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第8回LSI IPデザイン・アワードの受賞論文決定 1Tビット/秒のチップ間無線インタフェースや次世代車載LAN向けOSなど 第8回を迎えた「LSI IPデザイン・アワード(略称:IPアワード)」の表彰式・懇親会が,2006年5月18日に東京コンファレンスセンター・品川で開催された(図1)。IPアワードを受賞した学生や技術者,関係者など,総勢100人程度が一堂に会して活気溢れる式典となった。表彰式ではIP優秀賞を受賞したチームが楯を掲げるパフォーマンスなどもあり,式をいっそう盛り上げた(図2)。 今回の応募件数は全体で66件(大学部門51件,企業部門15件)。その数は大学・企業部門ともに前回を上回った。いずれの部門でも,年々,応募論文のレベルが上がっており,完成度が高いものが多かった。また,産学連携による成果が複数応募されてきたことも今回の特徴だった。 大学を対象にした完成表彰部門ではIP優秀賞2件とIP賞6件,同開発助成部門では開発奨励賞6件が選出された。また,研究助成賞には両部門合わせて9件の論文が選ばれた。企業部門ではIP優秀賞1件とIP賞3件,奨励賞3件が選ばれた。 図1:第8回LSI IPデザイン・アワードの表彰式で楯を授与する運営委員長の超電導工学研究所所長 田中昭ニ氏 ![]() 図2:楯を掲げ,喜びを表現する受賞者 ![]() 大学部門:IP優秀賞は,例年になく2論文を選出 今回,大学の完成表彰部門には29件,同開発助成部門には22件の応募があった。件数の多さもさることながら評価の高い研究が多かった。その結果,完成表彰部門では「1Tb/s 3W 三次元積層チップ間誘導結合インタフェース」と「磁気センサアレイと統計的角度計算回路による高精度CMOSロータリングエンコーダSoC」の2件がIP優秀賞に選出された。 前者の論文は,チップ間の無線伝送接続で1Tビット/秒(世界最速)を実現しつつ,最小電力(3W),最小エネルギー(3pJ/ビット),最小面積(1mm2)のLSIを完成させた点が高く評価された。後者は,複数の回転角度演算回路を1チップに集積した新しい原理のロータリ・エンコーダであり,実用性の高さが評価された。 「分野はまったく違うが,どちらも完成度が高く,ともに優れている。優劣は付けがたく,2件をIP優秀賞とすることにした」と,大学部門審査委員長の雨宮好仁氏(北海道大学大学院教授)が審査過程を説明した(図3)。 このほか,開発奨励賞を受賞した「ばらつきを利用して速度と歩留まりを向上させるFPGA」が高い評価を得た。この論文は,FPGAのチップ内のバラつきを抑えるのではなく,各チップのバラつきを考慮して,素子配置を最適化する発想力が評価された。 図3:審査過程を説明する大学部門審査委員長の北海道大学大学院教授 雨宮好仁氏
企業部門:IP優秀賞は日本発の国際標準をにらむ 企業部門では,9人の審査委員のうち4人が推薦する論文「オープンソースFlexRay通信:Time Triggered OSとFlexRay通信ミドルウェア」がIP優秀賞に選出された。同論文は,次世代車載ネットワーク標準規格に対応したOSおよびミドルウェアをテーマにしている。タイムリーであり,しかもオープンソースとして国際標準をにらんでいる点が大きく評価された。論文の質も極めて高かった。今後,確実な需要につながることが期待される。 また,今回を含めて5年連続で応募し,5年連続でIP賞を受賞した企業があった。テクノマセマティカルである。同社の「低消費電力H.264_HD High profile Codecコアの開発」は,数学的な手法を利用して演算量を減らし,高性能と低消費電力を両立させている。2006年から設けられたIP賞準推薦が集中し,文句なしの受賞となった。 総評:研究レベルの高さと広がりを評価 表彰式・懇親会を通して,各委員からIPアワードを受賞した方々への高い評価や今後に対する期待などが寄せられた(図4,図5,図6)。 「企業の目から見ても,非常に素晴しい研究とその成果だと感じています。