高性能なミクスト・シグナル・ソリューションを提供するサイプレス・セミコンダクタは,デジタル回路とアナログ回路をプログラミングできる「ミクスト・シグナル・アレイ」のPSoCに,ハイパワーLEDのドライバ回路を統合した「PowerPSoC」ファミリを追加した。省エネに貢献するうえに発光寿命が長いという特長を持つLEDを,効率良くかつ精度高く駆動できるコントローラ・デバイスだ。32V/1AのローサイドFETを4系統内蔵するなど,最小限の外付け部品で構築できるように工夫されている。PSoCコアを内蔵しているため幅広いコントロールも可能だ。

吉澤 仁氏
日本サイプレス株式会社
代表取締役社長
高性能なミクスト・シグナル・ソリューションを提供し,多くのエンジニアから支持されているサイプレス・セミコンダクタ(以下サイプレス)。そのサイプレスを代表する製品のひとつが,「ミクスト・シグナル・アレイ」と呼ばれるPSoCだ(図1)。デジタル回路に加えてアナログ回路も構成できる組み込み用マイクロプロセッサである。
品種によって多少異なるが,A/DコンバータやD/Aコンバータ,多ポールのフィルタ,モジュレータ,アンプ,コンパレータなどが「アナログ部品」として用意されていて,従来ディスクリート部品で構成しなければならなかったアナログ回路をワンチップに統合することが可能だ。もちろんデジタル回路も構成できる。いわばFPGAのミクストシグナル版といえるだろう。
小型化と低コスト化に大きな効果をもたらすPSoCは,携帯電話,デジタル・スチル・カメラ,デジタル・ビデオ,ゲーム機といったモバイル機器を中心に採用され,ワールドワイドでの出荷量はすでに5億個を超えたという(サイプレス調べ)。最近では携帯端末のタッチスクリーンのコントローラとして世界で約70%のシェアを獲得するなど,応用は着々と広がりつつある。

図1.デジタル機能とアナログ機能を自由に組み込めるPSoC
そのPSoCに新しいファミリとして「PowerPSoC」が加わった(表1)。製品名に付加された「Power」から分かるように電源回路を内蔵しているのが特徴で,対象とするアプリケーションはハイパワーLEDを使った照明器具である。「高機能なLED照明ソリューションに対するニーズにお応えするデバイスとして開発しました。ハイパワーLEDのドライバ機能をマイコンコアに統合したコントローラはPowerPSoCが世界でも初めてではないでしょうか」(日本サイプレス チャネル営業・営業支援 本部長の吉澤 仁氏)。
ハイパワーLEDを使った高輝度照明の分野が拡大
PowerPSoCが対象としているLED照明は,このところ急激な成長を遂げている分野のひとつだ。LEDが着目されている背景には主にふたつの理由がある。ひとつは白熱電球や蛍光管に比べて消費電力が少ない点だ。地球温暖化対策として白熱電球を廃止して消費電力の少ない蛍光管に移行しようという動きが世界各国に広がっているが,LED照明は蛍光管よりもさらに消費電力が少なくて済む。

