携帯電話機やMP3プレーヤーなどのパーソナル・デジタル・デバイスの小型化や薄型化が進んでいる。その課題のひとつが外部コネクタの大きさだ。データ転送用のUSBコネクタやオーディオ用のステレオ・ミニプラグなどを小型きょう体に搭載しなければならず,設計者の悩みの種になっている。そうしたなか,ひとつのコネクタをUSBやオーディオで共有し利用状況に応じて使い分けるアイディアが生まれ,採用するデバイスも増え始めている。このような共用コネクタを実現するのがインターシルのUSBスイッチだ。コネクタの省ピン化を実現し,デジタル・デバイスの小型化および超薄型化に貢献する。

加藤 徳幸氏
インターシル
リード・フィールド・アプリケーション・エンジニア
携帯電話機やデジタル・オーディオ・プレーヤー,あるいは携帯ゲーム機といった,パーソナル・デジタル・デバイスの小型化と薄型化が進んでいる。最近ではネクタイピンと見間違えるほどの超小型のオーディオ・プレーヤーも登場している。
このようなパーソナル・デジタル・デバイスを縁の下から支えているデバイスのひとつがインターシルのUSBスイッチだ。インターシルはミクスドシグナルおよびパワー・デバイスのリーディングカンパニーで,デジタルデバイスの小型化を支えるユニークなソリューションを数多くラインアップしている。
インターシルのUSBスイッチの詳細に触れる前に,パーソナル・デジタル・デバイスの設計上の課題について説明しよう。
ひとつのコネクタを複数の目的で利用する
「シェアード・コネクタ」方式が主流に
パーソナル・デジタル・デバイスの設計では,サイズをいかに小さく収めるか,あるいはいかに薄くするかが最大の課題になる。バッテリーや部品の物理的なサイズによってデジタル・デバイスのサイズが制約される場合も少なくない。とくに設計者が苦労するのが外部コネクタだ。コネクタ部品の高さによってデジタル・デバイスの薄さが制限されてしまう場合もあるほか,複数のコネクタを配置するスペースが確保できない場合も多い。
たとえば携帯電話機であれば,充電用のDCコネクタ,データ転送用のシリアル・コネクタまたはUSBコネクタ,ヘッドホンやマイク用のミニプラグなどが必要になる。MP3オーディオ・プレーヤーであれば音量や再生/停止を制御するコントロール端子も必要になってくる。
しかし,USBなど規格化された標準インタフェースはコネクタのサイズが決まっていて,小型のデジタルデバイスにそのまま搭載するには大きすぎる。

図1 パーソナル・デジタル・デバイスの小型化を支えるインターシルのUSBスイッチ
そこで機器メーカーは独自の小型コネクタを採用するなどの工夫を行っているが,複数のコネクタをまとめて単純に高密度化しただけでは,ピン数が多いままで抜本的な小型化には至らない。
このような課題を解決するために,携帯端末メーカーやオーディオ・プレーヤー・メーカーが最近になって採用しているのが,動作状況に応じてひとつのコネクタを複数の役割に使う方法だ。
たとえばMP3オーディオ・プレーヤーの場合,USBを介してパソコンから楽曲データを転送しようとするときにはヘッドホンは接続できなくても構わない。そこでコネクタの端子を,あるときはUSBのデータ線,あるときはヘッドホン用のオーディオ信号線として使用すれば,ピン数を大幅に削減できる。このような方式は「シェアード・コネクタ(共有コネクタ)」あるいは「コモン・コネクタ」と呼ばれている。
「従来のデジタル・デバイスには複数のコネクタが搭載されていましたが,小型化が進むにつれて,ひとつのコネクタに複数の機能を持たせる方法が一般化しつつあります。そのような場合に,ひとつのピンを複数の信号で共有する仕組みを提供するのが,当社のUSBスイッチ(図1)です」(インターシルでリード・フィールド・アプリケーション・エンジニアを務める加藤徳幸氏)。
グラウンド基準のステレオ・オーディオ信号と
High-Speed USBとをアナログ・スイッチで切り替え
インターシルのUSBスイッチは上記のようなシェアード・コネクタを実現するデバイスだ。ここでは同社のUSBスイッチ・ファミリーのなかから,「ISL54214」を例にとって説明しよう。
ISL54214は1:3のルーティング機能を持った双方向のアナログスイッチだ。対応する信号はステレオ・オーディオが1系統とUSB 2.0が2系統である。
使い方を図2に示す。小型のデジタル・デバイスには,オーディオ信号とUSB信号とを同じコネクタに割り当てたシェアード・コネクタを搭載する。次に,デバイス内のコントローラでこのコネクタに接続されたアクセサリを検出し,マルチプレクスのルーティングを切り替えてやればよい。たとえば,「VBUSに+5Vが印加されていればUSBケーブルを介してPCと接続されている状態である」と解釈できる。その場合はUSB1またはUSB2にルーティングする。一方,VBUSがフローティングであれば,オーディオのヘッドホンが接続されている(あるいは何も接続されていない)とみなせるため,シェアード・コネクタの信号をオーディオ回路にルーティングすればよい。
