家電や自動車,産業機器や医療機器など,今や生活や社会のすみずみにまで広がる組み込み機器。それらの機器に最適なプロセッサを提供しているのが高性能なミクスト・シグナル・ソリューションでおなじみのサイプレス・セミコンダクタだ。デジタル回路とアナログ回路を自在にプログラミングできる同社の「PSoC」は組み込み分野ではもはや定番ともいえる。そのPSoCファミリに新たに加わったのが8051コアを搭載する「PSoC 3」とARM Cortex-M3コアを搭載する「PSoC 5」だ。専用の開発ツール「PSoC Creator」がフレキシブルな設計をサポートする。

全 英守氏
全 英守氏
日本サイプレス株式会社
技術部長

デジタル回路とアナログ回路を自在にプログラミングできるサイプレス・セミコンダクタの「PSoC」は今や組み込み設計者にとって定番ともいえるプロセッサだ(図1)。A/Dコンバータやオペアンプといったアナログ機能が使えるためディスクリート部品を外付けする必要がなく,また回路を何度でもプログラミングできるため開発やデバッグも簡単だ。携帯電話,デジタルカメラ,デジタルビデオ,ゲーム機など,さまざまな機器に採用され,ワールドワイドの出荷個数は累計ですでに5億個を超えているという。

 そのPSoCファミリに新たに加わったのが,8051コアを搭載した「PSoC 3」と,ARM Cortex-M3コアを搭載した「PSoC 5」である(図2)。「PSoCはおそらく世界で唯一のプログラマブルなシステムオンチップソリューションです。世界で9000社を超えるお客様からご採用いただいています。今回,さらなる高性能を求めるお客様のニーズに応えて,業界で広く使われている8051アーキテクチャおよびARMアーキテクチャを搭載した新しいPSoCファミリを製品化しました」(日本サイプレスで技術部長を務める全 英守氏)。

図1. デジタル機能とアナログ機能を自由に組み込めるPSoCに新たなファミリが追加された
図1. デジタル機能とアナログ機能を自由に組み込めるPSoCに新たなファミリが追加された

 従来のPSOC(「PSOC 1」)が4 MIPSの性能だったのに対し,8051コアのPSOC 3は33 MIPS,ARM Cortex-M3コアのPSoC 5はおよそ100 DMIPS(Dhrystone MIPS)という性能を達成した。

 PSoCファミリの特徴であるアナログ回路部分も強化した。20ビットの192kSPSΔΣ型A/Dコンバータと1MSPSの12ビット逐次比較型(SAR型)A/Dコンバータをはじめ,精度0.1%の電圧リファレンス,アナログ・マルチプレクサ,8ビットD/Aコンバータ,プログラマブルゲインアンプ(PGA),オペアンプ,コンパレータなど,通常のディスクリート部品に匹敵する性能と機能を備えたアナログ・コンポーネントを使うことができる。

 デジタル回路部分にはUDB(Universal Digital Block)と呼ぶアレイ・アーキテクチャを採用し,一般的なCPLD換算で最大で2万ゲートに相当するランダム・ロジックをプログラミングできる。CANおよびUSB 2.0の各インタフェース,最大736セグメントのLCDコントローラ,タイマやPWMブロックなども備えている。

図2. PSoC 3およびPSoC 5の代表的な仕様
図2. PSoC 3およびPSoC 5の代表的な仕様

 エコを志向した低電圧ニーズに対応して0.5Vという低い電圧でも動作する点も特徴だ。太陽電池や乾電池でも駆動できる。もちろんPSoC自体の消費電力も低く,さまざまなローパワー・モードを備えている。

 このような特徴を備えたPSoC 3およびPSoC 5の詳細については,「デジタルとアナログを自由に構成できるPSoC/新たなCPUコアを採用し高性能ニーズにも対応」でご紹介しているのでご一読いただきたい。

グラフィカルな回路設計で
開発効率が一段とアップ

 豊富な機能と設計の柔軟性を有するPSoC3およびPSoC5の設計を支えるのが,同社が提供する「PSoC Creator」という開発ツールだ(図3)。PSoC Creatorは従来のPSoC 1用の開発ツール「PSoC Designer」を大幅に機能強化したもので,次のような特徴を備えている。

