MeP OPEN Collaboration
MeP OPEN Collaboration

IPアワード


このサイト群について
LSI OPEN Collaboration
MeP OPEN Collaboration
SoC OPEN Collaboration
IP Award OPEN Collaboration
FPD Research

 >提携サイト
 NIKKEI MICRODEVICES
 Silicon Online


日経マイクロデバイス



第7回LSI IPデザイン・アワード「IP優秀賞」受賞者インタビュー
雑音の元凶,電源電流変動をリアルタイムに観測
[2005/06/03]


 大学部門完成表彰部門部門のIP優秀賞は,東京大学が「LSI 電源用 di/dt 測定回路コア」で受賞した。電源電流の時間的変動(di/dt)をオンチップ・コイルで検出する回路コアである。LSIチップに組み込むことで,電源電流の変動をリアルタイムで実測できるようになる。LSIパッケージやLSIチップなどの開発に役立つ。受賞者の代表である名倉 徹氏に,研究成果に至るまでの道のりを伺った。
(聞き手:福田 昭=テクノアソシエーツ特約記者)


受賞者代表 名倉 徹氏
東京大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程(IPアワード応募当時)。現在は同博士課程を修了し,NECシステムデバイス研究所に勤務。
Q:本日はよろしくお願い致します。東京大学大学院の博士課程を修了され,この(2005年)4月1日からNECにご勤務されておりますね。現在(5月24日)は新人研修を受けられているのでしょうか。


いいえ。私は中途採用という扱いなので,普通に働いています。社会人の経験があるもので。
Q:社会人を経験してから大学院博士課程に進まれたのですか。もう少し詳しく伺えますか。


1995年に東京大学の電子工学科を卒業しています。浅田邦博先生の研究室です。SOI(silicon on insulator)デバイスの研究をしていました。修士課程に進み,中野義昭先生の研究室で分布帰還型半導体レーザーの研究に携わりました。
Q:修士課程で研究テーマが変わっているのはなぜでしょうか。


光の研究をなにかやりたかったからです。面白そうだったので。
Q:修士課程を修了後は企業に勤められたのですね


日本の大手エレクトロニクス・メーカーに勤務し,SOIを使った集積回路を設計していました。通信用のサーデス(SERDES:serializer/deserializer)回路です。この企業に2年ほど勤務した後,1999年設計自動化(EDA:electronic design automation)ツール・ベンダーである米Avant!社(注:同社は後に,EDAツール・ベンダーの米Synopsys社に買収される)に転職しました。
あこがれの米国で働く
Q:なぜ米国の企業に転職したのでしょうか。


東京大学の研究室時代に先輩だった方がAvant!のCEO(最高経営責任者)に気に入られまして,来ないかと誘われていました。その先輩から「いっしょに来ないか」と誘われたのです。また元々,米国に行きたいなあ,という気持ちもありました。
Q:なぜ米国で生活したかったのでしょうか。


修士課程の研究成果を米国の国際学会で発表したのですが,そのときに米国のいろいろなところに感動したのです。そのときが海外に行ったのは初めてでした。米国はとにかく,すべてが大きかった。道が広い。建物が大きい。人々の体格もでかい。そして陽気。タクシーに乗ると運転手さんが「ハーイ。どこから来たんだい」と自分に話しかけてくる。非常に良くって,感銘を受けたんですよ。  いつか米国で暮らしたいなあと思っていたところに,先輩から誘いがあった。それで誘いに乗ってみようと。
Q:不安はなかったのですか。


不安はもちろんありました。言葉や文化の違いもあるし,親は反対するし。  あと,自分の実力はどんなものだろうか,という不安もありました。米国で通用するのかどうか。シリコンバレーには世界中から優秀な人間が集まってきて,バリバリ働いているという印象があったので。
Q:実際にシリコンバレーで働かれた感想はいかがでしたか。


意外と「ああ,こんなものか」と。優秀な人間はもちろんいました。でも言われているほど,すごい人間ばっかりでもなかった。
Q:Avant!ではどのようなお仕事をしていたのですか。


いろいろな設計ツールの開発をしました。製品になったツールには,回路シミュレータや波形表示ツールがあります。製品にならなかったツールもいくつかあります。
Q:製品にならなかったとはどういったことでしょうか。


あるツールを開発中に,それを中断して別のツールを開発せよ,と言われるからです。私は,誘ってくれた先輩とともに開発業務に携わっていました。CEOはビジネスになりそうなテーマがあると,「今の開発は中断してこれを開発せよ」とくるのです。そういう場合はすぐにテーマを切り換えて開発を進めました。
Q:途中で開発プロジェクトを中断させられるのは,嫌ではありませんでしたか。


