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携帯電話機シェア・トップのシャープ
MeP SoC活用の携帯電話開発の狙いなどを明らかに

 シャープによるMeP搭載のSoC(MeP SoC)を活用した携帯電話の開発および市場動向,MePの活用事例が,「MeP World 2006〜FORUM & EXPO〜」の基調講演で発表された。講演者である同社通信システム事業本部プラットフォーム開発センター副所長兼デバイス開発部部長の安本隆氏は,MeP SoC採用の狙いなどを明らかにした。
 MeP Worldは,MeP(Media embedded Processor)の普及を目指し結成されたMeP共同マーケティングが主催しており,2006年で3回目を迎える。今回は「MePが開拓する携帯機器向けソリューション」をテーマに,MeP関連のコアをはじめ,設計サービス,開発環境,周辺技術などに関する最新情報が発表された。

携帯電話に求められる四つの要素
 2004年以降,MeP SoC搭載の携帯電話を開発したシャープは,2005年の国内携帯電話機市場でトップ・シェアを獲得した。同社の携帯電話の開発を指揮する安本氏は,今後の携帯電話に必要な要素として次の4項目を挙げている。
 第一は「表示のさらなる高精細化」である。同氏は,フルブラウザや地図表示の充実を図るために,横長の画面とVGAクラスの画素数を併せ持った表示能力が携帯電話に求められるだろうとしている。VGA対応の高精細な液晶は,同社が2006年に初めて携帯電話に搭載した。
 第二が「低消費電力化」である。低消費電力化は,昨年サービスが開始された「ワンセグ放送」に対応する重要な要素技術である。現在,同社は2006年6月に発売した「905SH」シリーズで4時間の視聴時間を実現している。安本氏は「テレビの視聴時間を延長するため,いっそうの低消費電力化が求められる。」と推測している。
 第三は「画像処理の高機能化」。従来,画像処理をベースバンド・プロセサだけで実行していたが,今後はさらに圧縮率の高い,高精細な映像の再生や録画に対応することが求められる。同社の開発過程をたどると,初期のものは「QCIF」対応で映像もベースバンド・プロセサで処理していた。その後「QVGA」液晶を搭載した「V602SH」シリーズ(2004年発売)で初めてMePを搭載したマルチメディアLSIを採用し,処理能力の向上を図った。「904SH」シリーズではVGA液晶を搭載し,画像・動画処理のさらなる高性能化に取り組んだ。
 第四は「小型化への回帰」である。同社は「705SH」で約104gという軽量化を実現した。「ユーザーは,一度手に入れたこのような機能を手放したくはない。このようなユーザー心理に着目すると,今後は高い機能を維持したうえで小型・軽量化が求められる」と,安本氏はみている。
 こうした要求を実現するうえでも,これまで以上にMePの重要性は増してくる。

今後の携帯電話の開発に不可欠なMeP SoCとは?
 MePとは,東芝が開発したデジタル・メディアSoC(システム・オン・チップ)向けのプラットフォームである。画像や動画,音声などに関するアプリケーションを,携帯電話本体のベースバンド・プロセサに負荷をかけることなく実行できる。現在,携帯電話で使われるMeP SoCは,データ処理の高速化や,製品開発期間の短縮,開発費用の削減に大きく寄与している。
 安本氏はMePアーキテクチャの主な特長を3つ挙げた。第一はコンフィギュラブルな構造である。データの処理内容に応じた拡張命令やローカル・メモリー,ローカル・キャッシュの最適化ができることが大きな特長である。またMePは最適化を図ることによって小さい面積で実装でき,携帯電話の小型・低コスト化に寄与している。
 第二は,同一チップに複数のMePコアを搭載することで,データ処理を分散できる点である。これは共有メモリー型非対称マルチプロセサと呼ばれる仕組みで,一貫したメモリー管理の下,異なるタスクを並列に処理できる。処理を分散させることで低いクロック周波数で動作させても高い性能を実現でき,低消費電力化を可能にしている。また,チップ内の広帯域バスを利用して効率的なMeP間通信を構成することができるのも大きなメリットである。
 第三はMePコアの世代間の命令互換性である。これによってソフトウェアの移植性が非常に高くなっている。また,チップ内に複数のMePコアがあっても同一のソフトを実行させることができる。こうしたMeP SoCの特長を念頭に,安本氏は携帯電話のLSI構成をはじめ,新機種について実例を挙げながら解説した。

MeP SoCコアの活用事例,処理速度と汎用性の高さに注目
 携帯電話のブロック図(図1)を見ると,携帯電話は主にベースバンド・プロセサとマルチメディアLSIで構成されているのがわかる。シャープは,ベースバンド・プロセサをメイン・プロセサと位置づけ,マルチメディア LSIを,高付加価値を生み出すアプリケーション・プロセサと位置づけている。そもそもMePは,画像処理やワンセグ放送,データ記録,オーディオ処理などを行うためのプラットフォームとして開発されたプロセサである。例えばワンセグ放送では,音声と映像をチューナーで受信し,その信号を多重分離するMePコア,映像処理するMePコア,音声処理するMePコア,全体を制御するMePコアなどを設け,一連の処理を複数のMePコアに分散させている。(図2