表1.PowerPSoCファミリの一覧
もうひとつの理由が動作寿命である。LEDの動作寿命は一般に数万時間から10万時間程度と長いため,白熱球や蛍光灯を使った照明器具のように,光源を交換する作業のほとんどを省ける。大規模なビルや商業施設ではコスト削減に大きく貢献するはずだ。
このようなLED照明のうち,産業用として応用の拡大がとくに期待されているのが,ハイパワーLEDを使った高輝度な照明だろう。ハイパワーの定義はとくに定められていないが,一般には1W以上のLEDを呼ぶことが多い。建物や橋梁などの建造物や景観の照明,街路灯や道路灯,自動車の前照灯,手術用照明などに分野に適している。
一般に,このようなハイパワーLEDの順方向電圧は3.5Vから4.0V,順方向電流は300mAから1500mA程度である。したがって,複数のハイパワーLEDを直列に接続したLEDストリングを駆動する回路は,高い順方向電圧と大電流に対応できなければならない。そのようなハイパワーLEDの駆動に適したコントローラがPowerPSoCなのである。
32V/1AのローサイドFETを4系統内蔵
次にPowerPSoCの詳細をみていこう(図2)。特徴のひとつが32V/1Aまたは32V/0.5AのローサイドFETを4系統または3系統内蔵した点だ(CY8CLED04G01/CY8CLED03G01を除く)。つまり,順方向電流が最大1000mAまたは500mAのLEDを7個程度直列にしたストリングを,3系統または4系統駆動できることを意味する。なお,全品種ともにゲートドライバ信号の出力端子が用意されているので,よりハイパワーでの駆動が必要な場合は外付けFETを用いてもよい。
LEDの調光(光量調整)は3つのモードをサポートする。基本となるPWM(パルス幅変調)モードのほかに,内蔵のランダム・カウンタを用いて4系統のオン/オフをわずかにずらし,電流の変動に起因するEMIを低減する同社独自の「PrISM」モードなどを備える。
PowerPSoCにはスイッチングレギュレータも内蔵されている。7Vから32Vの直流電圧を5Vに降圧して,PowerPSoC自身と周辺回路に供給するためのレギュレータだ。「最高で直流32Vを生成するAC/DCコンバータのほかに,チョッパ用インダクタやショットキーダイオードを外付けする程度で,AC駆動のLED照明回路を構成することができます。つまりPowerPSoCを使うことで大幅な小型化と低コスト化が図れるのです」(吉澤氏)。
さらに内蔵のPSoCコアを利用してさまざまな制御を実装できる。照明アプリケーションを想定して,舞台照明機器の標準インタフェースであるDMX512と,照明器具をデジタル調光するDALI(Digital Addressable Lighting Interface)もサポートしている。また,温度センサや照度センサを接続して,LED発光をモニタしながら高精度な発光制御を行うことも可能だ。また,CyFiなど,サイプレスの他のソリューションと組み合わせてもよい。
色域をグラフィカルに確認しながら設計を最適化
PowerPSoCの最大の特徴はハイパワーLEDドライバとPSoCコアを統合している点である。したがって,単なるLED照明ドライバとして使うのではなく,PSoCコアを生かした高機能な照明アプリケーションに用いることができる。
たとえば,発光スペクトルが異なるハイパワーLEDをチャネルごとに接続しておけば,4チャネルの調光機能を利用してそれぞれの輝度を変更することで,青味の強い光や赤味の強い光など光の色を自在に調整できる。「16ビットの分解能で調光できるようになっているので,白を高精度で再現しなければならないアプリケーションにも適しています。また,LEDが劣化した場合の補正にも役立ちます」(吉澤氏)。時間帯やイベントに合わせて景観照明や店舗内照明の色を変えたり,植物工場での栽培品種に応じた最適な色の光を1台の照明装置で用意したり,といったことが実現できる。
舞台照明や演出用照明への応用にも最適だ。DMX512インタフェースをPSoCコアに実装しておけば,楽曲などに合わせて照明の色や明るさを複雑に変えることができる。PSoC自体の処理性能には余裕があるので,ムービングヘッドなどのエフェクト機器の制御も一括して行える。
このような照明アプリケーションの開発者に向けて,サイプレスは開発環境も用意している。その一つが,開発ツールの「PSoC Designer」である(図3)。アナログやデジタルのコンポーネントをグラフィカルに操作するだけで回路を構成できるほか,CIE 1931の色度図を元にした発光色の設定機能が追加されている。日亜化学工業など主要なLEDベンダーの製品特性がデータベース化されていて,プルダウン・メニューからLEDの製品型番を選択するだけで,CIEチャートにガマット(色域)が表示され,最適な発光条件を設定できる仕組みだ。LEDの特性データは逐次更新されている。
そのほか,デモボード,評価ボード,アプリケーションノート,チュートリアル(オンラインセミナー),テクニカルリファレンスマニュアル,さらにPSoCの開発ワークショップなども提供している。 「ハイパワーLEDによる高輝度かつ鮮やかな発光を生かした高機能ライティングソリューションの実現に,PowerPSoCがお役に立てるものと期待しています」(吉澤氏)。省エネにも貢献するサイプレスのPowerPSoCが,さまざまなシーンに明かりをもたらしてくれるに違いない。
データシート等詳細製品資料リンク:http://www.cypress.com/go/techon/ppsoc
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