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インタビュー

ASPLAのシャトルで日本の大学が実力勝負へ
東京大学助教授,池田 誠氏インタビュー
[2005/03/22]

 「先端SoC基盤技術開発(ASPLA)の90nmプロセスを使ったシャトルが利用できるようになり,ようやく日本の大学が実力で勝負できるようになった」。大規模集積システム設計教育研究センター(VLSI Design and Education Center:VDEC)におけるASPLA利用の枠組みを構築し,各大学からの設計データの取りまとめ調整などの実務を担当する東京大学助教授の池田 誠氏は,いよいよ始まったASPLAのシャトル・サービスを利用したVDECでのチップ試作を受けて,このように発言した。LSI設計分野では,これまで日本の大学は,海外に比べて遅れているとの指摘が多かった。これに対し,池田氏は「最先端プロセスを使ったチップを作れないため,遅れたプロセスを前提に奇抜なアイディアを盛り込んだチップの設計に挑まざるを得ないハンディキャップがあった」と指摘する。今回のASPLAシャトルの利用により,最先端プロセスを前提にした設計が可能になる。「ハンディキャップは埋まった。逆にいえば,日本の大学は言い訳できない状況になった」(池田氏)と気を引き締める。
(聞き手は長廣恭明)

問 まずVDECについて教えて欲しい。
 VDECは1996年5月から東京大学に設置された。全国の国公私立大学と高専におけるVLSIの設計教育の高度化と充実を目指して最新の技術情報を全国に発信するとともに,各校における実践教育のためのチップ試作を支援することを目的としている。チップ試作は,これまで各種民間企業の協力を得て実施してきた。例えば,1996年は0.5μmのデジタルCMOSプロセスと1.2μmのアナログ・プロセスで試作できた。さらに,1999年には0.35μm,2001年には0.18μmのデジタルCMOSプロセスが利用できた。
問 ASPLAシャトル利用に関する現在の状況はどうか。
 ASPLAが立ち上がった後,2003年後半からわれわれとの交渉が始まった。2003年末から2004年初にかけて1カ月に1回のペースでミーティングを持ち,基本契約や守秘義務,NDAなどの基本項目を詰めて行った。そして2004年5月に契約した。そのVDECのメンバーへ試作への参加を募り,6月に試作のための第1回ブリーフィング,9月に第2回ブリーフィングを実施し,現在は試作完了し,評価を進めているところである。
問 今回ASPLAシャトルを利用することになった理由は何か。
 これまで0.5〜0.18μmプロセスを提供してもらった各企業にはとても感謝しているが,その一方でこれらのプロセスはいずれも最先端プロセスから1〜0.5世代遅れたプロセスである。このため,最先端プロセスを利用した設計が困難な状況があった。もちろん,設計するチップや開発した設計技術が最先端プロセスを必要としない場合もある。例えば,アナログ回路やイメージ・センサー,またデジタルでも非同期回路といった技術は90nmといった最先端プロセスは,必ずしも必要としてない。このような設計技術の検証やチップ試作では,これまでのプロセスで十分である。しかし,デジタル回路の多くやRF回路SoC向けのアナログ設計技術の進展には最先端プロセスを利用した設計が必要になる。
問 一部の技術者からは,最先端プロセスがなくても研究のしようはいくらでもあるとの指摘がある。
 確かに設計してシミュレーション結果だけで検証する方法や,最先端プロセスを使わずに奇抜なアイディアで最先端プロセス並みの性能を出す研究などである。しかし,このような方法が日本のLSI産業の競争力強化に役立つのだろうか。シミュレーション結果だけでは,試作結果を持っている技術者と議論にならない場合が多い。また,最先端プロセスを使えば達成できる性能と分かっている場合,あえてそれを使わないアイディアは,アイディアそれ自身を思い付いたという功績は評価できるが,アイディアそのものが実用的とは言いにくい。実際に存在する最先端プロセスなら,それを使いこなす,もしくはそれをさらに高性能化する技術を生み出すのが本道だろう。
問 日本の大学のLSI設計者はそのような研究に取り組むためのインフラを与えられていなかった。
 全く与えられていなかったと言うのは言いすぎだが,十分だったとは言えない。これは逆に言えば,大学の研究者に「できなくてもしょうがない」という言い訳の余地を与えていたとも言える。今後は,ASPLAシャトルの90nmプロセスを利用できるのだから,産業界や海外とも肩を並べた環境で研究できる。すなわち,大学の研究者も,これからは成果が出ないと言い訳が効かない状況と言える。大学の研究者にとって,これからが正念場と言える。
問 ASPLAへの要望はないか。
 第1に,今回のスキームを長期間にわたって継続して欲しい。90nmの実力を本当に引き出す設計技術を確立するには,おそらく長い年月が必要だろう。このための試作の場として大学やベンチャ企業への門戸を開いたままにして欲しい。その上で,可能ならば,各種プロセス・バリエーションを増やして欲しい。

東京大学助教授,池田 誠氏 東京大学助教授
池田 誠氏
1991年 東京大学工学部電子工学科 卒業
1996年 東京大学大学院工学系研究科
    電子工学専攻博士課程修了 博士(工学)
1996年4月 東京大学 助手
1996年10月 東京大学
      大規模集積システム設計教育研究センター 助手
1998年1月 東京大学 講師
2001年4月1日 東京大学 助教授
現在に至る
その間,2001年3月から2002年3月まで1年間,英国ケンブリッジ大学に客員研究員として長期出張。専門は大規模集積回路の設計最適化



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