 「MePは,それぞれのMePコアに専用の処理を割り当て,最適なコンフィグレーションを行う仕組みである。個別に処理したデータを一つの内蔵メモリーで共有することで画像処理などを実行できるようになっている。こうした方式の大きなメリットは,高精細化するデータを分散処理することでクロック周波数が低くても高い性能を実現できる点である。バスのボトルネックは,広帯域バスの採用によって解決している」(安本氏)
 MePの活用事例として安本氏は,MeP世代間のソフトウェアの移植事例をはじめ,ユーザー・ソフトの開発事例,マルチ動作の事例を紹介した。
 MePはソフトウェアの移植性が高く,過去に開発したソフトウェアをそのまま新製品に組み込むことができるというメリットがある。MePのソフトウェアはコアごとに独立に開発でき,チップに組み込んだ後にそれぞれ独立に動作させることができる。同氏はその事例として,液晶画面への表示機能とカメラでの撮影機能を挙げた。液晶画面にデータを表示させるソフトウェアと,カメラで撮影した画像を処理するソフトウェアを別々のMePモジュールに実装し,それらを同時に動作させることが可能である。

 安本氏は,ソフトウェアの開発を部分的にアウトソーシングした場合でも,MePを使えば簡単に自社で開発した機能を追加することができるとしている。例えば,カメラで撮影した画像を処理するような場合,画像処理の基本的なソフトウェアを外部にアウトソーシングし,その処理をある特定のMePモジュールで実行させる。処理されたデータをメモリー・カードに書き込む間に,「別のMePモジュールを利用し,手ぶれ補正や色彩補正を行う独自開発のソフトウェアを組み込むことも容易にできる」(安本氏)と言う。
 また,MePを搭載したマルチメディアLSIは複数コアで同一のソフトウェアを実行することもできる(図3)。MePはメモリー・マップを簡素化しており,小容量でコア共通のSRAM領域とローカルなSRAM領域,およびコア共通の大容量エンベデッドDRAM領域が設定可能である。メモリー・マップがこのように設定されていることによって,共有データの効率的なやり取りが可能になっており,ユーザーの使いやすさを向上させていると,安本氏は強調した。

ボーダフォン向け905SHシリーズ,サイクロイド・スタイルを採用
 安本氏は,MePを搭載した携帯電話として最新の905SHシリーズについて解説した。905SHシリーズは,テレビと通話,テレビとメールを同時に使える機能を持った新製品で,携帯の画面を縦型から横型に回転できる。垂直軸に90度回転するサイクロイド・スタイルを採用した。テレビを観るときは横長画面,通話やメールを行うときには縦長画面を利用する設計となっている。
 905SHシリーズの特長である『ながら機能』とは,テレビを観ているときに電話がかかってきた場合,あるいはメールの送受信がしたくなった場合に,画面を操作することでテレビ機能を維持したままユーザーにとって優先順位の高い操作を実行できることである(図4)。このほか,905SHシリーズでは,4時間のワンセグ放送の視聴が可能になっており,MePによる低消費電力化がその実現に貢献している。
 同シリーズは,MePの特長を生かした商品化として,今後も大きな需要を喚起することが期待できる。

さらなる低消費電力化を望む
 MePへの要望事項として安本氏が最初に挙げたのは「さらなる低消費電力化」である。安本氏は,複数搭載したMePコアに対して,それぞれに分周器を割り当て,異なるクロック周波数で動作させるようにすれば,いっそうの低消費電力化につながるのではないかと指摘した。「MePコアが処理する命令内容に応じて,周波数や電圧を決め,MePコアごとに最適なクロック周波数で動作させることによって,さらなる消費電力の低減を実現できるだろう」(同氏)。
 次に同氏が挙げたのは「ファームウェア資産の再利用」である。現状では,機能拡張した場合,ハードウェアに依存しないコードを,一部ハードウェアに依存するコードに書き換えてからコンパイラで機械語に変換する。この場合,ハードウェアに依存するコードを含むファームウェアの再利用性は低下する。機能拡張した場合にも,ハードウェアに依存しないコードから直接コンパイラで自動的に拡張命令を含む機械語に変換できれば,より再利用性が高まると指摘した。
 最後に「デバッグの効率化」について述べた。ベースバンド・プロセサとMePを複数搭載したマルチメディア LSIの間で協調デバッグを実行できれば,さらに開発効率が上がるのではないかと説明し,講演を結んだ。

図1:MeP SoC搭載の携帯電話のブロック図例
MeP SoC搭載の携帯電話のブロック図例
図2:MePによる分散処理の例
MePによる分散処理の例

図3:複数のMePモジュールを使った同一ソフトウェアの実行例
複数のMePモジュールを使った同一ソフトウェアの実行例

図4:マルチ動作の実行例
マルチ動作の実行例




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