Tech-On! SPECIAL知られざる半導体産業のインパクト
半導体産業は日本に必要か?
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 ここまで,半導体産業の重要性をまとめてきた(図9,表2)。半導体産業が経済・社会・環境に対していかに重要かは理解できたはずだ。しかし,「日本の」という観点でみた場合に疑問が浮かんでくる。「半導体産業は日本にはなくても,海外から買えば良いのではないか」「半導体設計は重要だが,製造は海外に任せればよいのではないか」という疑問に対して,半導体産業研究所の報告書では次のようにとらえている。

疑問(1)「半導体産業は日本にはなくても,海外から買えば良いのではないか」

  • 日本に産業があるから電子機器の競争力を確保できる
  • 日本に産業があるからナショナル・セキュリティを確保できる

 日本の電子機器を支える半導体が果たして日本製でなくてはならないか,という議論がある。確かにコモディティ製品では,使う半導体は日本製でなくても構わない。コストが競争力の主要因で,グローバルに半導体を安価に調達することが重要だからである。しかし先端的・先行的なシステムでは,機能の差異化が商品の価値を決定づける。自動車や高級一眼レフがそうだ。

図9 日本に半導体産業が存在する必要性
図9 日本に半導体産業が存在する必要性
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 新しいアプリケーションは常に半導体から生まれた。電卓,トランシーバ,腕時計,携帯型ステレオ,VTR,テレビ,デジカメ,ゲーム,自動車,DVD,カーナビ,携帯電話,メインフレーム,NC,工作機械など。特に大きな役割を果たしたのがテレビ産業である。半導体を使いこなしたから,日本のテレビ産業が世界でポジションを確保できたことは前章で示した。

 日本のアプリケーション開発の強みは擦り合わせ型の製品にある。アジア・BRICS諸国の台頭により,コストではなく,機能・性能で勝負する「ものづくり」の強化が叫ばれているが,日本は今後も,摺り合わせ型の製品で差異化を図っていく必要がある。新製品の開発もタイミングが勝負であり,できあいの半導体を待っていては負けてしまう。カギとなるのは半導体であり,新たに創出されたアプリケーションが世界を席巻する。

 政治面ではナショナル・セキュリティを確保する必要がある。情報技術によって国や国民の安全を確保する部分は日本で調達したい。

 パワーバランスという意味でも,半導体産業における日本の存在が必要である。海外の少数企業が独占的に半導体を製造・販売するようなことになれば,長期的に石油や食料と同じような状況になる恐れがある。海外企業のコントロール下に置かれた場合,日本の社会・経済は大変なリスクに晒される恐れがある。

疑問(2)「半導体設計は重要だが,製造は海外に任せればよいのではないか」

  • 製造をしているから先端技術を保持できる
  • 半導体製造があるから新アプリや他産業への波及が見込める

 日本の半導体産業は設計から製造まで全ての工程を保有する必要があるのか,という議論がある。世界ではマチュアな技術を使うシステムLSIを中心にファブレスとファウンドリというビジネス・モデルが有効と見なされるようになった。しかし,メモリ,パワー素子,光デバイスをはじめ,More than Mooreと呼ばれる融合技術に至るまで製造技術なしには語れない。半導体産業は開発から製造まで幅広い技術や知識を蓄積し,産業間の伝播を通して他産業にも影響を与えているからである。半導体の開発や製造では,機械,物理,化学,電気・電子,計測,情報処理といった多くの技術や知識が必要であり,過去に蓄積されている。こうした技術やノウハウは,半導体を含む幅広い分野でイノベーションの創出に深く関わっている。

  半導体産業で蓄積された技術,あるいは磨かれた技術は,例えば曇りにくいガラスといった特殊な建材の開発に薄膜成形技術が応用されていたり,ガラス,プラスチックレンズの光の透過率や屈折率をコントロールするために真空蒸着の技術が使われていたりする。また,単なる技術の応用に留まらず,場合によっては新たな産業を生み出す場合もある。液晶産業や太陽光発電は,半導体で蓄積された技術や知識がベースとなって発展した産業である。今後のナノエレクトロニクスの発展・応用にも半導体技術の存在が不可欠である。

表2 様々な分野における半導体産業の重要性
表2 様々な分野における半導体産業の重要性 (クリックで拡大します)
「産業集積」の点で半導体は重要 産業界は再生や支援の仕組みの利用を

経済産業省
商務情報政策局
デバイス産業戦略室長
竹谷 厚氏

 半導体によってIT革命が成され、大きな波及効果が産業界や生活にもたらされた。素晴らしい半導体を作れる企業が日本にあることによって、社会・文化へ貢献し、それを世界にも広めていくことができた。環境の面でも同様に世界へ貢献してきた。

 日本に半導体産業が無くなっても良いという論理があることは知っているが、では日本は何を国の柱にするのか。知恵が集約した産業を国の柱を立てていくしかなく、雇用も含めて半導体は非常に重要な産業である。半導体は、エレクトロニクス産業だけではなく、製造業全体に影響を及ぼす産業である。

 特に「産業集積」という観点から半導体は重要である。素材や部品を含めて研究開発において議論する場を持てることが、産業集積の大きなメリットだ。これを活かさない手はない。ただし、産業集積は、一つが抜けると、次第にガタガタになっていく。

 今の半導体業界は、過度に自信を失いすぎだと感じている。日本ほど半導体に関して産業に厚みのある国はない。この集積のメリットをもっと生かして、産業界から政府に提案をしてほしい。企業再生の仕組みや技術開発を支援する仕組みなど、政府はいろんな準備をしている。 (聞き手は望月洋介:日経BPクリーンテック研究所)

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半導体産業研究所 国内半導体メーカー10社により,業界のシンクタンクとして1994年設立。

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TEL:03-3593-7243 FAX:03-3593-7250
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