コスト削減、ビジネス・スピードの向上、グローバル競争の激化と、ますます厳しい環境にある日本の製造業。こうした中、企業が勝ち抜いていくためには、ものづくりとITをより強固に連携させた情報活用の仕組みを取り入れることが不可欠だ。ウチダスペクトラムが2009年5月26日にベルサール九段「Hall」(東京・千代田区)で開催した「情報活用革新フォーラム2009〜キヤノンが語る“次世代情報活用基盤”構築の先進事例」では、キヤノンがITを使った業務革新を紹介。情報活用/管理にウチダスペクトラムのエンタープライズサーチ「SMART/InSight」を採用していることを明らかにした。

「情報活用革新フォーラム2009」で最初に登壇したのはIT市場の調査・コンサルティングを行っているアイ・ティ・アールシニア・アナリストの生熊清司氏。「情報の見える化が可能にするグローバル経営のスピード展開〜エンタープライズサーチによる次世代情報基盤とは〜」というタイトルで講演した。エンタープライズサーチとは、キーワードをいくつか入力すれば、企業内で分散している情報やデータの中から必要な情報を一覧表示できるソフト。企業内の情報活用ツールとして注目が高まっている。
先が読めない時代の情報システムとは

生熊 清司 氏
アイ・ティ・アール シニア・アナリスト
生熊氏によると、企業をとりまく環境は激変しており、これまでの考え方が通用しなくなっていると言う。このような先が読めない時代には、結果の情報を基にした「見える化」ではなく、これから何が起こるかが分かるような情報の「見える化」が求められている。
これまでの情報システムは個別の業務プロセスを最適化するために設計・構築してきた。その結果、情報やデータの分断が起きている。また、構造化データと非構造化データが別々に管理されている。非構造化データとは、オフィス・アプリケーション・ファイルやテキスト、画像ファイルなどで、こうした非構造化データが急激に増えており、見える化をますます困難にしている。
情報活用力を向上させるためには、企業内のあらゆるデータや情報を物理的に統合した統合データベースを構築するのが理想的だが、その構築には多くの時間とコストを必要とするため現実的ではない。そこでエンタープライズサーチを使った次世代情報活用基盤の構築を検討すべきだと強調した。
ITによる業務革新を実践するキヤノン

