米Wind River社は,同社にとって4世代目となる商用組み込みLinuxプラットフォーム「Wind River(WR) Linux 4」を2010年11月にリリースした(図1)。より堅牢な通信機器の開発やアプリケーション・ソフトウエアの互換性向上に向けた仕様を見直している。統合したパッケージは550個以上に達し,そのうち95個が前世代にはなかった新しいパッケージであり,125個が最新のオープンソースにバージョンアップされ,142個が改善されている。また,ツールチェーンも,「GCC 4.4」、「EGLIBC 2.11」,「GDB 7」にアップデートした。
同社は,初めてLinuxを製品化した2006年から現在に至るまで,オープンソースのLinuxカーネルを,仕様を変えることなく提供してきた。独自の変更を加えてしまうと,将来のバージョンアップに追随できなかったり,修正パッチが当たらなくなるなどの不都合が生じる可能性があるからだ。商用Linuxとしての付加価値は,開発環境や検証済みソフトの供給,サポートなどに盛り込んでいる。この点は,最新のWR Linux 4でも踏襲されている。これによって,同社の独自OSである「VxWorks」に対する位置づけが明確になり,VxWorksとWR Linuxを相補的に使い分けながら,多様な組み込み用途のニーズに対応できる効果も生まれる。
通信機能の堅牢性とソフトの互換性を強化
|
WR Linux 4のカーネルには,最新版であるLinux 2.6.34が採用されている。前世代製品で使っていたLinux 2.6.27と比較して,最新のネットワーク・スタックへの対応や性能の改善などが行なわれている。対応するプロセサ・コアのアーキテクチャは,Intel系,PowerPC系,MIPS系,ARM系と多彩であり,サーバー,高速なネットワーク機器,民生機器と,幅広い用途に応用できる。 また,カーネル中のスケジューラは,標準のCFS (Completely Fair Scheduler)の他に,オプションでBFS(Brain Fuck Scheduler)とEDF(Earliest Deadline First)が使えるようになった。これによって,優先順位の高いタスクが数多くあっても,優先順位が低いタスクを適度に動かすことができる,目配りの利いた動作が可能になる。 Wind River社のLinux製品は,通信事業者向けのスイッチや基地局に搭載する通信機器での利用が多い。同社は,2007年にリリースした「WR Linux 2.0」から,通信事業者向けの要件をLinux Foundationがまとめた標準仕様「Carrier Grade Linux(CGL)」に準拠するためのパッチを用意している。これまで準拠していた仕様はCGL 4.0だったが,WR Linux 4からはCGL 5.0に変更した。これによって, セキュリティ機能やネットワーク機能の信頼性が高まり,より堅牢な装置の開発が可能になった。また,アプリケーションの互換性を保証するための規格「LSB(Linux Standard Base) 4.0」にも新たに準拠した。LSB 4.0に対応しているソフトならば,修正を加えなくても,そのままコンパイルできるようになった。 加えて、カーネルの準仮想化デバイス・ドライバ「KVM」やシステムの仮想化技術「Wind River Hypervisor」といった,マルチコアのハードを生かすためのオプションも用意している。 |
VxWorksのWind Riverが
|
VxWorksで培ったサポート力をLinuxでも生かす
Linuxは,ユーザーがカーネルの仕様を変更できる非常に自由度の高いOSだ。ただし,手を加えれば加えるほど,入手するパッチやミドルウエアの利用が難しくなる,利用が難しいOSでもある。こうしたLinuxユーザーの悩みを,Wind River社は,長年VxWorksを通じて培った組み込み開発に最適なサポート・メンテナンス体制や受託開発サービス,教育プログラムで解決する。
Wind River社は2010年8月,WR Linux 4のリリースに先駆けて,ユーザーや開発者が集って情報交換する,開発者コミュニティ「Wind River Developer Community for Linux」を立ち上げた(図2)。同社製品ユーザー以外も参加できるオープンな場としている点が特徴だ。現時点で,同社はVxWorksのコミュニティを立ち上げていない。オープンソースであるLinuxでは,VxWorksよりも,こうしたコミュニティの必要性が高いと判断して,先行して立ち上げた。
立ち上げたコミュニティでは,簡単な質問を気軽に解決できる。加えて,Wind River社が,サンプル・ソフトや技術的なヒント,Wind RiverのLinux関連製品のロードマップなどを公開している。ユーザー側から同社の技術者に向けて製品に関する要望を出すこともできる。同社製品のユーザーの深い質問には,これまでどおりテクニカル・サポートを通じて対応する。
Linux向けのオープンソースのソフトの中には,素性が明らかになっていないものが含まれている可能性がある。Wind River社は,同社製品に関連するソフトのIPの管理情報を調査し,「Wind River Linux Runtime Open Source Software Disclosure Document」として公開している(図3)。ソフト・コードの著作権,特許,機密情報,およびランタイム・コンポーネントのライセンス形態,バージョン,記述言語,使用法を明示している。Linuxを使った組み込み開発では,オープンソースのソフトを利用して製品を開発するとき,エンド・ユーザーに対して使用しているソフトのライセンス情報を開示する義務が課される。公開されている情報を使えば,必要なライセンス情報を調べる時間やコストを削減できる。
※ 会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
お問い合わせ
![]() |
ウインドリバー株式会社 |




