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 アセックからの提案詳細
GaN基板の製造コストを1ケタ削減へ
MOCVD装置技術をアセックが開発中

[2005/02/16]

 GaN基板の製造コストや品質を大幅に改善できる可能性を持ったMOCVD装置技術をアセックが開発中である。一括処理枚数や歩留まり,メンテナンス・サイクル,GaN基板の面内均一性などを総合的に判断すると,LED(発光ダイオード)やLD(レーザー・ダイオード)といったデバイス1個当たりのGaN基板コストの1ケタ削減を目指しているもようである。アセックは独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO 技術開発機構)の「産業技術実用化開発助成事業」による開発支援を受けており,現在はこの技術を搭載した実験用装置を使って基本性能などの評価・検証を進めているところである。早ければ,この春にも社内での評価を済ませ,GaN基板メーカーやLED・LDメーカーに対する受注活動を開始する。

生産量の急拡大が予想されるGaN基板市場
 GaN基板は,現在は市場が急拡大している青色LEDの原材料として,将来に向けては次世代光ディスクのピックアップに使われる青色LDや一般照明向け白色LEDなどの原材料として,その市場が急拡大していくことが期待されている。
 しかし,現状ではGaN基板の製造コストの高さと,基板品質の悪さに起因するデバイスの製造歩留まりの低さが阻害要因になって,期待ほど市場が拡大していない。例えば,現在のGaN基板は2インチ(1インチは2.54cm)で数十万円と高い。しかも国内技術者の指摘によれば,デバイス・メーカーの製造歩留まりは,すでに多くの出荷実績を持つ国内LEDメーカーでも70〜80%,新規参入の台湾LEDメーカーでは30〜50%と低い。
 このため,市場拡大のためにデバイス単価を引き下げることが難しい状況にある。逆に言えば,GaN基板の製造コストや品質を改善できれば,LEDやLDの市場が拡大し,これに合わせてGaN基板市場自身も急拡大する可能性が高い。

市場拡大のカギはMOCVDの生産性向上
 このGaN基板の製造コストや品質を悪化させている原因の一つがMOCVD装置である。現状のMOCVD装置には大きく分けて2種類ある。
 1つは,2インチのGaN基板を1枚ずつ製造する枚葉式の装置である。この装置はGaN基板の品質は良いが,生産性が極端に悪い問題を抱えている。このため,ここへ来てMOCVD装置各社が相次いで製品化しているのが,複数のGaN基板を一括処理できるバッチ処理式の装置である。現状では,2インチ基板を24枚一括処理できるものもある。すなわち,単純には枚葉式の装置に比べて20倍近い処理能力を持つハズである。
 しかし,現状のバッチ式装置には再現性が低い課題がある。例えば,一括処理したGaN基板同士の品質がバラついていたり,それぞれの基板の面内均一性が悪かったりするために,照度不足や色ムラが生じてデバイスの製造歩留まりを低下させている。さらに,成膜性能の安定性が低いために,連続処理を続けると処理枚数によって成膜結果がバラつくため,1日に1回といった頻繁なメンテナンスが必要になっている。
 この結果,「現状のバッチ式装置は枚葉式装置を上回る生産性は達成できていない」との指摘がLEDメーカーのプロセス技術者から出ている。このような状況に対してアセックは「実験機を無理矢理に量産で使っているようなもので,とても量産装置とはいえない」と指摘する。

GaAs基板で実績のある装置構成を採用
 このような状況を一変させることを目指し,アセックは生産性の高いバッチ式装置の開発を進めてきた。同社はGaAs基板向けMOCVD装置メーカーとして定評があり,今回のGaN基板向け装置でも同一の装置コンセプトを踏襲している。
 GaAs基板向け装置に関しては,同社の6インチ基板5枚を一括処理できる装置を使って複数の基板メーカーなどが量産している実績がある。さらに6インチ基板8枚を一括処理できる装置をユーザーに納入した実績も持つ。このためGaNの2インチ基板に関しては,基板設置面積が6インチ基板5枚に相当する35枚一括処理装置や,6インチ基板8枚に相当する56枚一括処理装置を,原理的にはユーザー要求に合わせて製品化できると言う。
 今回のGaN基板向け装置の基本コンセプトはGaAs基板向け装置と同様,フェースダウン構造と自公転システムの組み合わせになっている(図1)。フェースダウン構造は,GaNのエピタキシャル成長面が下側になる構造である。サセプタの上に基板を置くフェースアップ構造と違って,サセプタから基板が落ちないように保持する機構が必要になるために装置構造はやや複雑になるが,成膜表面にパーティクル付着しにくい,原料ガスの対流の影響を受けにくいなどの特長を持つ。自公転システムは,サセプタと基板の両方を回転させながら成膜する方式である。これにより,チャンバ内の成膜速度の不均一性に由来する基板間および基板面内の不均一性を解消する。

図1:今回のフェースダウン自公転方式MOCVD装置の構造図
図1:今回のフェースダウン自公転方式MOCVD装置の構造図

 このように,GaAs基板向けで実績のある装置コンセプトを採用しながら,GaN基板固有の問題を解決していった。まずGaN基板の成膜では,NH3ガスを使うためにGaAs基板向け装置で使っていたグラファイトが腐食して使えない,成膜温度が1,000℃以上と高いためにステンレス部品が使えない,といった問題が起きる。これらの問題に対しては,材料や部品設計を見直して対応した。さらに原料供給方式をGaN基板の成膜に適した構造に改造している(図2)。

図2:今回のMOCVD装置の原料供給方式(リアクタ断面)
図2:今回のMOCVD装置の原料供給方式(リアクタ断面)

 現在は,このような技術を搭載した実験用装置を使って成膜装置としての基本性能などの評価・検証を進めているところである。さらに,この装置を使ったGaN成膜のプロセス技術を合わせて開発中である。早ければ,この春にも社内での評価を済ませ,GaN基板メーカーやLED・LDメーカーに対する受注活動を開始する。この際には,MOCVD装置の出荷時には安定した製造が可能なプロセス・レシピを付けて出荷するとアセックは言う。


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