電子機器設計者および電子機器メーカーの購買担当者に向けた電子部品・半導体のインターネット通販サイトを運営するチップワンストップ。同社は,中ロットから小ロットと比較的規模が小さい取引を重視した独自のサービスを展開し,日本の電子部品・半導体市場における存在感を着々と高めている。「インターネットの時代を迎えたいま,流通革新が進むのは必然」と語る同社代表取締役社長の高乗正行氏は,同サイトを技術者の業務を支える「総合プラットフォーム」へと発展させる考えだ。今回,それに向けた現在の取り組みなどについて語った。

チップワンストップ
代表取締役社長
高乗 正行氏
——チップワンストップがインターネット通販サイトを立ち上げた狙いを教えてください。
高乗 チップワンストップは,2001年からホームページを開設し,電子部品および半導体の購買代行サービスを開始しました(図1)。当初からターゲットとしているのが,中ロットから小ロットの取引を希望されているお客様です。日本国内の電子部品・半導体市場は5兆〜6兆円といわれています。このうち,量産品ではなく試作品の製造や保守などに使う中小ロットの購買市場は4000億〜5000億円と見込んでいます。こうした市場のお客様に向けて,効率的な購買手段として提供しているのが私たちの通販サイトです。
従来,日本の市場では大量に消費するユーザーに向けた販売チャネルが主流で,少量多品種の部品を必要とするユーザーに向けた流通構造が確立されていませんでした。そこで,インターネットやITを利用すれば,中小ロットのニーズに対応できる仕組みが構築できると考えたわけです。つまり,少量の注文に迅速に対応できるのはもちろんのこと,さまざまな製品やニーズに「ワンストップ」で対応できる販売チャネルです。インターネットはさまざまな分野で「流通革新」を起こしました。この波が電子部品・半導体市場にも及ぶのは必然だと思います。その一翼を担うのが私たちの事業です。
高まるユーザー拡大の機運
市場に密着したサービスが強み
——インターネット通販の現状は。
高乗 既にインターネットのサイトから電子部品や半導体を購入することが日本の技術者の間で一般化しています。実際に,私たちのサイトを利用する会員数は着実に増えてきました(図2)。累積会員数は8万人を超えています。会員数だけでなく,商品を注文してくださった実績を持つお客様が増えており,2009年末までの累積で3万人を超えました。特に,私たちが注目しているのは,2008年ころから受注実績のある会員数の伸び率が,全会員数の伸び率を上回っていることです。これはインターネット通販が技術者の間に,本格的に普及し始めたことを示しています。
2008年末以降の景気後退を受けて業務の合理化を進める電子機器メーカーが相次いでいます。こうしたなかで,インターネットを利用した効率的かつ合理的な販売チャネルであるネット通販に目を向けるお客様がますます増えるのではないでしょうか。
——チップワンストップの強みを教えてください。
高乗 電子部品や半導体のネット通販事業は欧州や米国の企業が先行しました。この市場で活躍する世界大手のうち2社が,既に日本に進出しています。一方,チップワンストップは,この市場では日本に本拠地を構える数少ない企業の一つです。日本を中心に事業を展開していることは,日本のお客様に対して緻密なサービスを提供するうえで有利だと思っています。例えば,お客様のイントラネットで通販サイトを利用できるようにするサービスを日本で提供しているのは,チップワンストップだけです。
ただし,電子部品・半導体のインターネット通販市場は,まだ成長の余地があります。競合事業者とシェア争いを繰り広げるのではなく,共に競い合いながらこの市場を大きくしたいと思っています。
技術情報を着々と強化
ユーザーの信頼を獲得
——ユーザーを開拓するうえでの取り組みは。

図2●全会員数と受注実績会員の推移
高乗 電子機器メーカーに電子部品や半導体を供給している企業の多くは,人を介した「フェイス・トゥ・フェイス」の取引を通じてさまざまな情報を交換しながら,お客様の信頼を獲得してきました。私たちのサイトが,ユーザーをさらに増やすためには,これと同じだけの信頼をインターネット上で獲得することが重要です。
このための取り組みの一環として,サイト上でさまざまな技術情報を提供しています。設計に役立つ情報を豊富に提供することで,技術者の皆様に頼りにしていただけるサイトにすることができるからです。例えば,個々の部品に関する情報は各メーカーが提供していますが,異なるメーカーの部品を組み合わせたときの特性などに関する情報は少ないのではないでしょうか。そこで,半導体メーカーなどが自社の製品に必要な周辺回路のために推奨している他社部品の情報などを積極的に集めて,私たちのサイトで提供しています。
このほか,大手半導体メーカーや電子部品メーカーとの連携によるコンテンツやサービスの強化にも取り組んでいます。例えば,アナログ・デバイセズ,NXP,村田製作所などのパートナー企業と連携して,インターネットを利用した市場開拓を支援するための「専門サイト」を開設しました。ここでは,パートナー企業ごとにサイトを設け,各社の戦略に応じた情報やサービスを提供しています。これはパートナー企業のためだけではありません。専門サイトの数を増やし,このようにサイト上で技術情報の拡充を図り短納期で試作用部品を供給することで,ユーザーは安心してそれらの部品を設計に組み込むことができると考えています。
——今後の展開について教えてください。
高乗 私たちのインターネット通販事業は,当初の「啓蒙期」を経て現在は,中期的な成長に向けて事業基盤を拡大する時期だと考えています。このために当面は,サイトで提供する情報や商品の拡充を図るとともに,機能の強化に取り組みます。例えば,私たちのサイトを利用してお客様がBOM(Bill of Materials)管理できるサービスを近く開始する予定です。
十分な基盤が整った段階で,さらに事業領域を拡大し,技術者の皆様を広範囲でサポートできる「総合プラットフォーム」へと進化させる考えです。この段階でアジアを中心に海外進出することも視野に入れています。今後の展開に,ぜひ注目していて下さい。
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