TDKが工業化したフェライトは、発明した東工大と共に2009年10月、日本で10件目となる「IEEEマイルストーン」に認定された。発明以来80年,さらに輝きを増し,進化するフェライト製品や先端技術で先行するハード・ディスク用磁気ヘッドの開発状況や地球環境を保護し,人の暮らしを豊かにする電子材料の提供について,TDK 代表取締役社長の上釜健宏氏に聞いた。

TDK 代表取締役社長 上釜 健宏氏
TDK
代表取締役社長
上釜 健宏氏

——2009年はどんな年でしたでしょうか。

上釜 一時は工場の稼働率が大きく落ち込みましたが,7〜9月決算は当初の予想を上回りました。その大きな理由はデジタル家電やパソコンなど完成品市場がアジアを中心に回復していることです。日本や中国の政府による購入支援策が功を奏しました。そこで,TDKが得意なハード・ディスク駆動装置(HDD)用磁気ヘッドを含めて,受注が伸びており,電子部品の生産稼働率は80%まで戻りました。2010年にかけて,なお先行き不透明な局面が続きますが,低い在庫水準を保ちながら,コスト低減を進め,付加価値の高い製品を増やしていきます。

——欧州大手の電子部品メーカーであるEPCOS社の買収から1年が経ちました。統合による効果は上がっているのでしょうか。

上釜 EPCOS社は携帯電話機を中心にした受動部品と車載部品に強く,欧州を中心に南米にも展開しています。一方,TDKはテレビやパソコンなど民生機器に強く,日本とアジアが中心です。EPCOS社の統合によるシナジーはおおむね順調に生まれています。特に,携帯電話は高周波関連部品の採用が相次いで決まり,予想した以上の拡販につながっています。これを突破口にして,開発中の製品についても,新たな採用が期待できそうです。

このような形でビジネスが拡大していくと,お客様から積極的に要求を出してもらえるようになり,お客様との非常に好ましい関係を築くことができるようになります。そこから,重要な情報が集まり,スピーディーな提案をしたり,競合に対して有利なポジションを得ることが可能になります。

IEEEマイルストーンに認定,さらに進化するフェライト製品

——10月に米国に本部を置く世界最大の電気・電子の学会IEEEから,「フェライトの発明とその工業化」で,東京工業大学と共に,IEEEマイルストーン認定を受けたことが報道されました。

上釜 IEEEマイルストーンは電気・電子技術やその関連分野における歴史的な偉業を認定する賞で,認定には25年以上にわたって,社会や産業にインパクトを与えてきたという実績が必要です。日本からは,テレビ受信に使われる八木・宇田アンテナ,クオーツ時計,電卓,新幹線,自動改札機,富士山レーダーなどが選ばれており,今回のフェライトは10件目になります。

フェライトの事業化を目的に,1935年に設立されたTDKは大学発ベンチャーの草分けとして,フェライトを源流とする素材技術,その素材の特性を引き出すプロセス技術,評価・シミュレーション技術を展開し,さまざまな独創的な価値ある製品を提供してきました。フェライトは発明から約80年が経っていますが,なお輝きを増しており,現在もイノベーションが続き、新製品や新技術が生み出されています。そして,エレクトロニクスを支える電子材料として,テレビ,ビデオ,ゲーム機などさまざまな機器,先端製品としては,携帯電話をはじめとする高速通信機器やハイブリッドカーなど,幅広い分野に利用されています。

現在もなお進化を続けるフェライトの代表例が「フライバック電源用小型トランス ECOシリーズ」に使用されるフェライトコアです(写真1)。この製品は液晶テレビやプリンタ,エアコンや冷蔵庫などに使われるもので,新しく開発した素材,設計を採用,従来のコア形状より,約45%の重量削減を達成すると共に,世界の主要安全規格に対応しています。

写真1●フライバック電源用小型トランスECOシ
写真1●フライバック電源用小型トランスECOシ リーズとフェライトコア 左:従来品、右:新製品 (クリックで拡大)

——そのほかの取り組みはいかがでしょうか。

上釜 HDD用磁気ヘッドは徹底的に高密度化に取り組み,最先端を走る考えです。これは磁気ヘッドの世界唯一の専業メーカーとしての社会的責任でもあります。企業や個人がHDDに保存するデータは爆発的に増大しており,HDDの記録密度の高密度化と保存コストの低廉化が大きな課題になっています。

現在,HDDは2〜3年で2倍のペースで記録密度が向上していますが,それをさらに向上させるために,HDD媒体の記録層の温度を高めて記録密度を向上させる熱アシスト記録に対応したHDD記録再生ヘッドの開発を進めています(写真2)。磁気ヘッドの性能を最大限に引き出すために,周辺部品も自社開発し,2010年には熱アシスト記録を使ったHDDが実用化できる環境を整える考えです。

磁気ヘッドに用いる薄膜の積層や微細加工の技術は,コンデンサやフィルター,センサなどの用途に応用できます。それも含めて,積極的に開発を進めていきます。

2011年,優良環境製品の 売上比率30%以上を目指す

写真2●開発中の熱アシスト記録に対応した磁
写真2●開発中の熱アシスト記録に対応した磁気ヘッド
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——環境対応の面ではいかがでしょうか。 

上釜 TDKは1998年から,部材の調達から製品の生産,流通,廃棄,リサイクルに至る製品ライフサイクルの各段階で,消費エネルギーの削減,有害化学物質の排除,資源の有効利用——の観点で評価・採点する社内基準を設けて,自主的な製品アセスメントを行ってきました。現在,すべての製品がこの基準を満たす環境配慮型製品になっていますので,2008年度から基準をさらに厳格にしました。そして,その基準をクリアした製品を優良環境製品「ECO LOVE製品」として認定し,マークを付けて,アピールしています。ECO LOVE製品は2009年4月段階で売り上げの15%を占めていますが,これを2011年度までに倍の30%以上に引き上げます。

——2009年8月発表の中期経営方針で,「地球環境と人の暮らしを豊かにする特長ある電子材料・部品の提供」を打ち出していますが,既に上がっている成果がありましたら,お聞かせください。

上釜 ハイブリッドカーなどのエコカー向けに需要が伸びているのがコンバーターです。変圧時に電力が熱になって逃げるのを防ぐ高効率設計の製品で,同性能の他社製品より,小型・軽量です。そのため,搭載した車は重量が軽くなり,燃費が向上して,CO2排出量の削減につながります。そのほか,風力発電の風車に使われている発電機用の磁石や携帯電話などのモバイル機器向けバッテリーも環境性能が高く,強みを発揮できる製品です。

2010年は製品そのものの環境性能をさらに高めると共に,納入先の顧客のCO2削減にも貢献できる製品を開発することが重要だと考えています。それが,TDK製品の特長として,他社との差異化になり,私たち自身の収益力向上につながります。このような取り組みを通して,積極的に環境負荷の低減を推進していくと共に,豊かな人の暮らしに貢献していきたいと思います。

※ 会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。

お問い合わせ

TDK株式会社
〒103-8272 東京都中央区日本橋1-13-1 
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URL: http://www.tdk.co.jp/