このような構成を採用すると,わずか4本の信号線でUSBおよびオーディオとのインタフェースが実現できる。さらにVBUSから充電するように電源系を設計すれば,ACアダプタを接続するDCコネクタも不要になる。
ESD性能の向上やアイソレーションにも効果
小型デバイスに適した0.5mmの超薄型パッケージを採用
ISL54214に代表されるインターシルのアナログ・スイッチの特長は次のとおりだ。まずひとつは,負電圧側にも振幅するオーディオ信号をそのまま扱える点だ。一般的なアナログ・スイッチは電源電圧の範囲内の信号しか取り扱うことができないが,ISL54214は2.7Vから4.6Vの単一電源で動作する一方で,グラウンド基準の-1.5Vから+1.5Vのオーディオ信号を双方向でパススルーできる。±1Vの信号に対する歪みは0.03%(THD+N)以下と小さい。オン抵抗は室温条件下でおよそ2.5Ωだ。インピーダンスが32Ωのヘッドホンを接続した場合でも,減衰はほとんど無視できる範囲に収まる。
USB信号に対しては,オン容量が8pFと小さく-3dB帯域が700MHzと広いため,USB 2.0 High-Speedに対応した480Mビット/秒の信号を双方向でパススルーできる。USBのシグナルパスにISL54214を挿入した場合でも,1メートルのケーブルを経由したファーエンド(遠端)のアイパターンにもとくに問題は見られない(図3)。
「グラウンド基準のオーディオ信号や480Mビット/秒の高速なUSB信号の両方に対応できるように内部の回路構成を工夫するとともに,入力負荷容量などを最適化していますので,電気的にはほぼトランスペアレントとして見なせます。したがって,どのようなドライバやレシーバにも組み合わせることが可能です」(加藤氏)。
コントロール機能は,全スイッチオフ,USB1,USB2,オーディオ,およびオーディオ・ミュートの5通りをサポートする。USB1とUSB2は,上位側(たとえばアプリケーション)などで切り替えればよい。
インターシルのUSBスイッチにはパーソナル・デジタル・デバイスのESD性能を高められるメリットもある。ESDに関するISL54214の絶対最大定格は,人体モデルで5kV以上,機械モデルで500V以上だ。
また,ユーザーがUSBケーブルが接続した状態でデバイス側の電源をオフにした場合は,ISL54214はアイソレーション・デバイスとして作用する。USBのD+/D-信号に対するリーク電流はわずか5μAだ。バッテリーの無用な放電が抑えられるため,「ユーザーの知らない間に動作時間が短くなっていた」といったトラブルを避けられる。
パッケージは12リードのQFN(2.2mm×1.4mm×0.5mm)または12リードのTQFN(3mm×3mm×0.75mm)と小型化および超薄型化が図られている。
ビデオを含むアプリケーションに応じた
さまざまな品種を幅広くラインアップ
インターシルではこのほかにも多くのUSBスイッチをラインアップしている。
「ISL54217」は,機能はISL54214と同じだが,オーディオ・スイッチ部分にクリック&ポップノイズの抑止回路を内蔵した製品だ。「ISL54210/211」はUSB 2.0が1系統とステレオオーディオ1系統のアナログ・スイッチである。ローパワー・シャットダウン・モードを備えた「ISL54215」もある。
また「ISL54207」と「ISL54208」は,モノラル・オーディオ,コンポジット・ビデオ(NTSC/PAL),およびUSB 2.0を切り替えることができる。ビデオ出力を備えるデジタル・カメラやデジタル・ビデオ・カメラに最適だ。
安価なシステムを構築したい場合は,12Mビット/秒のFull-Speed USBに対応した「ISL5440Xシリーズ」(ステレオ・オーディオとUSB 1チャネル)や「ISL5441Xシリーズ」(モノラル・オーディオ,コンポジットビデオ,およびUSB 1チャネル)などが適当だろう。
「お客様のニーズに合わせて20品種近いUSBスイッチ製品をラインアップしています。評価ボードも用意しました。当社のUSBスイッチでコネクタの省ピン化を図り,デジタルデバイスの小型化および薄型化によって製品の付加価値を高めていただきたいと思います」と加藤氏は締めくくった。
※ 会社名、製品名は、各社の商標もしくは登録商標です。
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