IT を駆使して電力利用の効率化を図る「スマートグリッド」。その実現のカギを握る重要な技術の一つが再生可能エネルギーを使った「創エネ」だ。なかでも,太陽光発電は次世代の電力を担う手段として特に注目が集まっている。テキサス・インスツルメンツ(TI)は,インバータや電力制御プロセッサ,通信デバイスまで太陽光発電システムに向けたデバイスをいち早く取り揃え,創エネに取り組むメーカーの様々な要求に応える考えだ。


Dave Freeman 氏
米Texas Instruments, Inc.
TI Fellow
Semiconductor Group
High Performance Analog
Analog & Digital Power Control Products
System Engineering Manager

 世界各地でスマートグリッドに注目が集まっている。スマートグリッドは,ITを活用することで,現在の電力系統が抱えるさまざまな問題を解決しようという発想から誕生した。効率的な送配電の実現,スマートメーターを核にした利用状況の「見える化」,太陽光に代表される再生可能エネルギーとの系統連系,電気自動車等のバッテリを使った蓄電といったテーマを中心に,各国で開発や実用化に向けた動きが加速している。  

この勢いを受けて,ビジネス機会を伺うさまざまな事業者のニーズに応える形で,スマートグリッドに関連した幅広いデバイスをラインアップしているのがTIである。「TIは,創エネを効率化する『Make it』,送配電を効率化する『Move it』,そして電力利用の省エネを実現する『Use it』という3つの技術領域に焦点を当てています。いずれもスマートグリッドの実現には欠かせない技術領域です。具体的には,大電力インバータやDC/DCコンバータ向けのデジタル制御コントローラ,Zigbee, PLCなどの通信用デバイス,組み込み用のマイクロコントローラ,といったデバイスを提供しています」(米テキサス・インスツルメンツ,アナログ&デジタル電源制御製品システム・エンジニアリング・マネージャのDave Freeman氏)。  

「Make it」の領域に向けては,発電効率を追求する太陽電池パネルメーカーや風力発電機メーカーのニーズに応えて,インバータや各種パワーマネジメント・デバイスを取り揃えている。後述するマイクロ・インバータおよびマイクロ・コンバータ用といった次世代分散型ソリューションも開発中だ。  

「Move it」の中心は「スマートメーター」だ。LCDドライバやA/Dコンバータなどを統合した計量向けASSPのマイクロコントローラ,課金情報や利用状況などを屋内外と通信するPLC(パワーライン通信)コントローラや無線トランシーバなどを用意する。

「Use it」の領域では,照明,家電,産業機器,自動車など,機器の省エネ化を図るための制御用マイクロコントローラなどを揃えている。また,ノートパソコンや携帯電話で培ったバッテリ制御技術を活用し,電気自動車バッテリや大型バッテリの制御にも取り組んでいるという。

成長する太陽光発電市場に注力

スマートメーターのキー・デバイスを提供
スマートメーターのキー・デバイスを提供 (クリックで拡大します)

スマートグリッドには様々な技術がかかわっている。そのなかでも特にTIが注目しているのが太陽光発電だ。  

「欧米の状況を見ると太陽電池パネルの設置数は毎年50%前後の伸びを示しています。いずれ商用電力のかなりの割合が太陽光発電によってまかなわれる時代がくることは間違いありません。これまでは環境意識の高い個人が住宅に設置したり,企業がカーボンオフセットを得ようとオフィスや工場に設置したりするケースが主体でしたが,今後はあらゆる消費者にまで普及が進むことは確実です」(Freeman氏)。太陽光発電システムの普及が進むにつれて,発電効率の向上や信頼性に対する要求は一段と高まる。そこで同社では,高効率インバータをはじめ太陽光発電システムの高効率化に貢献するソリューションの提供に努めるという。

現在TIは,太陽電池パネルで使われるインバータの世界市場で30%のシェアを獲得している(同社調べ)。さらに同社は,電力制御に適した32ビットリアルタイムコントローラ「C2000シリーズ」のポートフォリオの拡充も進めるとともに,単相/三相インバータやバッテリ充電回路などを搭載した「再生可能なエネルギー開発用キット(型番TMDSENRGYKIT)」も提供し,顧客サポートの強化を図っている。

「分散型方式が主流に」

太陽電池パネルの接続方法で現在の主流になっているのが,複数のパネルを直列に接続して高い直流電圧を得たのち,インバータによって交流に変換するというトポロジである。この方式には,系統電圧に匹敵する高い電圧を得やすいというメリットがある。このような接続で使用されるDC/ACインバータを「集中型インバータ」と呼んでいる。  

集中型インバータ方式のメリットは,生成される直流電圧が数百Vと高いため,97%〜98%という高い変換効率が得られる点だ。ただし一方で,直列接続なので各太陽電池パネルのばらつきや経年変化,あるいは受光状態の影響を受けやすいというデメリットがある。また,発電設備が万が一火災になった場合,消火放水によって高圧の感電事故が誘発されるおそれも指摘されている。  

このような集中型インバータの課題を解決するのが分散型方式である「マイクロ・インバータ」または「マイクロ・コンバータ」だ。太陽電池パネルのそれぞれにインバータ(DCからAC)またはコンバータ(DCからDC)を搭載し,これを接続するトポロジである(図1)。パネル単位で増設や交換ができるため,設置や保守に要するコストを削減できるというメリットもある。出力効率の高い最新の太陽電池パネルを,ベンダーに依存することなく,自由に選んで増設することもできる。扱う電圧が低いため安全性も高い。  

「最近では集中型インバータ方式に代わってマイクロ・インバータ方式およびマイクロ・コンバータ方式に注目が集まっています。各パネルの特性に応じたMPPT(最大電力点追従)制御も可能ですので,太陽光発電システムの高効率化を追求したいというニーズにも合致します」(Freeman氏)。

分散型方式の開発に積極投資

 ただし,マイクロ・インバータおよびマイクロ・コンバータが普及するには3つの課題を乗り越える必要があるという。「一つは電力の変換効率が92%から 95%程度とストリング・インバータよりも低いこと。第2の課題は,太陽電池パネルと同じく20年から25年の動作保証を実現しなければならないこと。三つ目は,ワット当たりのコストが集中型インバータ方式よりもまだ高いことです」(Freeman氏)。  

現在,マイクロ・インバータ/コンバータ市場に参入しようとしている多くのメーカーが,上記の課題を解決するために技術開発に取り組んでいるのが実状だ。「TIでは現在,マイクロ・インバータあるいはマイクロ・コンバータ回路を構成するそれぞれのデバイスについて,さらなる効率の向上,信頼性の向上と長期保証,そしてコストの低減,という3つの課題に全力で取り組んでいます」(Freeman氏)。このために,太陽光発電システムに向けた技術を手掛ける専任チームを設けた。  

「家庭用電力のほとんどを太陽光でまかなえる時代がやってくるでしょう。CO2の削減や石油資源の保護など,スマートグリッドはさまざまなメリットを私たちにもたらしてくれるはずです。TIは,半導体デバイスメーカーとして,この実現に向けたソリューションを積極的に提案します」(Freeman氏)。

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