あらゆるモノづくりを縁の下から支え「マザーマシン」(母なる機械)とも呼ばれる工作機械で世界をリードするヤマザキマザック。1919年(大正8年)の創業以来、技術の自前主義を貫いている同社は、5軸を同時に制御する多面加工機(マシニングセンタ)など高度な工作機械を通じて、国内のみならず海外においても高い評価を得ている。一般には存在があまり知られていない工作機械設計の面白さを、マシニングセンタの開発を担当する若手エンジニアのひとりである豊田雄大氏に伺った。


ヤマザキマザック株式会社
開発設計事業部
商品開発第4部 第1グループ
豊田 雄大 氏
2005年入社。学生時代は機械工学科を専攻し、自動車のトランスミッションを研究。現在は多面加工・同時5軸制御のマシニングセンタの開発を担当。

——まず、現在担当しているお仕事について教えてください。

豊田氏 当社の主力製品のひとつでもある「HYPER VARIAXIS 630」(ハイパー・バリアクシス630)という同時5軸制御の工作機械(マシニングセンタ)の開発を担当しています。複雑な曲面を高精度かつ高速に加工することが可能で、代表的なところではタイヤのゴム面にトレッドパターンを成型する金型の作成などに使用されます。入社直後は一世代前のモデルの一部分のみを担当していましたが、入社4年目からこのモデルの開発を任され、設計全般と製品まとめを担当しています。

——どのような理由で、工作機械メーカーであるヤマザキマザックに入社しようと思われたのですか?

豊田氏 もともと自動車や飛行機のようなメカが好きで、大学では機械工学科でクルマのトランスミッション(変速機)を研究していました。研究のための加工で旋盤やマシニングセンタに触る機会も多く、工作機械はとても身近な存在でした。就職活動のときに自動車メーカーも考えたのですが、好きなことを仕事にしてしまうとその好きなことが嫌いになってしまうこともあるよという話を周囲から聞き、それであればどこかでクルマに関係しながら、直接はクルマを開発する仕事ではない分野は何があるだろうと考えて、工作機械メーカーを選ぶことにしたのです。就職活動の際にヤマザキマザックにいた大学の先輩にいろいろ話を聞いたところ、会社全体の雰囲気が良くチームの結束力が高いことや、開発からお客様への据付まで一連の流れを担当できること、また、工作機械はさまざまなメーカーに納入されるため多くの業種と関係できることなどを知り、最終的には先生の勧めもあって、工作機械業界トップの当社を志望しました。

—— 実際に入社してみていかがでしたか?

豊田氏 入社後研修のときに、ある自動車メーカーで現場実習をさせていただいたのですが、当社の5軸加工機(バリアクシスの旧モデル)がスポーツカーのエンジンブロックを削っている様子を見てその複雑な動きに興味を持ち、研修後の配属面接でバリアクシスをぜひ担当したいと希望し配属されました。実際の仕事では、設計や部品の手配をはじめ、営業的なことや当社の製造現場とのやりとりなどすべてに関わることができるため、やりがいも多く、自分が成長できる仕事と感じています。また機械の設計では、学生時代に学んだ材料工学や流体力学の知識が役立っています。ひとつのモデルを同じチームで一年以上かけて開発していくため、チーム内のコミュニケーションも良く、退社後に飲みにいったり週末にみんなで遊びにいくこともあります。[注:配属や研修のプロセスは年度によって異なる場合があります]

——ヤマザキマザックは業界トップのポジションにいるわけですが、
トップクラスの技術を維持するために心掛けていることはありますか?

図3 パッケージの写真

豊田氏 それまで先輩方が築いてきた技術を土台にしながら、新しい何かを盛り込んでいくことを常に考えています。現在担当している「HYPER VARIAXIS 630」では、加工速度の向上と加工精度の向上という相反する要件の両立を目標に掲げました。高精度かつ高速に位置決めが行えるリニアモーターをこの規模の機械としては初めて全軸に採用することにしたのですが、リニアモーターは原理上わずかに浮いているため、垂直軸に使うとそのままでは落下してしまいます。モーターに与える制御信号のタイミングやブレーキ機械の保持力などを工夫して課題を克服し、最終的にはISO(国際標準化機構)で決められている位置決め精度を4倍以上上回る精度を実現することができました。また、地球環境保全に対するお客様のニーズに応えて、LED照明を採用して消費電力を抑えたり、潤滑油の消費量が従来モデルに比べて3/4で済むような工夫も取り入れています。そういった一つひとつの積み重ねがお客様からの評価につながっていると考えています。

——これまでで苦労したエピソードや失敗したエピソードがあれば教えてください。

豊田氏 入社2年目のときだったと思うのですが、完成した機械の据付調整のためにお客様の現場に伺ったところ、初期の精度が得られずに、二日間ほどの調整で終わる予定が結局一か月も滞在したことがあります。最近の工作機械は、ミクロン単位、あるいはサブミクロン(ミクロン以下)単位にまで加工精度が上がっているため、輸送中のトラックの振動や、据付け場所の基礎の状態、さらには現場の温度や一日の温度変動なども精度に影響を与えることもあるほどとてもデリケートなんです。そのときは加工精度が思うように安定せず、調整でとても苦労したことを覚えています。

——ヤマザキマザックをはじめ、あらゆる企業が事業のグローバル展開を進めています。海外に行く機会などはありますか?

豊田氏 1年前です、EMO2009に行きました。展示会に来場されたイタリアのかたとは英語でコミュニケーションしたのですが、なんとか乗り切ったという感じでしょうか。実は社内で海外研修や海外赴任を希望することもできるのですが、英語が苦手なので自分ひとりでは海外でとても生活できるように思えず、いまだ応募はしていません(笑い)。学生時代に英語をもっと勉強しておくべきだったと反省しています。

——最後に、就職活動に臨む学生の皆さんに向けて、志望先の選び方などがあればアドバイスをお願いします。

図3 パッケージの写真

豊田氏 先ほども少し触れましたが、自分が趣味としている分野を選ぶかどうかがポイントのひとつと思います。好きな分野に就職したものの、自分が持っていたこだわりとは違う世界で仕事をしなければならず、前ほど興味が持てなくなったという友人もいる一方で、好きな分野に就職して良かったという友人もいます。私は、好きなクルマと仕事とは別と考えて、自動車メーカーではなく工作機械メーカーに就職しましたが、人それぞれの価値観のなかで考えてみてはいかがでしょうか。また、工作機械の分野では「JIMTOF」(日本国際工作機械見本市)などの展示会があり、各メーカーの製品を見たり担当者から会社の話を直接聞くことができますし、さまざまな企業があることも分かります。さまざまな業界の展示会に出向いて積極的に情報収集をしてみるのも面白いと思います。

——本日はありがとうございました。これからのますますのご活躍をお祈りいたします。

※ 会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。

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