浜谷 雅秀 氏
キヤノン 情報通信システム本部技術システムセンター センター所長
次いでキヤノン情報通信システム本部技術システムセンターセンター所長の浜谷雅秀氏は「キヤノンにおけるG-DBMを実現するIT革新〜情報連鎖による、開発から製造ライフサイクルの革新!〜」というタイトルで、同社の情報活用事例を具体的に説明した。浜谷氏は、同社内で取り組んでいる「ITからみた業務革新事例」を「開発革新」「生産革新」「情報活用/管理」と三つに分けて紹介した。
まず「開発革新」としての取り組みが、3D(3次元) CADとPDM(product data management)の導入である。キヤノンが手掛ける商品は民生用、産業用など様々で、開発期間や販売期間などがまったく違うが、同社ではトップダウンで2000年から全社一斉に3D CADとPDMの導入を開始した。これによって試作を省き品質を落とさず、開発期間とコストを削減できたとする。
開発期間で見ると、2000年を1とすれば多くの事業で2007年は0.6になってきており、さらに現在は0.5のレベルと思われる。メカ設計の変更の比率(メカ設変率)も、事業によって2002年に比べ2007年は30〜50%削減した。
さらに、設計の基幹システムである3D CADを一本に統一し、将来をにらんだ最適化を進め、ガバナンスの確立を進めている。
3D CADデータを生産ラインに活用
次に「生産革新」として3D情報の活用と可視化というテーマで具体的な取り組みを説明した。
3D CADデータは組立ラインでも活用している。デジタル・モックアップを作り、工場のライン長が組立て手順をアニメで指導・説明する。3Dアニメで分かりやすく指導できるため、海外でも指導しやすいと言う。
各ライブラリから工程に必要な項目をドラッグ・アンド・ドロップで紐つけして組立フローを作成。作業標準を自動生成できるようになっている。設計の条件などが変わったときにはリンクして変えられるようにシステムを開発中である。使用言語も生産ラインに合わせて日本語、英語、現地語に対応している。
通常3D CADで設計した場合、設計者は3D情報を作るが、ものづくりには別途2Dの図面(紙図)も必要になる。そこで同社では3D単独図を進め、無駄のない3Dデータの活用を行い、一気通貫を実現しようとしている。
このように3D CADの重要性が増していることに合わせて、同社は率先して業界での標準化活動を進めてきた。電子情報技術産業協会(JEITA)では2007年7月に「三次元CAD情報標準化専門委員会」を設立した。
情報の一気通貫を支えるSMART/InSight
三つ目の「情報活用/管理」としてキヤノンは、「G-DBM(Global DataBase Management)」システムを構築している。G-DBMは異なる管理体系、異なるフォーマット、管理するデータ量の増大の中にあって、同社の情報の一気通貫の流れを作るためのもの。
特にデータ量の増大は著しく、例えば同社のイメージコミュニケーション事業部の開発部門で管理されている設計データをみると、2002年には2T(テラ)バイトだったのが、2005年30Tバイト、2008年350Tバイトになった。この中は、動画データが急増している影響が大きいと言う。このような膨大なデータを活用するのにもG-DBMの検索システムが重要となってくる。ウチダスペクトラムのエンタープライズサーチ「SMART/InSight」も今後期待できる管理システムである。
情報の管理体系を見ると「製品構成」と「商品構成」の大きく二つに分かれる。例えば販売した商品が故障などのために返却されてくるのは商品構成の管理であり、故障の修理やその分析をするのは製品構成の情報(BOM:bill of material)との関係を取っていかなければならない。
SMART/InSightは、現在サービス部門(修理、品質保証部門含む)で使っている。顧客から商品を受け取ったサービス・カウンタは、故障の内容に応じて次への対応を分ける。修理部門は故障原因は何かデータを集める。品質保証部門は、工場内の製造の履歴から品質状況分析をして開発部門へデータを渡す。
G-DBMの将来構想としては、データを必要とする関連部門が必要な情報をどこからでも検索できるようにすることである。利用者は目的に合った形でデータを加工し表現できる。こうしたシステムの導入で重要なのは情報のタグ付け・使用語句・言葉の標準化(意味付け)だと言う。
キヤノンはさらに将来を見据えて、仮想現実感(MR)技術を設計データに活用しようとしている。MR技術は目の前の現実の世界とCGを違和感なく融合させる映像技術。製品の設計データをMRで検証する。作業者の姿勢、製品の作動のチェックや、シミュレーション結果を可視化できるようになる。
インテリジェンス・マネジメントへと変革

町田 潔 氏
ウチダスペクトラム 代表取締役社長
同フォーラムの最後にウチダスペクトラム代表取締役社長の町田潔氏が、「情報活用のパラダイムシフトがもたらす企業イノベーション〜次世代情報活用基盤の構築を支援するエンタープライズソフトウェア"SMART/InSight G2" 〜」というタイトルで講演した。
町田氏は、SMART/InSight G2に対し、「これまでナレッジマネジメントという形でお客様のお手伝いをしてきたが、それをインテリジェンス・マネジメントへと変革する」と位置付けた。SMART/InSight G2はキヤノンで実践されているように、一般の従業員からシステムの管理者などのエキスパートまで幅広いユーザー層に対応できる。拡張性も高く、さまざまな業務利用要求に対して柔軟にローコストで提供できると言う。
さらに、ウチダスペクトラムでは、社内の情報だけでなく、社外の情報についてもエンタープライズサーチで取り扱えるよう取り組んでいる。ウチダスペクトラムでは今後も継続的にSMART/InSightの機能強化を図り、顧客の次世代情報基盤の構築を支援していく。
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