また,幅広い分野で大学や企業がLSIの研究・開発を進めている点に感心しました。こうした研究の成果をぜひ社会に役立て,有効に活用していってほしいと思います」(運営委員,東芝 セミコンダクター社首席技監の佐藤哮一郎氏)。 「将来有望な研究がたくさんあるなと感じております。特に研究助成賞を受賞された方々は来年以降もぜひ応募していただきたいと思います。周りを巻き込んで,より一層,優秀な成果を出すことを期待しています」(運営委員,セイコーエプソン半導体事業部副事業部長の武田浩氏)。 「IP自体の複雑さが増しており,システムを内部に取り込んだ,あるいはシステムにからんだ応募が年々増えています。また,2006年の企業部門には大学と企業の共同研究や大学発ベンチャーの応募が3件も含まれており,2004年や2005年にはこうした応募がなかったことを考えると素晴しいことだと思っています。大学部門のIPアワードに対する応募の熱心さが企業部門にも伝わってきたのかなと考えています。2006年はIP賞準推薦枠を設けており,審査も非常に活気のあるものでした。特にIP優秀賞を受賞した論文は,日本発の国際標準への期待も大きく,産学連携の成果としてもIPアワードにふさわしいとの評価でした」(企業部門審査委員長,IPTC CTOの森祥次郎氏)。 表彰式に続いて行われた懇親会では,企業や大学という枠を越え,アジアの中の日本,世界の中の日本という視点からIPアワードの役割や今後に対する期待が寄せられた(図7)。 「諸外国,特に東アジアの状況を見ると大変な勢いでLSIの研究・開発が進んでいます。台湾ではすでに300人を越える教官が生まれ,優れたLSIの設計教育を行っています。それによって多くの技術者が生まれています。もちろん,これらの技術者は台湾国内の需要を満たすだけに留まらず,世界で活躍していくことになるでしょう。われわれとしても,IPアワードを通じて世界で認められる日本の技術者を育てていきたいと思っています。それが使命だとも感じています。こうした仕組みをうまく生かすためには,育った人材を企業が高く評価し,受け入れてくれることも重要です」(運営副委員長,東京大学教授 大規模集積システム設計教育研究センター センター長の浅田邦博氏)。 浅田氏は新しい賞の構想についても触れた。「第10回には企業がテーマを提供し,それに応募してきた論文を表彰する賞が新設されます。これはIPアワードの拡大を図りつつ,新しい技術を求める企業の要求に応える取り組みです。大学や企業の垣根を越え,より実用性の高い研究・開発に光を当てるのが狙いです。研究・開発の実用化という目的がより明確になり,IPアワードを契機として日本発の技術が世界に羽ばたくことを期待しています」(浅田氏)。
図5:楯を授与する運営委員のセイコーエプソン半導体事業部副事業部長の武田浩氏 図6:審査過程を説明する企業部門審査委員長のIPTC CTOの森祥次郎氏 図7:懇親会で挨拶する運営副委員長の東京大学教授 大規模集積システム設計教育研究センター センター長の浅田邦博氏 ![]() 【IPデザイン・アワードの概要】 この賞は,システムLSIに役立つ,新規性,実用性,有用性などを持つIP(設計資産:Intellectual Property)の開発を支援し,半導体産業の活性化を図るため1998年に創設された。松下電器産業(株),NECエレクトロニクス(株),(株)東芝,(株)ルネサス テクノロジ,富士通(株),ローム(株),セイコーエプソン(株),(株)メイテック ,(株)IPTC ,日本政策投資銀行,日経BP社などのご協力を得て,IPアワード運営委員会が運営している。 IPアワードは3つの部門から成る。大学の論文を対象とした「完成表彰部門」「開発助成部門」(大学部門)と,企業の論文を対象にした「企業部門」である。大学部門には「IP優秀賞」「IP賞」「開発奨励賞」「研究助成賞」が設けられており,企業部門には「IP優秀賞」「IP賞」「奨励賞」が設けられている。将来性が高いものを対象に,今後の研究・開発を支援する助成金が授与される。 |
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