Analog
ADIが主力のコンバータなどに加え電源ICも強化
初参加の「X-Fest」でFPGA対応の製品群を紹介

馬渡 修氏
アナログ・デバイセズ株式会社
代表取締役社長
アナログ製品で強さを誇る米Analog Devices Inc.(ADI)。主力のコンバータやアンプ製品に加え,最近は電源ICも強化している。同社の日本法人アナログ・デバイセズ株式会社の代表取締役社長を務める馬渡 修氏に最近のビジネス環境や日本市場で同社の取り組みを尋ねた。ADIとアヴネット ジャパンは2009年に日本市場の代理店契約を結んでおり,今回,日本で開催される「X-Fest」は初の参加となる。機器メーカーの設計者にとって,同社のコンバータやアンプはもちろん,クロック製品や電源製品など,FPGA関連の製品群と技術を学べる絶好の機会となるだろう。
——最近のビジネス環境について総括をお願いします。
馬渡氏:2009年度(2008年11月〜2009年10月)通年ではやはり厳しい年となりましたが,ADI全社では,第3四半期(2009年5〜7月)の売り上げは4億9200万米ドル,同第4四半期(8〜10月)は5億7200万米ドルと,対前期比で16%増となりました。これは第3四半期に比べ、デジタル・カメラなどの民生製品市場が4割近く伸びたのに加え,オートモーティブや医療機器などの産業市場でも2割近く伸びを示し、ようやく回復基調が見えてきたからです。(図1)
——主力のコンバータ製品はいかがですか。
馬渡氏:コンバータ製品の世界マーケット・シェアは常にトップです。通信インフラ,民生分野,特に,デジカメ向けにASSP(application specific standard product)戦略が奏功しているほか,ヘルスケア関連でもデザイン・インを着実に増やし売り上げを伸ばしており,ADIの売り上げの50%弱を構成する最大の製品カテゴリーとなっています(図2)。
さらに,近年のデジタル化の進展によって,コンバータやアンプなどのアナログ製品の重要性はますます高まっており,需要拡大の機会が非常に増えています。最近では多数の機能を統合したシングル・チップなどの高集積化製品への要求が著しく,高い技術力を持つ弊社にとってさらなるシェアアップに向けたチャンスです。引き続き,世界でトップのシェアを保っていきたいと考えています。コンバータは売り上げに占める産業市場比率が比較的高いので,本格的な回復は市場の回復に合わせて,となる見込みです。アンプ製品や電源製品と組み合わせたリファレンス・ボードの提供など「トータル・アナログ・ソリューション」を提供していく考えです(図3)。
——MEMS加速度センサ市場ではコモディティ化が進み,
競争が激化しているようですが。
馬渡:確かにMEMS市場は参入ベンダーも増え競争が激しくなっています。弊社は数量を追うだけではなく,保有する技術を最大限活かし高付加価値化を推進しています。例えば,弊社のMEMSマイクは非常に高性能で,使われるアプリケーションもハイエンドのオーディオ機器や携帯機器です。弊社にしか実現できないようなソリューションを提供したい。また,ファウンドリ委託も一部で開始しており,収益性のさらなる向上を目指しています。
——新たな注力分野として電源ICを挙げています。
馬渡氏:2007年,電源分野ではパソコン向け電源および温度管理製品ラインを米ON Semiconductor Corp.に売却しました。この決定は,その他の電源分野であるポータブル製品,通信インフラ,ハイエンドの民生製品向けにリソースを集中投下するためのものです。以降,200名以上の電源関連技術者を増員し,2009年の研究開発投資額は2006年比で40%以上増資しました。その結果,2009年に35製品,10年以降は前年比2倍以上の新製品投入を予定しています(図4)。デジタル化の進展や省スペース化,低電圧化など高度な要求が相次いでいて,差別化可能な要素が多く存在します。弊社は40年以上にわたりコンバータやアンプで培った信号処理技術を活かし,この市場でのシェア獲得を目指しています。
——日本法人としての新たな取り組みをお聞かせください。
馬渡氏:弊社は,産業・計測器市場において日本の産業基盤を支える,比較的規模が小さいながらも技術力と専門性に優れた製品の開発・設計・製造を手掛ける多数の企業の市場を「マス・マーケット」と呼び,注力市場の一つとして位置付けています。その潜在顧客企業数は,1万社にも達するとみています。このマーケットは,顧客企業数が多いだけでなく,扱うアプリケーションも多岐にわたる上にシステム構成も複雑です。また常にコスト削減やエンジニア不足,あるいは短い開発期間というプレッシャーを抱えながら設計活動をする企業が多いことから,大手のお客様とは異なる営業・設計支援体制が必要でした。
