未来の明かりとして注目を集めるLED。消費電力の小ささや,長期にわたって交換が不要といったメリットを享受しようと,商業用や産業用を中心に普及が始まりつつある。LEDで安定かつ高信頼な発光を得るには適切な駆動が不可欠だ。駆動回路を含めた効率も消費電力を大きく左右する。アナログ半導体のリーディング・カンパニーであるインターシルは,同社が誇る高度な電源技術を活用し,質の高い光を生み出すLEDドライバを開発している。

相子 和也氏
インターシル株式会社
ビジネス・デベロップメント・マネージャー
LEDを照明用のデバイスとして利用する動きが急速に加速している。 LEDには,白熱電球や蛍光管に比べて消費電力が小さくランニング・コストを節減できるというメリットに加えて,寿命が一般に数万時間以上と長いため管球の交換がほとんど不要であり,メンテナンスの手間や費用を節減できるとして,特に商業施設やビル施設での導入が進みつつある。また,経年劣化が少ないことや,蛍光管とは違って色の偏りのない素直な発色を得やすいため,「質の高い光」として景観照明などへの応用も拡大している。
さらに最近では,LEDが持つこのような優れた特性を生かして,マシン・ビジョン,チップ・マウンタ,生体認証,大型スキャナなど,産業用および業務用光源としての応用も広がってきている。
このようにLEDの照明利用が進むなかで,LED照明を支えるコントローラやドライバなどの専用デバイスがさまざまな半導体ベンダからリリースされているが,いくつかの課題も指摘されるようになってきた。
・調光範囲が狭く,ある程度以下に暗くすることができない
・調光特性のリニアリティが悪い
・調光制御をしようとすると「音鳴き」が発生する
これらの問題のほとんどはPWM(パルス幅変調)制御に起因するものだ。「LED照明で広く使われているPWM調光は,LEDを高速に点滅させ,そのオンとオフの割合で明るさを調整する方式です。そのためLEDドライバからみると負荷が高速に変動する状態に等しく,回路の安定性や余裕度が乏しい場合にさまざまな問題が現れてくるのです」と指摘するのは,インターシルでビジネス・デベロップメント・マネージャーを務める相子和也氏だ。
高速なオンオフで制御する輝度変調でも高い安定性を実現
一般のLEDドライバ・デバイスが前述したようなLEDの照明利用に伴うさまざまな課題を持つのに対して,ミクスト・シグナルおよびパワー・デバイスのリーディング・カンパニーであるインターシルが提供するLEDドライバは, 基本的にこのような問題が顕在化しない高い安定性を兼ね備えた,負荷変動に対する高速応答性を特長としている。
インターシルの電源デバイスが優れた特性を有することは,この「進化するインターシルのアナログIC技術」でもたびたび紹介したとおりだ。また,「液晶ディスプレイや液晶テレビの価値を高める,インターシルのLEDバックライト・ソリューション」では,液晶ディスプレイおよび液晶テレビ用のLEDバックライトに適した「ISL97635/ISL97635A」および「ISL97636/97636A」をすでに紹介した。
今回取り上げるデバイスは,民生用のLED照明だけではなく業務用や産業用でのLED駆動にも適したLEDドライバである。「最近の高輝度LEDのなかには順方向電流が350mAを超えるものも登場していますが,そのような大電流をPWM調光では高速にオンとオフしなければならず,駆動回路の安定性の確保がこれまでになく難しくなっています。われわれのLEDドライバは,これまで培ってきた高度な電源技術を惜しみなく活用することで,安定した発光を実現しています」と相子氏。
1%程度のデューティ・サイクルまで
リニアな調光が可能
まず最初に紹介したいのがインターシルの「ISL97634」だ(図1)。ISL97634は,順方向電圧3.5V,順方向電流20mAクラスのLEDを,最大で7個直列に接続したストリングを駆動できるLEDドライバである。
PWM調光に対応しているのはもちろんだが,その周波数範囲はDCから32kHzと広い。ちらつきや回路の音鳴きを生じない周波数を選択できる。また,PWM周波数が1kHzのとき,およそ1%のデューティ・サイクルまでリニアかつ安定した調光(減光)制御が可能だ。PWM周波数を20kHzに高く設定した場合でも,デューティ・サイクルを3%以下にまで下げることができる(図2左)。「競合他社のLEDドライバのなかには15%程度までしか下げられないデバイスもあるほか,デューティ・サイクルに対するLED輝度のリニアリティが悪いデバイスも見受けられます。一方,われわれのISL97634は,きわめて『素性が良い』のが特長です」(相子氏)。
