第8回:スマートグリッドやセンサーネットワークを実現する
テキサス・インスツルメンツのワイヤレスソリューション
日本テキサス・インスツルメンツは、2010年10月6日から7日に「CEATEC JAPAN 2010」(幕張メッセ)会場内で開催された「アナログデバイス・プラザ」で、「スマートグリッド及びセンサーネットワークの市場動向とTIのRFソリューション」と題して、主にサブ1GHz帯を対象とした同社のローパワーRFデバイスと関連技術について講演した。受信感度特性や妨害波特性に優れる点が特徴である。新しい製品は日本の技適にも完全対応する。
浜田 晃 氏日本テキサス・インスツルメンツ
アナログ・マーケティング
テキサス・インスツルメンツでは、ワイヤレスデバイスのアプリケーションとして、スマートグリッド向けのスマートメーター(AMI:Advanced Metering Infrastructure)と、家庭およびビルなどのセンサーネットワークを主なターゲットに設定している(図1)。このうちスマートメーターは、北欧など欧州の一部でZigBeeを中心としたワイヤレス通信が標準化されており、今後スマートグリッド化が進むさまざまな国や地域で電力メーターやガスメーターにワイヤレスソリューションの採用を働きかけていく考えだ。
センサーネットワークはホームオートメーションやビルオートメーションでの応用が期待されている。たとえばビルの場合、人感センサーや照度センサー、温度センサーなどを使って、人の在・不在、外光の明るさ、室温などを検知し、照明の明るさや空調の強さを制御することで、エネルギー利用の効率化を図ろうという構想が動き出している。
最近注目を集めている、光、振動、熱、電磁波(RF)などの環境に存在するエネルギーを電力に変換する「エネルギー・ハーべスティング」(環境発電)を応用し、ローパワーのセンサーやRFトランスミッタをたとえば小型の太陽電池で駆動することで、電源を必要としないセンサーネットワークの構築にも取り組んでいる。
実際にスペインの「Torre Espacio」ビル(地上55階建て)では、テキサス・インスツルメンツのソーラー・エネルギー・ハーベスト開発キットである「eZ430-RF2500-SEH」をベースにした4200個のワイヤレスセンサーモジュールをビル内に設置し、照明やブラインドを制御して、照明エネルギーの30%節約に成功したという。なお、有線でネットワークを構築したときに必要になったと見込まれる30kmのケーブル(1.5トンの銅と3トンの塩化ビニール)の節減にもつながった。
また、図1のように大きな成長が見込まれるスマートメーターおよびセンサーネットワークへの取り組みを加速するため、「ESMA」、「HomeGrid Forum」、「iPSO Alliance」、「PRIME Alliance」、「SAE International」、「SGIP」、「ZigBee Alliance」などほぼすべての業界団体および標準化団体に加盟し、標準化に貢献するとともに、規格策定から遅滞なく製品を投入できるように努めているという。たとえば同社のRFチップは、ZigBee Allianceから第一号となる認証を得ている。
優れた受信特性をローパワーで実現
続いて浜田氏は、同社のローパワーRF製品のメリットとして3つのポイントを挙げた。
ひとつは受信感度に優れていることである。たとえばZigBee対応のCC2530の場合、データシートに記載されているRSSI(受信信号強度)などのパラメータから伝送可能距離を求めると、見通しが良好な屋外で約300メートル、他の電波が飛び交う一般のオフィスでも約100メートルの通信が可能であるという。
ふたつめは妨害波特性である。免許を必要としない2.4GHz帯は、使用帯域の広いWLANやホッピングを連続するBluetoothなどが使用するため妨害を受けやすい。
そこで妨害波特性を示す「コ・チャンネル除去比」、「隣接チャンネル除去比」、「隣々接チャンネル除去比」をデータシート特性から数値的に算出してみると、ZigBeeデバイスであるCC2420は、理論上はWLANに2メートルまで近づけても通信が可能であることがわかったという。他社の競合デバイスでは28メートルまでしか近づけられないという結果が出た。
三つ目の特徴がローパワーである。スタンバイモードからアクティブモードへの切り替えを高速化して、アクティブモードの動作割合をできるだけ抑えられるにした。また、送受信に要する電力を通信距離に合わせて最適化した。前述のように受信感度特性および妨害波特性が優れているため、通信状態が悪い環境でもリトライが少なく、その点もシステムの消費電力の削減に効果があるという。
これらの特徴を備えた製品としては、2.4GHz帯に対応したデバイス(型番CC2xxx)と、サブ1GHz帯(1GHz以下)に対応したデバイス(型番CC1xxx)を揃えるともに、顧客システムの要件に柔軟に対応できるように、RF単体のデバイスとMSP430などのマイコンコアを統合したSoCデバイスをラインアップする。
技適対応のサブ1GHz帯製品を開発中
サブ1GHz帯の新しいソリューションとして「CC430」を紹介した(図2)。ローパワーで定評のある16ビットマイコン「MSP430」にRFトランシーバ機能を組み込んだSoCデバイスで、ZigBeeや同社独自プロトコルであるSimpliciTIなどをサポートする。なお、米国のFCCや欧州のETSIの各規格には準拠しているが、国内の技適(ARIB)を通すには制約があるという。
「CC1120」と「CC1125」はサブ1GHz帯の単体RFトランシーバで、同社では第4世代と位置づける(図3)。従来のサブ1GHz帯のRFトランシーバデバイス(CC1000/CC1020/CC1101/CC1100E)に対して、高性能化と低消費電力化を図った。CC1120、CC1125とも、国内の技適に対応しているため、たとえば950MHz帯(ARIB T96)を使ったスマートメーターのワイヤレス通信に応用することができるという。これまでのCC1xxx系のデバイスは一部の技適に対応していなかった。
アプリケーションとしては、電気やガスなどのスマートメーター、インホーム・ディスプレイ、RFセンサー、HANゲートウェイなどを想定する。ファーストシリコンが完成した段階であり、サンプル時期および量産時期は未定である。
包括的なソリューションを通じて設計を支援
開発に必要なさまざまなリソースも用意する。評価キット、開発キット、デモボードなどを有償で提供するほか、プロトコルスタック、リファレンスデザイン、パソコン上で動作する各種ツール類などを無償で提供する。プロトコルは、ZigBee、RF4CE、および独自のSimpliciTIがサポートされる。
また「TI E2E Community」(http://e2e.ti.com/、http://e2e.ti.com/jp/)というエンジニア向けのコミュニティサイトを開設している。RFに関してはノルウェーにいる旧Chipcon部隊が質問に直接回答してくれる場合もあるという。
最後に浜田氏は、2.4GHz帯およびサブ1GHz帯に対応した幅広いワイヤレスソリューションを、プロトコルスタックや開発環境と合わせて包括的に提供している点を強調したうえで、スマートメーターやセンサーネットワークのアプリケーションを中心に、これからも顧客のニーズに応えていきたいと述べた。
(過去記事を読む)
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