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太陽電池の発電単価を家庭用電力料金と同等に 球状Siを使ってクリーンベンチャー21が実現へ(2) [2005/02/28]
球状Siを使った半導体技術や太陽電池技術は,米Texas Instruments Inc.(TI)が1980年代に開発した技術に端を発している。特に太陽電池に関しては,通常の板状Si基板を使う方式と比較して,Si基板の生産性が高い。切断や研磨の工程がないために高価なSi材料のムダが少ない,セル構造を工夫すればセルの折り曲げが可能で割れる心配が少ない,などの利点があり,その潜在的な有望性を期待する太陽電池技術者は少なくない。しかし,これまで複数の企業が技術開発や製品化を進めてきたが,現在まで本格的なビジネスに結び付くまでには至っていない。 球状Siの生産性と変換効率に課題 この原因に関し,クリーンベンチャー21代表取締役社長で自身も長年にわたって太陽電池技術の開発に携わってきた室園幹夫氏は「球状Siの生産性と変換効率に問題がある」と指摘する。これまでの技術では,球状Siは数十個/秒程度の速さでしか製造できなかった。また,太陽光の当たり方が通常の板状Si基板とは異なるため,単純に球状Si素子を敷き詰めた構造の球状Si太陽電池では有効面積,出力電流,出力電圧の3点でいずれも不利になっていた。球状Siを使った太陽電池の変換効率は,同面積の板状Si基板を使った太陽電池の「20〜30%減になってしまう」(室園氏)と言う。 有効面積に関しては,板状のSi基板を使うとセル全面で発電できるのに対し,球状Si素子を使うと球状素子と球状素子の間に隙間ができるため,ムダになる面積が10%程度できる。電流に関しては,板状Si基板ではすべての部分で垂直に太陽光が入射するが,球状Si素子は球形なために太陽光の入射角度が場所によって異なり,球状Si太陽電池の出力電流は同じ断面積を有する板状のSi太陽電池に比べて約10%程度少なくなる(図4)。また電圧に関しても,球状Si素子と同じ断面積を持つ板状のSi太陽電池と比較すると,球状Si太陽素子のpn接合面積は板状Si太陽電池のpn接合面積の約4倍になるため,逆方向飽和電流が大きくなり出力電圧が同じく約10%程度少なくなる(図5)。クリーンベンチャー21はこれらのことを理論と実験の両面から確認している。 図4:球状Si電池では電流が減る理由 ![]() 図5:球状Si電池では電圧が減る理由 ![]() マイクロ集光構造の採用で問題を克服 球状Siを使った太陽電池が抱えるこれらの問題を克服するため,クリーンベンチャー21は太陽光が効率良く当たり,かつ高価なSiの使用量を大幅低減できる「マイクロ集光型球状Si太陽電池」に着目し,この基本技術および高速製造技術を開発した。これにより,有効面積,出力電流,出力電圧に関する上記の問題をいずれも解決できる(図6)。 図6:今回の技術で克服できる理由 ![]() 有効面積の問題は,球状Si素子の隙間に入射した太陽光を反射させて球状Si素子に当たるようにして有効面積の無駄をなくした。出力電流の問題は,球状Si素子を収容するお椀の形状を最適化して球状Si素子の全面にほぼ垂直に光が当たるようにして,解決している。出力電圧の問題は,球状Si素子の全面にほぼ垂直に光が当たるようにしたことと,集光倍率(集光板を使った場合に球状Siに当たる光量と球状Siに直接当たる光量の比)を5倍とすることで解決した。 同時に,低コスト化も可能になった。「集光することにより性能が向上し,球状Si素子を細密充填する場合に比べて同じ面積に配置する球状Si素子の数が1/5程度に減る。この結果,従来の板状Si基板を使った太陽電池に比べ,Si使用量は悪くても1/5以下にできる」(室園氏)と言う。実際には,板状Si太陽電池の製造プロセスで発生するSi研磨ロスなどを考慮するとSi使用量は1/10程度になる可能性が高い。また集光板は,0.2mm厚のAl基板を採用しており,軽量でフレキシブル性を実現している。 球状Siに電極を作ってから反射鏡兼基板に取り付けるプレ電極方式を採用 今回の太陽電池の製造工程および詳細は以下の通り。 まず,太陽電池セルの中核となる球状Siを製造する(図7)。これは坩堝(るつぼ)内でSiを溶かし,坩堝底部のノズルより溶融Siを滴下し,自然落下中に凝固させる。球状Si製造過程での技術課題は単結晶化である。溶融Siの液滴は高純度なだけに,自然落下途中に過冷却状態となり単結晶化しにくい。高品質の球状Siを得るためには過冷却度が深くならないよう制御することが重要である。この問題を克服するため,落下距離を長くしてゆっくり冷やすなどの工夫をしている。また変換効率16%を目指し,球状Siの結晶品質の向上を進めている。この技術は東京大学および立命館大学と共同開発している。東京大学は結晶化メカニズムのシミュレーション解析を,立命館大学は球状Siの物性解析を担当している。 図7:球状Siの製造装置 ![]() 次に,球状Siの表面近傍にpn接合を形成する。このpn接合は通常の熱拡散で形成する。続いて,球状Siの一部を研磨して中心部のp層を露出させ,その露出部にプラス電極を形成して球状Si素子とする。この球状Si素子を集光板に実装する。この一部研磨は,台座に球状Siが動かないように配列固定して行う。プラス電極は研磨された面に印刷装置を使って電極材料を塗布する。集光板への実装は専用の実装装置を開発した(図8)。いずれも,現状では試作が可能な状況にあり,500個/秒で処理できる量産技術の確立を進めている。 図8:実装装置(「47/56実装技術と量産技術」) ![]() この工程で特徴的なのは,球状Si素子にあらかじめ電極を形成してから反射鏡兼基板に配置するプレ電極方式を採用したことである。プレ電極方式では球状Si素子の電極の向きをそろえて配列する必要があり,競合他社はこの工程を嫌って球状Si素子を配置してから電極を形成する方式を採用するところが多い。これに対し,クリーンベンチャー21は「量産歩留まりを考えると,プレ電極方式が必須」と指摘する。プレ電極方式では太陽電池用に仕上げた1つ1つの球状Si素子の良否を検査して事前に短絡モードなどの不良品を取り除けるのに対し,電極を後から形成する方式では太陽電池セルの形成後にしか検査できない。この結果,太陽電池セル化の歩留まりが低下するという問題が生じる。球状Si太陽電池の場合,1つの太陽電池セルに数千個の球状Si素子を使うため,太陽電池セルに仕上げた球状Si素子の歩留まりが99%としても,セル当たり数十個の不良球状素子が出てくる。一方プレ電極方式は,球状Si素子実装時の位置合わせの歩留まりが問題となるが,新開発の実装装置で99.9%程度の歩留まりを達成しており,さらに画像センサーを使って全セルを検査し,万一不良があれば部分修正する方式を採用している。 (前回の記事)
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