進化するインターシルのアナログIC技術

第20回 TOP Interview
着々とポートフォリオを拡充するインターシル
多様化する日本マーケットの要求に的確に対応

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アナログ半導体およびミクストシグナル半導体で業界をリードするインターシル。前身の時代を含めるとおよそ60年間にわたって半導体の歴史に名前を刻んできた。最近はデジタル電源やデジタル・オーディオといった新しいテクノロジーの潮流をいち早く取り込みながら製品ポートフォリオの拡大に力をいれ,最終製品の高付加価値化と差別化を求める顧客のニーズに応えている。こうした同社の最新戦略を,パワー・マネージメント・デバイスやデジタルオーディオデバイスを管掌するPeter Oaklander氏に聞いた。

−−− インターシルのプロフィールを紹介して下さい。

大三川喜朗氏
Peter Oaklander氏
Senior Vice President
Power Management Products Group
Intersil Corporation

Oaklander氏 インターシルの誕生を辿っていくと1950年代に遡ります(図1)。航空産業および宇宙産業向けに耐放射線性能に優れた半導体デバイスを開発していたRadiation社のほか,General Electric Solid State社およびRCA Solic State社といった半導体メーカーが当社の前身にあたります。その後,いくつかの再編を経たのち,1999年8月13日にHarris Semiconductor社から分離独立する形で,新たな半導体企業として正式なスタートを切りました。米ナスダック市場には2000年2月に上場しています。半導体業界最大規模のIPO(株式公開)だったことから,当時は業界で大きな話題になりました。現在は世界中におよそ1500 名の社員を擁するとともに,日本を含む世界各国に拠点を構えています。米国フロリダ州に自社ファブを持つとともに,社外ファブも積極的に活用しながら,高性能なアナログ半導体デバイスの製造を行っています。

−−−得意な製品分野は

Oaklander氏 通信,コンピュータ,産業,そしてコンシューマ市場を対象に,高性能なアナログ半導体技術を生かした幅広い分野の製品を展開しています。当社を特徴づけるソリューションのひとつがパワー・マネージメント・デバイスです。優れた電源変換効率やレギュレーション性能が市場で評価されています。たとえばノートパソコン用のパワー・マネージメント・デバイスは世界トップクラスのシェアを誇っています。このほか,アンプ,データ・コンバータ,電圧リファレンス,オプティカルデバイス,インタフェースデバイス,白色LEDドライバなどに加え,最近ではデジタル電源やデジタル・オーディオ・プロセッサなどデジタルとアナログの両方にまたがる製品も手がけています。

−−−近年は多くの企業を買収しています。

図1.D2Audioファミリの製品一覧。新たに低コストのDAE-4xシリーズが加わった。優れた音質はいずれも共通である。 図1.D2Audioファミリの製品一覧。新たに低コストのDAE-4xシリーズが加わった。優れた音質はいずれも共通である。(クリックで拡大します)

Oaklander氏 お客様に幅広い製品ポートフォリオを提供するために,ユニークかつ高度な技術を持った企業の買収を進めてきました。代表的なところでは,2008年7月に買収したデジタル・オーディオICの米D2Audio社が挙げられるでしょう。D2Audioブランドのデジタル・アンプは,すでにいくつかのハイエンド・オーディオ・アンプやシリコン・オーディオ・プレーヤのドッキング・ステーションなどに採用されており,優れた音質でユーザーを魅了しています。

 パワー・マネージメント系では,デジタル電源技術を持つ米Zilker Labs社を2008年12月に,高集積なパワー・マネージメント・デバイスを得意とする中国のRock Semiconductor社を2009年12月に,それぞれ買収しました。また2009年8月には,高速ネットワークのシグナル・インテグリティを改善するアナログ信号処理ICを展開する米Quellan社を買収しています。こうして特徴ある製品を揃えることによって,お客様が付加価値の高い最終製品を開発できるように務めているのです。

顧客の製品の付加価値を高める 製品をラインアップ

図2 オーディオ・コーデックなど高集積を特徴とするRockブランドのパワー・マネージメントIC図2 オーディオ・コーデックなど高集積を特徴とするRockブランドのパワー・マネージメントIC
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−−−主要な製品をいくつか紹介してください。

