,直流家電,Liイオン電池,燃料電池,太陽光発電,風力発電など多様な取り組みが進んでいますが,今後はスマート・メーターの本格導入やエネルギー・インフラ変革などの課題もあり,電子産業の果たす役割はますます重要になっていくでしょう。

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