「省・小・精」を極めた「水晶デバイス」「半導体デバイス」「高温ポリシリコンTFT」の3つを柱に電子デバイス事業を展開しているセイコーエプソン・グループは,市場を取り巻く環境が大きく変化するなかで着実に前進を続けるために,事業基盤の強化に取り組んでいる。その背景や具体的な取り組みなどについて,グループのデバイス事業を統括するセイコーエプソン常務取締役の矢島虎雄氏に聞いた。同社は,コア技術の融合とユーザー重視の製品企画によって,電子デバイスの付加価値を創出する考えだ。

セイコーエプソン
常務取締役
デバイス事業統括センター 統括センター長 矢島 虎雄氏
——2009 年の業績はいかがですか。
矢島 米国発の金融不安をキッカケに始まった景気後退の大きな波を受けて,2009 年度の電子デバイス事業は,大変に厳しい状況だったと言わざるを得ません。多くのお客様が在庫調整に乗り出したことなどから市場が一気に冷え込みました。ただし,こうした在庫調整は,既に終息しつつあるようです。ここにきて着実に電子デバイスの需要は増えつつあります。
しかし,従来のやり方のままで,これから私たちの電子デバイス事業を成長させることは難しいと思っています。市場を取り巻く環境が大きく変化したからです。セイコーエプソンでは,経営環境の変化にかかわらず持続して発展できる企業となるために,2015年に向けた長期的なビジョン「SE15」を2009年の春に制定しました。そこで目指しているのは「強い事業の集合体」となることです。私たちの強みを生かせる分野に経営資源を集中し,その分野の事業基盤を徹底的に強化することにしました。
水晶と半導体を融合
デバイスの付加価値を創造
——構造改革について教えてください。
矢島 私たちは,「水晶」「半導体」「高温ポリシリコンTFT」といった大きく3つの分野のデバイスを手掛けています。いずれも強みを持っているデバイスばかりですが,デバイスごとに技術を追求しているだけでは,市場での優位性を維持し続けるのは難しくなってきました。そこで,取り組んでいるのが,これらの技術を融合させることで当社ならではの新たな付加価値を備え,高い市場競争力を備えたソリューションを提供することです。
付加価値を創造するうえで重要ポイントとなるのが,デバイスの「使い勝手」です。市場のニーズを把握して,それに応じた商品を実現するのはもちろんのことですが,それをより使いやすいかたちで提供することで商品の価値が高まると考えています。つまり,デバイス単品で提供するのではなく,周辺のハードウエアやソフトウエアなど,デバイスを使いこなすうえで必要な技術を合わせてソリューションという形で提供するわけです。こうしたソリューションを実現するためには,各分野の製品を担当する開発部門間の連携を強化し,お客様のニーズに応じてそれぞれの技術を最適な形で組み合わせる必要があります。このためのさまざまな取り組みも現在進行中です。また,半導体については,水晶デバイスや高温ポリシリコンTFTとセットで使えるような製品開発を強化し,デバイス間の融合を進める方針です。
ノウハウを提供
設計者の負荷を軽減
——具体的にはどのようなソリューションを用意しておられるのでしょうか。

図1 センシング・ソリューションの例
矢島 いま特に力を入れているのが水晶・センサ事業です。通信ネットワークの普及などを背景に新しいサービスが続々と生まれており,これに伴ってセンサの需要が伸びる機運が高まっているからです。既に角速度を検出するジャイロセンサ,圧力センサなど水晶を利用したさまざまなセンサを提供しています。さらに,ここに半導体の技術を組み合わせることでセンサの付加価値を高める考えです。
センサとそれに合わせて最適化された信号処理回路を集積したICを組み合わせて提供すれば,設計者の方の負担をぐっと減らせます(図1)。設計者の方は,アプリケーション開発に専念し,本来の製品開発により多くの時間を割けるわけです。これがお客様にとっての価値になるでしょう。
しかも,水晶センサと信号処理回路ICのそれぞれに独自の強みを持っています。水晶センサに使われている「QMEMS」は,30年以上にわたって磨きをかけてきたフォトリソグラフィ技術を基にした微細加工技術ですが,その技術レベルは業界の中でも一桁違うと思いますし,既にタイミングデバイスの分野においては小型高精度を追求する携帯端末や高精度高安定を追求する通信基地局などで多くの実績があります。
半導体デバイスでは,低消費電力化の技術が強みです。一般の電子機器向けのICに比べて桁違いに消費電力が小さい腕時計用ICを手掛けてきたことから電子回路の低電力化に関するノウハウを豊富に蓄積しています。これら二つの強みを組み合わせることで,使い勝手だけでなく,機能面でも大きな付加価値を提供できるはずです。
——高温ポリシリコンTFT に関するソリューションはいかがですか。

図2 イメージング・ソリューションの例
矢島 高温ポリシリコンTFTは液晶ディスプレイの一種で,超小型で高精細表示を実現できるのが特長です。最近では,2009年10月にデジタル一眼カメラの電子ビューファインダ向けに0.47型でSVGAカラー表示ができる「ULTIMICRON」を発表しています。極めて高精細なのが特長で,従来の電子式ビューファインダでは解像度が不十分だったことから難しかったピント合わせを可能にしました。デジタル一眼カメラにはこの高温ポリシリコンTFTと駆動専用コントローラIC や光学系部品の水晶オプトデバイスも合わせて提案しています(図2)。
現在は,デバイスのセット提案という形ですが,将来的にはモジュール化やシステム化を進めて大きな売り上げの柱にするつもりです。デバイス単体を扱うマイクロデバイスBU(ビジネス・ユニット)とモジュール・システムを扱うマイクロシステムBUのような体制で大きく育てることができると思っています。新分野のお客様や,特殊な要求をいただけるお客様は大歓迎します。こうしたお客様と共に新しい市場を作ることができるからです。今後の製品開発にぜひ期待してください。
※ 会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
お問い合わせ
![]() |
セイコーエプソン株式会社 |