Oaklander氏 はじめにRock Semiconductor社の高集積パワー・マネージメント・デバイスをご紹介しましょう。同社は中国の上海と武漢に拠点を持つファブレス企業で,先ほども述べたように2009年12月に当社が買収しました。特徴的な製品のひとつにオーディオ・コーデックなどを内蔵した高集積パワー・マネージメントICがあります。 「RKP9000」は,携帯電話などのモバイル・デバイスにおける小型化の要求に応えるために開発しました(図2)。2チャネルのスイッチング・レギュレータ,6チャネルのLDO,バッテリ充電回路,バックライト・ドライバ,オーディオ・コーデック,24ビットDSP,クラスDの3Wアンプなどをワンチップ化したものです。それぞれ別のデバイスで構成する場合に比べて,開発期間を短縮できるうえに,基板面積も大幅に削減できます。

図3 カレントシェアリング機能を備えたパワーモジュールISL8200M図3 カレントシェアリング機能を備えたパワーモジュールISL8200M  (クリックで拡大します)

 次にインターシルが独自に開発したパワーモジュールもご紹介したいと思います。パワーモジュールは電源回路を構成するすべての部品を単一のパッケージに封止したデバイスで,出力10Aの「ISL8201M」に続いて,新たに同6Aの「ISL8206M」と同4Aの「ISL8204M」をリリースしました。また,複数の10A出力をパラレルに接続して最大60Aもの大出力を得ることができる,カレントシェアリング機能を備えた「ISL8200M」もあります(図3)。当社では「Power Made Simple」(シンプルに作られた電源)と表現しているのですが,パワーモジュールをご活用いただければ,電源専門のエンジニアがいない場合でも,安定した電源回路を簡単に設計することができるでしょう。これらのモジュールは温度に対するディレーティング(定格の劣化)に優れている点も特徴です。

−−−D2Audioの音質は市場でも評価が高いと伺っています。

図4 専用のソフトウェアを使って音質や臨場感をチューニングできるD2Audioファミリ図4 専用のソフトウェアを使って音質や臨場感をチューニングできるD2Audioファミリ
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Oaklander氏 D2Audio製品は最高レベルの音質を追求したデジタル・オーディオ・アンプ・ファミリで,ホームシアター向けのサラウンド規格として有名な「THX Ultra2」の認証を受けるなど,そのクオリティは折り紙つきです(図4)。D2Audioは「Digital Audio Engine(DAE)」と呼ぶDSPを内蔵し,プログラミングによってさまざまな音場をコントロールすることができます。たとえば,小型のスピーカーから迫力ある低音を出す「DeepBase」や,薄型テレビ画面の中央部分から音が出ているようにリスナーに錯覚させる「AudioAlign」などのサウンド・エンハンスメント機能を,当社が提供するソフトウェアを使って,お客様が装置の特性に合わせてチューニングできるようになっています。2009年1月にはD2Audioファミリのミッドレンジ製品となる「DAE-4」および「DAE-4P」をリリースし,普及帯の製品にもご採用いただけるように拡充を図りました。

成長著しい日本市場での取り組みを加速

図5 10Gbpsの高速データをカッパーで伝送できるQuellanのQ:Active図5 10Gbpsの高速データをカッパーで伝送できるQuellanのQ:Active   (クリックで拡大します)

−−−日本市場に向けた取り組みを教えてください。

Oaklander氏 当面の課題の一つは,2009年8月に買収したQuellan社の製品展開を日本でも進めることです(図5)。 Quellan社は高速インタフェースのシグナル・インテグリティを改善する「Q:Active」という革新的な技術を抱えています。ケーブルのコネクタ部分にQ:Activeデバイスを組み込むことで,数Gbps以上の高速データを光ファイバ・ケーブルではなく安価なカッパー・ケーブルを使って伝送することができるようになります。このため,次世代のデータセンター向けテクノロジーとして注目されています。またQuellan社は,モバイル機器内の放射雑音を検出して逆位相の信号を生成するノイズキャンセラー技術も持っています。いずれも近いうちにご紹介できると思います。

大三川喜朗氏

−−−技術サポートも重要です。

Oaklander氏 私自身かつて日本に数年間滞在していたこともあり,日本のお客様が高い技術力を持つ一方で,品質に飽くなきこだわりを持っていることは十分に理解しているつもりです。当社としても日本のお客様の多様化するニーズにお応えできるように,技術サポートの拡充も含めたさまざまな面でお客様のビジネスを引き続き支えていきたいと考えています。たとえば2007年には大阪にオフィスを開設し,西日本のお客様に向けたサポート体制の強化を図りました。また,日本市場における当社の認知度を高めるようなマーケティング施策も順次進めていく予定です。今年もインターシルにぜひ期待していただければと思います。

 

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