長引く景気低迷のなかでも,いち早く成長のきっかけをつかむ企業がある。半導体メーカーの中でも抜群の利益率を誇る企業のリニアテクノロジーはどのようにしてこの不況を乗り切り,さらに今後の成長路線を描くのか。来日した同社CEOのLothar Maier氏と,日本法人代表取締役の望月靖志氏に,これからの成長戦略を聞いた。

Lothar Maier氏
米Linear Technology Corp.
最高経営責任者
Lothar Maier氏

——ようやく景気が回復してきましたが,最近の状況について教えてください。

Maier リニアテクノロジーは高性能分野に注力していますから,コモディティもセカンド・ソースの製品も作りません。1万5000社の顧客を持つわが社は常に業界初の製品を目指しています。

注力する市場は,主として産業用,自動車,通信インフラです。4年ほど前は自動車の売上比率は4〜5%しかありませんでしたが,当社の2010年度第1四半期(2009年7〜9月)は13%になり,さらに今後20%を目指しています。

2000年のITバブル後,順調に成長したのはデジタル・コンシューマ,携帯電話機でした。しかし,2005年ごろからこれらの製品はコモディティになり,価格競争に陥りました。そこで製品分野を見直し,その結果,民生から産業用へのシフトとなりました。2005年度に28%あったコンシューマと携帯電話機は2009年度には13.9%,2010年度は8.9%以下と低下させることを目指しています。

 事業見直しの最中の2006〜2007年度は大きく成長しませんでしたが,2008年度になって市場環境はあまり良くなかったのにもかかわらず,9%成長しました。2009年度は世界不況により前年比-18%となりましたが,同業他社よりも業績悪化の程度ははるかに軽微でした。

——日本市場はいかがですか。

望月 日本市場では2009年度第1四半期に過去最高の売り上げを達成しました。世界不況の影響で2009年度第3四半期(2009年3月期)は最も落ち込みましたが,文字通りV字回復を遂げ2010年度第2四半期(2009年12月期)は受注額からみて過去最高に近づきそうです。これは自動車と産業用が伸びたためです。

日本市場では2009年度終了時点で自動車分野は売り上げの24%でしたが,2009年の9月期だけでみると39%にも伸びました。特に,電気自動車のLiイオン・バッテリー・スタック用コントローラ「LTC6802シリーズ」は日本で高い評価をいただいております。

——今後,どの分野を伸ばしていく予定ですか。

望月 靖志氏
リニアテクノロジー代表取締役
望月 靖志氏

Maier 将来のターゲットは6つあります。ブロードバンド通信のインフラ,LEDドライバ,自動車用高性能アナログ,ハイブリッドカー用パワー・マネジメント,広い範囲の産業用,そして「μModule(マイクロモジュール)」です。通信インフラはこれからもイノベーションが求められます。LEDは自動車のヘッドライト/テールライトや,液晶バックライトなどにも使われます。自動車用では安全,快適,カーナビ,エンターテインメントなどを目的としてアナログICが多く使われます。最近,ハイブリッドカーはニッケル水素からLiイオンへ移行する時の難題を抱えており,わが社にはそれを解決する技術があります。

μModuleファミリーは,2006年に発売され,シリコンチップと10〜30個のコンデンサや抵抗,インダクタ,トランスなどを1パッケージに集積したSiP(システムインパッケージ)です。毎年拡大を続け,売り上げは倍々で増えています。これまでに25種類以上の製品ファミリーに成長しました。

中小企業のお客様からみると,アナログのノウハウがなくてもICのように使いやすく,かつシステムを小型にできるという特長があります。

望月 日本では中小企業のお客様だけではなく大手企業のお客様もμ Module を使われています。お客様はμModuleを使うとシステムが小型になることを高く評価されています。プリント回路基板を1 個のIC にしたようなものなので基板面積がこれまでの1/5に小さくなった例もあります。

μ Module は通信の基地局向けには小型化が重視され,また医療機器などのシステムでは高価なシールドを使ってノイズ対策をしていますが,フィルタを内蔵しているμModuleを使ってシールドが不要になった例もあります。さらにμModuleを使えばFPGAが多く使われているアプリケーションにおいて,お客様の電源設計が不要になります。

——昨年,2009年には「エネルギー・ハーベスティング製品」を製品化するとおっしゃっていましたね。

Maier 2009年12月1日にリリースした「LTC3108」がそれです。これはエネルギー・ハーベスティングを狙った最初の製品です。20mVというほんのわずかな電圧を3.3Vや5Vまで昇圧し,回路に供給します。エネルギー・ハーベスティングは自然界のわずかなエネルギーを利用する技術で,振動から電気を作るピエゾ圧電素子や,温度差から電圧を発生するペルチェ素子などがあります。今後,エネルギー・ハーベスティング製品はもっと拡大していくでしょう。

図●長引く景気低迷にもかかわらず,リニアテクノロジーの業績は既に回復基調にある。
図●長引く景気低迷にもかかわらず,リニアテクノロジーの業績は既に回復基調にある。 日本法人の2010 年度第2 四半期の業績は,2009 年度第1 四半期を超えると予想している。 (クリックで拡大)

——低炭素社会に向けてどのような取り組みをしていますか。

Maier まずは,エネルギー効率の高い製品があります。リニアテクノロジーは25年前から低消費電力製品を作ってきました。さらにエネルギー・ハーベスティング技術です。液晶ディスプレイのバックライトに使うLEDのドライバはお客様が低消費電力化を後押ししてくれる製品です。

望月 低消費電力化は得意な分野です。携帯電話の基地局に使うA-Dコンバータは高速化が求められますが,高速ながら低消費電力を実現したA-Dコンバータ製品をラインアップしておりますし,また自動車に使われているパワー・デバイスも静止時の消費電流が非常に小さい製品を多くそろえております。

——今後,リニアテクノロジーが成長していくための課題は何ですか。

Maier 幸いわが社にはデザイン・エンジニアが多く在籍しており,彼らが世界中に出張し,お客様のエンジニアと話し合い顧客のニーズを知り,さらに将来のニーズも聞くのです。特に,デザイン・エンジニアの目標は,2〜3年先のニーズをとらえることです。そのニーズに基づいて次の製品を開発します。

望月 リニアテクノロジーは常に一歩先を行くことを心がけています。今後とも,産業,自動車,通信インフラの分野を戦略的に攻めていきます。 

※ 会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。

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