弊社はこの市場の重要性を認識し,お客様の特性,動向,要望の分析を全社で横断的に行い,お客様からのニーズをヒアリングした上で専従チームを2009年1月に新設し,さまざまなプログラムの策定と施行に取り組んでいます。具体的には,弊社の1万を超える製品の中から,日本法人の経験豊富な技術者が,高品質・優れた実績,そして技術的なアドバンテージを持つ製品を厳選し,「おススメ」製品としてロゴマークをつけ(図5),Webサイト上で推奨コメントと共に紹介しています。これらの推奨製品については,豊富な日本語技術資料のほか,迅速なサンプル供給や優先的技術サポートなど,「おススメ」推奨製品のためだけに用意した特別サービスを提供しています。

図5 おススメ製品につけられるロゴマーク
また,新たに電子部品,半導体の通販サイトを運営する株式会社チップワンストップと協業することで,従来は1週間程度かかっていたサンプル出荷を即日にできる体制を整えました。この日本独自の取り組みにより、日本の産業基盤を支える数多くのお客様に,弊社の高性能製品群を広く提供できる体制が整い,今後の日本市場でのさらなる事業拡大に向けた基礎となることと考えています。
——今回,アヴネット ジャパンの企画するザイリンクス・ユーザー向けのイベント,「X-Fest」に初参加することになりましたが,FPGA市場に向けた取り組みをご紹介ください。
馬渡氏:現在のデジタル信号処理技術は,より高速・高精度化が要求されてきて,それらの処理をFPGAが担うケースが増えています。初期開発投資や開発リスクを軽減させるためにも,FPGAがかなりの分野で活用されています。そのFPGAを実際の自然界のアナログ信号とインタフェースさせるには,データ・コンバータおよび周辺アナログ回路が必須となります。また高速・高精度化する信号処理には,高性能なアナログICが多くの用途で要求されていて,弊社の高性能なアナログICを,FPGAユーザーに浸透させていきたいと考えています。そうした取り組みの一環として,今回はザイリンクス製品を販売するアヴネットと協業し,FPGAユーザーに対して弊社の製品群と技術力をアピールしていくことにしました。
——ADIは取り扱う製品分野が多岐にわたりますが,具体的にはどの分野の製品をFPGA市場向けに注力していくのでしょうか。
馬渡氏:弊社の製品群では,コンバータとアンプが際立って市場シェアの高い分野になっています(図6)。そのほかにも,クロック製品や電源製品などがFPGA市場向けに最適だと思います。
なぜなら,設計の現場では,FPGAの動作速度が向上するにつれて,クロック同期を伴う回路でのタイミングに対する要求が厳しくなってきているからです。特にクロックの位相ノイズに起因するジッタの低減が重要です。動作の基準になるマスター・クロックを,複数のFPGAや周辺ロジックに分配し同期を取るために,低ジッタでクロックを伝送する必要があります。また,システム内にAD/DAコンバータが含まれる場合,クロック・ジッタは直接それらの変換精度に影響します。特に通信用のアプリケーションや高精度計測では,このクロック・ジッタが非常に重要です。これらのクロック生成,および伝送には特に低ジッタと高速動作に最適化したクロック・ジェネレータ,バッファ,ディトリビュータICが必要です。
アナログ・デバイセズでは,これらの要求を満たす高性能なクロック周辺製品を提供しています(図7)。高速・高精度のタイミング・クロックICには,高速リニア半導体プロセスと高度なアナログ回路設計技術が必要であり,これらは弊社の得意とするところです。
——FPGA向けの電源製品としては,どのような製品を投入していくのですか。
馬渡氏: 先ほどお話したとおり,弊社は近年,数多くの電源新製品を投入しており,そのラインナップにはザイリンクスのFPGAを駆動するのに最適な電源が多数含まれています。今回,X-Festの電源セッションでは,従来,デジタル設計でスイッチング・レギュレータに苦手意識のある設計者の方のために,その基本と注意点を説明します。スイッチング・レギュレータも基本と注意点を把握すれば,比較的簡単に基板設計ができます(図8)。また,電源設計に掛ける時間工数がないお客様には,「ADIsimPower」を使った電源周辺部品の提案ツールを紹介します。現在,電源製品分野は,弊社がもっとも力を入れている分野の一つです。FPGAを使った設計に携わるエンジニアの方には,ぜひこの電源セッションに参加していただきたいと思っています。
今回のFPGAユーザーに対するアピールは,弊社にとって新しい取り組みです。このX-Festをきっかけに,弊社の製品がFPGAユーザーの設計活動により役立つようになることを願っています。
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アヴネット ジャパン株式会社 〒140-0002 東京都品川区東品川2-2-8 スフィアタワー天王洲11階 TEL:03-6894-3711 FAX:03-6894-3705 URL:http://www.avnet.co.jp/ |
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