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第7回:スマートグリッドを支える電力線通信(PLC)
標準化活動からソリューション展開まで幅広く

情報技術を活用して電力の需給を効率よく制御するスマートグリッドへの取り組みが各国で盛んだ。そのようななか,先進のソリューションや技術開発を通じて,スマートグリッドの実現に努めているのが世界的な半導体メーカーであるテキサス・インスツルメンツである。スマートメーター用マイコンや太陽光パネル用マイクロインバータなど多様なポートフォリオのなかから,PLC(Power LineCommunication:電力線通信)への取り組みについて紹介する。

Olivier Monnier氏 Anand Dabak 氏
Texas Instruments, Inc.
DSP Solutions R&D Center, PLC Laboratory
TI Fellow 

 スマートグリッドは多くの要素から構成されるが,なかでも重要なのが「スマートメーター」だ。スマートメーターは住戸やオフィスに設置される電力メーターに通信機能を付加したもので,電力会社は電力の利用状況を,住戸やオフィス,あるいは地区といった単位で,ほぼリアルタイムに把握することができるようになる。また,時間別料金などの情報を利用者に通知することで,電力料金の高い時間帯には節電に努めるといった行動の変化へとつなげられる。

 スマートメーターと系統間の通信にはいくつかの方法が提案されているが,有力なテクノロジーのひとつが低速(500kHz以下)のPLC(Power Line Communication:電力線通信)である。ワイヤレス通信とは違って見通しの悪い住宅密集地などでも使え,新たに通信線を敷く必要もない(図1)。

プロトコルをソフトウェアで実装し
柔軟なアーキテクチャを実現

スマートメーターと電力線につながるさまざまなコンポーネントとの「会話」
を実現するPLC(電力線通信)
図1 スマートメーターと電力線につながるさまざまなコンポーネントとの「会話」 を実現するPLC(電力線通信)
  (クリックで拡大します)

 このようなスマートグリッド用のPLCテクノロジーの実用化に向けて,テキサス・インスツルメンツでは,さまざまな要素技術やデバイスの開発を進めるとともに,関連する規格の標準化に対して積極的な取り組みを行っている。

 たとえば標準化活動では,オープンな通信プロファイルの定義を目的に結成された「PRIME Alliance」のPrincipalMemberの一員として,仕様の策定や相互運用性テストなどで貢献中だ。また,IEEE P1901.2(ナローバンドPLC)や,ITU G.hnem部会(ナローバンドOFDM技術の標準化),「V2G」(Vehicle to Grid)の実現に向けた電気自動車に関連するSAE Internationalなどの標準化団体などにもキーパーソンを送り出している。

 「スマートグリッド向けPLCでは,信頼性の高いOFDM(直交周波数分割多重)変調を組み合わせたプロトコルの標準化が普及の鍵のひとつを握るため,こういった活動を通じて産業界に貢献したいと考えています」と,PLCの研究開発を担当するTI FellowのAnand Dabak氏は取り組みの意図を説明する。

図2 プロトコルスタックをソフトウェアで処理して柔軟性を高めたスマートグリッド向け
PLCモデムの構成例
図2 プロトコルスタックをソフトウェアで処理して柔軟性を高めたスマートグリッド向け PLCモデムの構成例
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 具体的なソリューションについても順次提供を進めている。PLCコントローラとしては,32ビットマイコンC2000シリーズのひとつである「TMS320F28X」を推奨する。絶縁トランスを介してアナログフロントエンド(AFE)から送られてきたPLC信号を12ビットADコンバータで取り込み,ソフトウェアによってプロトコルを処理する(図2)。さらに,PLCに最適化した専用マイクロコントローラも開発中である。

 「PLCプロトコルや変調方式は国や地域によって異なると見込まれています。当社では,共通ハードウェア・プラットフォームにてさまざまなPLC仕様に対応できるように,ソフトウェア処理を採用しています」(Dabak氏)と,個別ハードウェアでプロトコルを処理する他社のソリューションに比べた優位性を訴求する。

 現在同社では,TMS320F28Xなどを搭載したPLC評価キットを提供中だ。プロトコルスタックとしてPRIME,G3,S-FSK,およびTI独自のFlexOFDMがサポートされる。

標準化活動や実証実験を通じて仕様策定や課題の洗い出しに貢献

 同社ではスマートグリッド向けPLCの実証実験にも積極的に参加している。実際の運用を通じて課題を洗い出し,仕様の完成度を高めることが狙いだ。

 昨年スペインの電力会社Iberdrolaがサービスする実際の住戸を対象に,PRIME(PoweRline Intelligent Metering Evolution)仕様に則ったスマートメーターのマルチベンダー間相互接続性試験が行われ、同社やほかのソリューションを組み込んだスマートメーターを用いたPLCの検証が行われた。結果、仕様を満足する性能が得られたため、Iberdrolaでは年内よりPRIME仕様のスマートメーターを導入する計画だ。

 PLCを使った遠隔操作についても検証を行っている。米国テキサス州ダラスにある本社の敷地(TIキャンパス)内に設置された夜間照明をPLCで制御するというものだ。CENELEC(欧州電気標準化委員会)が定めるA-band(3kHzから95kHz)上にPRIMEプロトコルを実装し,約360メートル離れた照明との間で21kbpsを得たほか,FCC(連邦通信委員会)が定めるFCC band(170kHzから184kHz)上にTI独自のFlexOFDMプロトコルを実装し,約1200メートル離れた照明との間で10kbpsを得ている。

 このほか,低圧トランス配下につながる住戸数が比較的少ない電力網を対象としたスマートメーターの自動検針を想定して,柱上トランスに中継器をつけることなく、高圧系との間でPLC技術による双方向通信実験を米国で実施済みだ。

スマートグリッドの実現に向けた要素技術の研究開発を積極的に推進

 テキサス・インスツルメンツのこのようなエネルギー戦略や活動を支える柱のひとつが研究開発体制だ。先ほども触れた標準化活動や実証実験への参加のほか,PLCの伝送エラーやノイズの解析,あるいは長期的信頼性の向上に関する研究などが,同社のR&D部隊によって幅広く行われている。

 製品ポートフォリオも同社の強みだ。スマートメーターでの電力計測に適した16ビットマイコン「MSP430」をはじめ,太陽光発電のパワーコンディショナーに最適な制御マイコン「C2000」,近距離ワイヤレス通信に適したZigBeeコントローラなどを取り揃えている。これらデバイスは,包括的かつグローバルな技術サポートとあいまって,スマートグリッド市場への参入を見込む機器ベンダーにとって力強い味方になってくれるだろう。

 「スマートグリッドが普及して再生可能エネルギーの利用が促進されれば,CO2排出量の削減や石油資源の節減など,地球規模のさまざまな効果が得られるでしょう。さらに,PLC機能によって,たとえば外出先から照明やエアコンを制御するなどの新しい使い方を提案できるかもしれません。私たちの生活スタイルや意識を変える可能性も秘めているのです」とDabak氏はスマートグリッドの実現とPLCの普及に期待を寄せる。

 テキサス・インスツルメンツの高度な半導体技術とソリューションが,スマートグリッドがもたらす新たなエネルギー社会を支えていくだろう。

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