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株式会社アドバネット

アドバネットが伊Eurotechグループへさらなる成長に向けて新たな一歩


栗原 和也氏
株式会社アドバネット
取締役社長 兼 COO

組み込みシステムの開発を手掛けるアドバネットが,さらなる成長に向けて新たな一歩を踏み出す。2007年10月,組み込み技術を基に国際的な事業に展開する伊Eurotech S.p.A.に,発行済み株式の65%を売却。同社および傘下のグループ会社が,Eurotechグループの一員となることで合意した。同社は,日本市場で築いた市場と顧客を堅持しつつ, Eurotechグループの国際的な事業基盤を足掛かりにグローバル化に向けた動きを加速する考えだ。

 アドバネットは,主に産業用機器向けの組み込みシステムを手掛けている。電子機器の設計や生産などを請け負う,いわゆる「EMS(Electronics Manufacturing Service )」の「development (開発)」と「design(設計)」の二つの機能を強化したサービスを指す「EdMS」を掲げて,設計や製造の受託にとどまらず,自社の技術やノウハウを生かしたソリューションを顧客に提供しているのが同社の特徴だ。

 同社が新たに加わるEurotechグループは,防衛,交通,医療,産業用機器に向けた小型コンピュータなどを中心とした組み込みシステムのほか,ネットワーク機器,大学や研究期間などに向けた高性能コンピュータ・システムなども手掛ける。同グループの中核となっているのが,イタリア北部のアマロ市に本拠地を置く伊Eurotech S.p.A.である。現在,同社President & CEOを務めるRoberto Siagri氏が仲間数名と1992年に創業した。同社は,PC/104対応やCompactPCI対応のCPUボードを手始めに業容を拡大。2000年以降に,国内外の企業を傘下に収めることで事業の拡大とともにグローバル化を図ってきた。2002年に産業用コンピュータ・システムを手掛ける伊IPSSistemi programmabill srl,2003年には米国ユタ州ソルトレイク市に拠点を構える米Parvus Corp.,2004年にはフランスのリヨンに拠点を置くERIM社,2006年に米Arcom Control Systems Inc.,さらに2007年には米Applied Data Systems Inc.と,世界主要地域で組み込みシステムを手掛ける企業を着々と同グループに加わえている。こうして出来たのが現在のEurotechグループである。いまや,グループ全体の拠点は,イタリア,米国,英国,中国,フランス,フィンランドと世界各地に拡がる。


Roberto Siagri
EUROTECH S.p.A.
President & CEO

双方の思惑が一致

 今回,アドバネットがEurotech グループに加わることに合意した背景には,事業拡大に向けて海外市場の開拓に取り組むアドバネットと,アジア市場への進出を狙うEurotechグループの思惑が一致したことがある。「アドバネットは,これまで国内市場を基盤にして成長を続けてきました。さらに事業を伸ばすためには,海外市場への進出は避けて通れません」(同社取締役社長兼COOの栗原和也氏)。これまでに同社は複数のセールスレップを通じて欧州や北米に製品を供給する体制を整えている。このほか欧州で開かれた組み込み関連の大型展示会「Embedded World」に出展するなど,2005年頃から海外市場における存在感を高める取り組みを積極的に進めてきた。「さらにEurotechグループに加わることで,同グループのグローバルかつ強固な事業基盤を生かして有利に海外市場への参入が図れると考えました」(栗原氏)。一方,Eurotechグループは,グローバル化の動きを一段と進めるためにアジア地域に進出する機会をうかがっていた。「3年ほど前からアジア地域でパートナーを探す動きを始めています。特に世界のエレクトロニクスをリードしている日本の企業と手を組みたいと考えていました」(Eurotech S.p.A.  President & CEO Roberto Siagri氏)。今回の合意に向けて両社が接触を始めたのは2007年に入ってからだという。「アドバネットのことは,アジア地域への事業展開を意識し始めたころから知っています。ただし,その当時のEurotechグループは規模が小さく,アドバネットは遠い存在でした。その後,Eurotechグループが成長したことから,2007 年になってアドバネットがパートナーとして浮上してきたわけです」(Siagri氏)。

全体の成長が前提のM&A

 Eurotechグループが,アドバネットに注目した大きな理由の一つは,顧客の特性が似ていることだという。「どちらも高い技術力を要求するハイレベルなお客様を数多く抱えています。しかも,それぞれのお客様と長期間にわたって取り引きしている点も似ていました」(Siagri氏)。それぞれが得意とする事業領域が重なっていないことも,大きな理由だ。「Eurotechグループは,PC/104対応の製品を中心に展開しており,アドバネットが得意としているPCIバスやVMEバスに対応した製品はほとんど抱えていないのが現状です。最近アドバネットが力を入れているPCI Expressをはじめとする高速シリアル・バス関連の製品も揃っていません。つまり両社が手を組めば,互いに製品ラインアップを補完しあえるわけです」(Siagri氏)。製品だけでなく,技術においても相互に補完できるという。「Eurotechグループは米I n t e lCorp.のx86アーキテクチャのプロセッサと英A R M社のプロセッサを中心に製品展開を図ってきました。これに対してアドバネットは,PowerPCプロセッサの技術も抱えています」(Siagri氏)。

 ただし,Eurotechグループは,単に足りない技術や事業を補うためにアドバネットを傘下に入れたわけではないと強調する。「これまで欧州や米国で数多くM&Aを行なってきましたが,いずれの場合も事業拡大のパートナー作りの手段だと考えています。つまり双方がともに成長することが前提のM&Aです」(Siagri氏)。このため,アドバネットの事業基盤となっている日本市場における事業展開については,アドバネットの方針を尊重する考えだ。「ここ数年,アドバネットの業績は着実に伸びています。これは現状の経営方針が正しいということではないでしょうか。その経営方針を,わざわざ変更する必要はないと思います」(Siagri氏)。

既存顧客の支援を一段と強化

 Eurotechグループに加わったアドバネットは,一段と強力に事業を推進する考えだ。「グループ内で技術開発を分担したり,共用したりできるので新しい技術への投資効率が高まるでしょう。グループ企業が連携を図ることで,世界の市場ニーズに対応できる製品企画も可能になるはずです」(栗原氏)。まず両社は,既存の顧客に提供するソリューションを強化することに注力する。製品を相互に供給することで,それぞれの製品ラインアップを拡充。それによって既存の顧客に,一段と幅広いソリューションを提供する考えだ。この際に日本で提供するEurotechグループの製品は,アドバネットが品質を保証するかたちで供給する方針である。「経営方針をはじめ製品,品質保証,お客様のサポートなどに対するアドバネットの考え方や取り組みは従来と変わりません」(栗原氏)。

 アドバネットとEurotechグループは,いわゆる「技術提携」や「業務提携」よりも,さらに強固な関係をM&Aによって築くことで双方が大きな飛躍を図ろうとしている。これは,中小の規模で独自の技術やノウハウを抱える企業にとって有力な戦略となりそうだ。今後のアドバネットおよびEurotechグループの動きは大いに注目すべきだろう。


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