それほど嫌ではなかったですね。より重要な開発テーマに移るわけですから。
博士号を取得しに日本へ
Q:Avant!に3年間勤務してから, 2002年の4月に東京大学大学院の博士課程に入られた。それはなぜでしょうか。


Avant!で働いていたときの影響が大きかったんですよ。米国にいると,博士号を持っているか否かですごく違う。
Q:企業による待遇が違うということですか。


待遇も違いますし。それよりも,なんかこう,気持ち的にも違うんですよ。初対面で名刺を交換すると,「おまえ,博士号を持っているんだ」といった会話が出てくるといった具合に,博士号の価値が日本と米国で全然違う。日本だと,博士課程を修了したと言うと3年間遊んでいたと受け取られかねない。しかし米国では,博士号の取得者がきちんと尊敬される。  それから勤めていたAvant!の中で尊敬していた上司,自分もこうなりたいと思わせられた上司はほとんどが,博士号を取得していました。エレクトロニクス産業で働く限りは,米国企業との交流は避けて通れない。だったらこの際,博士号を取得しようと考えました。
Q:米国で働きながら博士号を取得する可能性もありますが。


おっしゃる通りです。Avant!からも,そういったオファーをもらいました。でも,これは聞いた話なのですが,米国の大学院は日本の修士号を認めてくれない,博士号の取得には最低でも5年かかる,と言われたんです。働きながらですと,5年以上かかるでしょう。そもそも中途半端は嫌いですし。半分働いて半分学生というのは嫌だと。それならば,退職して日本に戻り,3年間で博士課程を修了した方が良いと考えました。
指導教官の好反応に感激
Q:東京大学大学院の博士課程では大学の卒業研究時と同じく浅田邦博教授の研究室に入られた。


最も素直な選択ですよね。
Q:研究テーマはどのようにして選ばれたのでしょうか。


日本のエレクトロニクス・メーカーで回路設計をしていたときには,電源雑音の問題ですごく苦労しました。そこでシグナル・インテグリティ,すなわち雑音の研究をしたいと思っていました。
Q:最初から,電源電流の時間変化(di/dt)を測定する研究を手掛けられたのですか。


いいえ。初めは,電源配線にスタブ(分岐)を付けてdi/dtを減らすことを試みていました。でもうまく行かなかった。信号が数GHzだと,周波数が低すぎて効果があまり見えないのです。50GHzくらいあると,もっと効果が出てくるのですが。
Q:まだ時期的に早すぎた。


悩みました。そのうち,di/dtの測定回路を,ふと思い付いたのです。研究室のミーティングでアイデアを説明したら,指導教官の浅田先生が「それは面白い」といった非常にいい反応,ポジティブな反応を返してくださった。その瞬間が結構うれしかったですね。
Q:そしてdi/dtをリアルタイムで測定する回路を考案された。コイルのインダクタンス(L)を利用して電圧に変換する回路ですね。


オンチップ・コイルという考えはすぐ出てきました。高周波回路では,スパイラル・インダクタ(コイル)が良く使われていましたから。
Q:di/dt測定回路の回路面積はどれ位でしょうか。


ボンディング・パッド数個分です。それほど大きくはないと思います。それに,回路の動作周波数が高まるとdi/dtが大きくなります。同じ電圧を取り出すのであればその分,コイルを小さくできます。
Q:テスト用内部回路とdi/dt測定回路の両方を内蔵したチップ(図1)の設計では,誰かが手伝われたのでしょうか。


いいえ。全部自分で設計しました。
Q:チップは1回目の試作で動作したのですか。


動きました。オシロスコープに測定波形が出てきたときは,思わず「ガッツポーズ」していました(図2)。
Q:本日はどうもありがとうございました。

受賞論文の一覧はこちら

図1:電源電流の時間的変動(di/dt)を測定する回路コアを組み込んだ試作チップ
(a)はチップ写真。寸法は3mm×1.8mm。右上にdi/dt測定回路を配置した。(b)はdi/dt測定回路を拡大したところ。寸法は340μm×280μm
図1:電源電流の時間的変動(di/dt)を測定する回路コアを組み込んだ試作チップ

図2:電源電流の時間的変動(di/dt)波形
(M)はdi/dt測定回路の出力。(C)は電源配線に直列挿入された抵抗の両端の電圧波形から計算したdi/dt波形。両者が良く一致していることが分かる。
図2:電源電流の時間的変動(di/dt)波形




Copyright (c) 2004-2005 TechnoAssociates, Inc. All rights reserved.
株式会社テクノアソシエーツ IP Award OPEN Collaboration Top Award News Award Paper Interview 関連情報(イベントなど)