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IPアワード運営委員長 田中昭二氏 インタビュー
目標を設定すれば,日本人はもの凄い力を発揮する
[2005/07/12]


 「LSI IPデザイン・アワード(IPアワード)」は,システムLSIに使う,独創的で優れたIP(intellectual property)の開発を支援し,半導体産業の活性化を図ることを目的に1998年6月に創設された。今年の5月には,7回目の表彰式が行われた。IPアワードの運営委員長で超電導工学研究所所長の田中昭二氏が,半導体産業のこれまでを振り返りながら,IPアワードの意義と将来について語った。
(聞き手:福田 昭=テクノアソシエーツ特約記者)


超LSI技術研究組合が日本の競争力強化に貢献

IPアワードの運営委員長で超電導工学研究所所長の田中昭二氏
 日本半導体産業の発展を考えるときに大きな意義があったのは,官民共同の研究開発プロジェクト「超LSI技術研究組合」である。米IBM Corp.による未来コンピュータ開発構想「フューチャー・システム」がきっかけとなり,1976年に超LSI技術研究組合がスタートした。
 IBMはフューチャー・システム開発の一環としてメガビット級のDRAMを開発することになっていた。そこで超LSI技術研究組合は,10年でメガビット級DRAM向け製造技術を開発するという目標を立てた。このプロジェクトには,10年間で官民が総額1,000億円の予算をつぎ込んだ。現在に換算すると1兆円に相当する,巨大プロジェクトである。
 10年後の1985年に日本企業は1MビットDRAMチップを試作した。超LSI技術研究組合の目標が達成されたことになる。ほぼ同時期に,日本の大手半導体メーカーはDRAMで米国半導体メーカーを抜き,独走態勢を築いていた。日米逆転が起こったのである。

強すぎる製造と貿易摩擦
 ただし、このプロジェクトには副作用があったように思う。製造を強くすれば良いという風潮である。技術開発が製造プロセス偏重になり,ややもすれば,回路設計の開発がなおざりになっていたように感じる。この後遺症は小さくない。10年ほど前に日本の半導体設計者に設計技術のレベルについてたずねたところ,ほとんどの設計者が「今のままでは絶対に米国に勝てない」と答えていた。
 また1980年代の日米逆転の結果,半導体貿易摩擦が起きた。DRAMのパイオニアである米Intel Corp.は,DRAM事業からの撤退を余儀なくされた。この決断は,大変な苦痛を伴ったはずだ。
 米国は日本に追い付き,追い越すべく,官民共同の開発プロジェクト「SEMATECH(セマテック)」を1987年にスタートさせた。大議論の結果,SEMATECHでは標準となる半導体製造装置を開発することになった。「製造装置と処方箋(しょほうせん)をセットで導入すれば,誰でも同じように半導体を量産できる」というコンセプトである。半導体メーカーと半導体製造装置メーカーが一体となって標準の装置を開発した。
 SEMATECHの効果は大きかった。台湾や韓国などの半導体メーカーでも,優れた製造装置を導入すれば,最先端のDRAMを製造できるようになってしまった。1990年代の初めに日本でバブル経済がはじけ,日本の半導体メーカーが設備投資を縮小したことも痛い。結局,巨額の投資を実施したアジアの新興企業に名を成さしめてしまった。

IPアワードの課題をより詳細に
 LSI IPデザイン・アワード(IPアワード)が1998年に設けられたのには,こういった認識が背景にある。大学が設計技術に取り組む意欲をIPアワードによって高め,半導体産業の活性につなげることを目的としている。第7回まで続いたのは,ひとえに関係各位の多大なご協力の賜物(たまもの)である。
 大学における半導体設計の研究に関しては,1996年5月にスタートした「VDEC(VLSI Design and Education Center)」の効果が大きい。VDECは,大学で設計した半導体チップを試作してくれる組織である。VDECとIPアワードの相乗効果があったと考えている。
 IPアワードでは,大学の研究成果を産業界が評価する。これは極めて珍しい。産業界の要望が大学に伝わりやすく,効率が良い。
 その意味では,IPアワードを発掘型のテーマから誘導型のテーマへと切り換えていくことが考えられる。日本人は目標を与えられると,もの凄い力を発揮する。今後のIPアワードでは課題をもっとシャープにし,絞ったテーマを設けた方が良いかもしれない。

問い合わせ先:
(株)テクノアソシエーツ
LSI IPデザイン・アワード事務局
  〒107-0052
  東京都港区赤坂2-17-22
  赤坂ツインタワー東館17F
  TEL:03-5545-1724  FAX:03-5545-1721



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