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Special Stage 新生 富士通マイクロエレクトロニクスの挑戦

技術力とサポート力で次世代の自動車作りに貢献
FRAM(FerroelectricRAM)を搭載したマイコン,ICカード,RFタグ,単体メモリなどを提供している富士通マイクロエレクトロニクス。FRAMとFlashの2つのメモリで,マイコンによる価値創造の幅を拡大する同社の「FF Value」戦略などについて,マイコン事業を指揮する井上あまね氏に聞いた。

 メモリの分野では,各社が次世代の不揮発性メモリの研究開発にしのぎを削っている。デジタル家電や産業機器の将来を変えるとして各社の研究に期待が集まる中,唯一研究室レベルを脱して事業展開に入っているのが,富士通マイクロエレクトロニクスが推進するFRAMだ。FRAMは強誘電体材料をデータ保持に利用した,ランダムアクセスが可能な不揮発性メモリである。PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)膜に外部から電界を与えると結晶内部のZr/Ti原子が分極し安定する特性を,デジタルデータの記憶に応用したものだ。その特徴は高速な書き換え性能,ほぼ無制限の書き換え回数,低消費電力にある。

 現在,主流となっているマイコンに内蔵されるメモリには,従来型のマスクROMからFlashへの移行が進んでいる。出荷直前までソフトの開発を引きつけることができ,機能の微調整やアップデートも容易なFlashマイコンは,機器の開発者にとって理想的な存在とされている。しかし同社は「FF Value」戦略のもと,FlashマイコンだけでなくFRAMを搭載したマイコンも提供しようとしていることには,いくつかの理由がある。

高速書き換えと低消費電力が新しい用途を開拓

 その一つは,高速書き換えと低消費電力というFRAMの特徴を生かした新しいアプリケーションの開拓だ。例えば,家電製品などの個体差をなくすために,個々のパラメータを保存させるような場合,メモリをEEPROMから書き込み速度の速いFRAMに置き換えることで,製造スループットが向上しBOMコストでは表れない製造トータルでのコストダウンに繋げている。また,特にバッテリーを搭載した小型家電ではFRAMの低消費電力という特徴が生きてくる。FlashやEEPROMでは消去・書き換えに高電圧が必要であるがために消費電力が多くなるが,高電圧が不要でオーバーライトが可能なFRAMでは書き換え時の電力を従来比の400分の1以下に抑えるため,バッテリーの寿命を延ばすことが可能である。また,消費電力が少ないことで,例えばHF・UHF帯のICタグの通信距離が延び,ワイヤレス給電レベルの電力でも長い通信距離が必要な場所での生産管理(ゲート通過時にタグにログを記録など)も可能となる。

 また,100億回という高書き換え回数が,マイコンにもたらすメリットも大きい。特に機器認証などセキュリティ用途に応用する場合は,書き換えを複雑にすればするほどセキュリティは高くなるため,書き換え回数の多さがものをいう。高速書き換えの機能と併せて,Flashよりも使い勝手の良いセキュリティ機器を開発できる。

 さらに,同社ではROM/RAMをすべてFRAMに置き換えた「All-FRAMマイコン」の実用化を進めている。同マイコンには,ROM/RAMの区別をなくすことで,プログラミングの自由度が増えるというメリットがある。

放射線に対する強さがFRAM市場の可能性を拡げる

 もう一つ,同社がFRAMに力を入れる理由は,FRAMが放射線に強いという特性を備えていることだ。例えば医療の世界ではガンマ線による器具の滅菌が一般的になっており,こうした器具にはFlashやEEPROMメモリを使えない。FlashやEEPROMメモリはガンマ線に弱いからだ。しかしFRAMは分極を利用しているのでガンマ線の影響を受けないため,医療器具にFRAM内蔵マイコンを使うことで「器具の使用履歴を管理するシステムを構築して,医療事故の防止を図るようなこともできるだろう」(富士通マイクロエレクトロニクス システムマイクロ事業部長の井上あまね氏)。宇宙のように多くの放射線が降り注ぐ環境でも,FRAM内蔵マイコンは十分耐えられる。

 従来こうした用途では,FlashやEEPROMでも役目を果たせず,マイコンによる高機能化をあきらめざるをえないこともあった。しかしFRAM内蔵マイコンはその制約を取り払う可能性を秘める。「Flashを置き換えるのではなく,新しい市場を開拓する」(井上氏)のがFRAMの役目なのだ。

信頼性向上でFlashにも新しい市場中国への展開でも先行

 もちろんFF Valueのもう一つの「F」であるFlashにも,独自の戦略を展開する。中でも重視しているのが「信頼性の向上」だ。

 「メモリの基本は,読み書きがしっかりできること」(井上氏)にある。その基本はほとんどの場合実現しているが, Flashマイコンを採用したくてもできないような一部のソリューションではマスクROMマイコンの方を採用している機器メーカーもあるとされる。

 そこで同社は信頼性向上に重点的に取り組み,高温対応も実現している。「暑い地域や直射日光のあたる屋外など,民生用Flashマイコンの利用シーンは拡大している。そのためには高温対応は欠かせない」(井上氏)からだ。同社は民生用Flashマイコンを,特に品質が求められる車載用Flashマイコンと同じラインで生産しており,そこにも信頼性向上への姿勢が表れている。

 信頼性だけでなく,機能面でも差別化を図っている。その一つが「Dual Operation Flash」内蔵マイコンだ。2つのバンクを持つことによりプログラム実行中にデータ側のメモリの内容を書き換えられるDual Operation Flashでは,機器を止めずにプログラムの更新を行うような,従来のFlashマイコンではなしえない新しい用途が見えてくる。ここでも「新しい市場を開拓する」方針が明確だ。

 人材面でも,香港や上海,成都(四川省)にデザイン・センターを置き,中国の優秀な技術者の確保と育成につとめている。新興市場の中でも中国を重視し,中国に進出する日本メーカーに現地からのFAエンジニアによるサポートを提供するなどして,中国で事業展開を図る顧客をサポートしている。常に先手を打ちながら新しい市場と新しい価値を創り出していこうというのが,同社のマイコン事業戦略なのだ。

お問い合わせ
富士通マイクロエレクトロニクス株式会社
システムマイクロ事業部 マーケティング部
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