 ひとつは,アナログ・ブロックおよびデジタル・ブロックともに,部品ライブラリを使って簡単に回路を構築できる点だ。アナログのライブラリには,「Delta Sigam ADC」(ΔΣ型A/Dコンバータ),「Inverting PGA」(反転プログラマブルゲインアンプ),「OpAmp」(オペアンプ),「Analog Mux」(アナログ・マルチプレクサ),「Comparator」(コンパレータ)といった基本パーツが登録されている。デジタルのライブラリも同様だ。

米田 理之氏
米田 理之氏
日本サイプレス株式会社
応用技術グループ

 回路を設計する際は,これらのパーツをライブラリツリーから選択し,マウスで画面上の適当な位置に配置し,それぞれのパーツの入出力をマウスで結んでいけばよい。また,たとえばA/Dコンバータなら,分解能,変換レート,変換モード,入力電圧範囲,クロックソースなどをプルダウンメニューから簡単に指定できる。アンプなどもゲインなどをプルダウンから設定可能だ。「PSoC Creatorを使えば設計者は上位レベルで回路を構成することができますので作業効率が大幅に向上します。また,ユーザーが設計したサブ回路を新たにライブラリとして登録すれば,再利用も可能です」(日本サイプレス 応用技術グループの米田 理之氏)。

ピンの割り当てもPSoC Creator上でグラフィカルに指定できる(図4)。PSoC3およびPSoC5は各IOピンがアナログとデジタルの両方に対応しているため,基板のルーティングなどを優先した最適なピン割り当てが可能だ。

さらにPSoC Creatorでは,搭載するアナログ回路規模やデジタル回路規模に応じて,もっとも最適なPSoC3またはPSoC5の品種が選択される。以前のPSoC Designerでは設計者が詳しく仕様を見積もって品種を事前に指定しておく必要があった。

図3.アナログやデジタルのパーツをグラフィカルに配置して設計とデバッグができるPSoC Creator
図3. アナログやデジタルのパーツをグラフィカルに配置して設計とデバッグができるPSoC Creator

プロセッサコアのソフトもシームレスに開発

もうひとつの特徴はプロセッサコアのソフトウェアをPSoC Creator上で開発できる点だ。回路設計とソフトウェア設計がひとつの環境に統合されているため,他のツールの起動やファイルの移動といった面倒な作業が生じない。

 PSoC Creatorには8051用の「Keil CA51」コンパイラとARM Cortex用の「Sourcery G++」コンパイラがバンドルされる。いずれも業界では広く用いられているコンパイラであり,組み込みソフトウェアの開発者にとってはなじみやすいはずだ。また,回路部分とのAPIはPSoC 3およびPSoC 5ともに共通化されているので,PSoC 3用に作成したソースコードはそのままPSoC 5にも利用できる(もちろん逆も可能)。機器が必要とする性能や機能に応じて,たとえば製品モデルごとにPSoC 3とPSoC 5を使い分けることも簡単だ。

図4.I/Oピンもグラフィカルに指定できる
図4.I/Oピンもグラフィカルに指定できる

 デバッグ機能も豊富だ。PSoC Creator上でデバイス内部の波形を観測したりプロセッサコア内部のレジスタ値などを確認できるため,実際にプログラミングする前にかなりのレベルまで品質を追い込むことができる。もちろん実機上での実動作のデバッグにも対応していて,別売の「MiniProg3」というケーブルキットを使うことでデバイス内部の動作をJTAG経由で確認できるようになっている。なおMiniProg3はサイプレスのウェブサイトまたは代理店等から単体で購入できるほか,PSoC 3の開発キット(CY8CKIT-001)に同梱されている。

 以上,PSoC Creatorの概要を簡単に説明したが,言葉だけではなかなかツールの良さを伝えにくい。「PSoC Creatorは無償でダウンロードが可能ですし,PSoCの評価キットなどがなくてもスタンドアロンで動作します。ぜひ使っていただいてその良さを実感していただければと思います」と米田氏が述べるように,まずはお試しで使ってみるのがいちばんだろう。ワークショップも随時開催されるというのでご利用いただきたい。

ワークショップのご案内
真のプログラマブルシステム オンチップ
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  • PSoCプラットフォームの説明ビデオ(英語)
  • PSoC Creatorのダウンロード
  • PSoCファミリのワークショップ
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