電源駆動回路において、従来の単純な電流帰還制御方式(Iモード)では出力の変動が時間的に遅れて誤差検出回路を通じて駆動回路に戻るために、大きなデッドタイムが制御系に生じ、それに従い、出力変動に対して長いセトリングタイムが必要です。 通常の安定化電源はこの方式を使用しています。 ISL97634ではPIモード動作(Iモードに加え、Pモード動作)が行われます。 Pモード動作では、各PWMの駆動1パルスサイクル中での電流変動をリアルタイムで監視・制御しているために、変動出力に対して非常に応答性が良くなります。
ISL97634のスイッチング・レギュレータ部は1.4MHzという高いスイッチング周波数で動作するため,外付けのインダクタおよびコンデンサともに小型のものが使える。また,変換効率は85%以上と高い。ドライバFETとショットキーダイオードを内蔵し,更にOVP保護回路まで内蔵している点はソリューションコストやソリューションサイズを抑える意味からも有効だろう。
なお,ISL97634はPWM調光のほかに,リニアリティはやや悪くなるものの,DC電圧レベルによるアナログ調光も可能だ。またファミリ・デバイスとして,シリアル通信によって5ビットのデジタル調光が可能な「ISL97632」も用意されている。(PWM調光とデジタルへのLED電流調整を同時にも行える。)
昇降圧トポロジを採用した自由度の高い高輝度LEDドライバ
次に紹介する「ISL97801」は,アプリケーションが急速に増加しつつある350mAから1A程度の高輝度LEDに対応したドライバだ(図3)。最高で34.5Vの順方向電圧に対応する。LEDに換算すると8個程度の直列ストリングの駆動が可能だ(図4)。
LEDの順方向電圧の合計値は接続個数によって大きく異なる。入力電圧がある程度高くLEDの直列数が少ない場合は,降圧レギュレーションを行わなければならない。逆に入力電圧が低いにもかかわらずLEDの直列数が大きければ,昇圧レギュレーションが必要だ。
このようなさまざまな動作条件にも対応できるよう,ISL97801は接続を変えることで,昇圧と降圧を行え,また,接続するLED個数に関係なく常に昇圧を行う「ロードリターン接続」(特殊な昇降圧トポロジー)を採用している。スイッチングレギュレータデバイスで広く使われているSEPICトポロジーとは異なり,ISL97801は外部トランスを必要としないほか,昇圧と降圧の切り替え点がないため入力電圧範囲全域にわたって等しい特性が得られる点が特徴だ。なお入力電圧範囲は非常に広く,2.7Vから16Vだ。LEDの構成を気にすることなく,一般的な乾電池や車載バッテリーなどの変動する入力電源で駆動できる。
調光はPWM調光およびDC調光に対応する。PWM調光では5%を下回るデューティ・サイクルにも対応する(図2右)。調光リニアリティはきわめてリニアな特性を有するため,精度が求められる産業用途などにも最適だ。
ISL97801は外部のサーミスタなどの簡単な温度センサを利用することで高輝度LEDを使用する場合に輝度変動をもたらしてしまうために,重要な問題になる,輝度温度特性の補償も可能だ。それに加えて,LED温度がさらに別の閾値を上回った場合には,保護機能によって電流をシャットダウンすることもできる。LEDは温度によって特性や寿命が変わるため,産業用など信頼性を必要とされる用途には有用だろう。また,自動車におけるロードダンプ保護機能及び,バッテリ直接接続に対応するために,電源投入時の突入電流防止,及び出力短絡禁止回路も備えている。
この保護回路の優れたところは,出力が短絡した状況で電源を立ち上げても,ICがULV以下の低い電源電圧範囲においても出力短絡保護が完全に働くことだ。
「LEDの駆動は一見すると簡単そうにみえ,どのドライバを使っても大差ないと考えがちです。しかし,実際には回路の安定性や調光精度によって大きく左右されます。当社がこれまで培ってきた高速かつ安定な電源回路技術を惜しみなくつぎ込んだLEDドライバが,高精度な光を必要とする業務アプリケーションや産業アプリケーションのお役に立てるものと確信しています」(相子氏)。質の高い光を駆動できるLEDドライバを探しているのであれば,ぜひ検討してみてはいかがだろう。
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