
電機メーカーの「顔」であるテレビ関連の展示は,各社とも例年以上に力が入っていた。特に,テレビの画質を左右するパネルについては,例年通り多くの耳目が集まった。これに加え今回は,テレビをブロードバンド対応端末に脱皮させようという,国内の大手テレビ・メーカーらの共同プロジェクトであるポータル・サービスの取り組みも話題となった。
パネル関連の展示で最も多くの来場者を集めたのがSEDパネルだろう。キヤノンと東芝の合弁会社「SED」は,量産当初の品種と位置付ける55型のフルHD(1920×1080画素)品の映像を初めて披露した(図1)。前回のCEATECでは,55型品についてはモックアップの展示にとどまり,映像を表示させることはなかった。
SEDパネルの最大のウリは,「ほかの方式の薄型パネルと最後の数万円まで競わずとも,多少高くても売れる」(SEDの前社長で,現在はキヤノンの研究開発部門で次世代SEDの開発に携わる鵜澤俊一氏)と胸を張るほどの画質の高さである。そのため,量産品種と位置付ける55型品の映像の出来栄えを確認しようと,多くのディスプレイ技術者の視線が注がれた。
今回の画質に対する周囲の反応はさまざまだ。CRTに近い映像のメリハリを評価する声がある一方で,「黒浮き」を指摘する技術者も少なくなかった。55型品のコントラスト比(白輝度と黒輝度の比)は5万対1で,これまで披露していた36型品の10万対1より低くなった。白輝度はほぼ同等であることから,計算上は黒輝度が高まったことになる。「数値だけの比較ではなく,従来の36型品よりも見た目で明らかに黒が浮いているのが分かる」(あるPDPメーカーの技術者)。たとえ画面寸法や画素数が変わったとしても,いったん「10万対1」を大きくアピールした以上,これがSEDパネルにとって最低限クリアすべきハードルになっているといえそうだ。キヤノンの鵜澤氏は「展示品は開発途中の段階。量産までに,まだ性能は向上する」とした。
SEDパネルの量産時期については, 2006年3月にSEDテレビの発売延期を発表したときに示した通りであることを,今回のCEATECであらためて強調した。「2007年末にSEDテレビの発売を始め,2008年内に本格量産に入る」(SED 代表取締役社長の福間和則氏)。現在,着工時期が未定となっている東芝・姫路工場に建設予定のSEDパネルの本格量産ラインについては,2006年内にも着工することになりそうだ。「2008年内に本格量産に入るとなれば,そろそろ着工のリミットだろう」(SEDパネルの関係者)。
SEDパネルが実用化に向けた動きを見せた一方で,現行の液晶パネルやPDPといったパネル技術については,次世代を見据えた開発品が姿を見せ始めた。特に,前回のCEATECまでに「フルHD」に向けた開発競争がひと段落した今回,焦点となったキーワードは「4K×2K」である。
ハリウッドの大手映画会社が共同で設立した業界団体Digital Cinema Initiative,LLC(DCI)の4Kデジタル・シネマ規格に当たる4096×2160画素の液晶パネルを,シャープが試作した(図2(a))。直視型のディスプレイとして,4Kデジタル・シネマに対応する画素数を実現したのは業界初となる。台湾ChiMei Optoelectronics Corp.(CMO)は2005年,フルHDのちょうど4倍に当たる3840×2160画素の56型液晶パネルを開発しているが,これをしのぐ画素数である。
パネルは「ASV」液晶であり,現行品と同等の技術を利用した。実用化への課題として「パネルの生産性(歩留まり)の確保と,フルHD品の4倍以上になる周波数を処理する駆動回路」(シャープ)を挙げた。
PDPでも,4K×2Kを見据えた開発品が登場した。パイオニアが披露した,画素ピッチが0.36mmと細かい試作品である(図2(b))。試作品は18型の1150×540画素であるが,この画素ピッチを維持して画面寸法を大きくすれば,PDPとして一般的な60型台で4K×2Kの画素数を実現できる。
高精細化を実現した技術の詳細は非公開とするが,大きく三つのポイントを挙げる。第1は,新材料や新構造の開発。放電に寄与する材料や電極の構造を改良し,放電遅れを現行品の1/3に短縮した。第2は高速蛍光体の開発。赤色と緑色の残光時間を従来比で30%短縮したという。そして第3が,隔壁の微細化である。
4K×2Kを見据えた展示品は,パネルだけではなかった。日立製作所は,将来のテレビへの搭載を想定した映像処理技術のデモを実演した(図3)。入力した映像信号の解像感を高める技術である。「フルHDを超える画素数を備えたパネルは近く登場するだろう。しかし,放送など入力信号の画素数については当面はHDTVのままで変化しない。このギャップを埋める映像処理技術が必要になる」(同社)との考えから今回初めて披露した。
実用化に向けた課題として,動きのない映像や動きの激しい映像への対策を挙げる。デモでは,比較的動きの滑らかな映像を利用していたが,今後は激しく動く映像でも今回の処理技術の肝である動きベクトルの検出精度を上げていきたいという。
前回のCEATECでは,比較展示をめぐるPDP陣営と液晶陣営のにらみ合いが話題となった。しかし今回は,前回の騒動を受けてCEATEC事務局が比較展示のルールを厳格化したため,波紋を呼ぶ比較展示は見受けられなかった。前回のPDP陣営の1社であったパイオニアは今回,最新の開発品のコントラスト比の高さを液晶パネルと比較するため,自社のPDPを液晶パネル相当とするコントラスト比に調整して比較展示した(図4)。
パイオニアは,今回の展示において「実測によるコントラスト比」である点を強くアピールした。「最近は,コントラスト比100万対1や10万対1などの表現が飛び交っている。しかし,こんな値は実測できない」(同社)。今回のPDPは,最小で0.05cd/m2まで測定できる最新型の輝度計を利用して,黒輝度の測定値が0.05cd/m2(輝度は1000cd/m2)だったことから,コントラスト比を「2万対1以上」と表現したという。今回のCEATECでは,こうしたディスプレイのコントラスト比の向上を背景に,トプコンテクノハウスが最小で0.005cd/m2までの輝度を測定できる輝度計を参考出展した。
このほか,日本ビクターが開発した,世界最大となる110型のリアプロにも注目が集まった。スクリーンは,張り合わせではなく単一部品である。凸版印刷が,この大きさのスクリーンを製造する技術を確立したという。
注1) デジタルテレビ情報化研究会は,2003年4月にシャープ,ソニー,東芝,日立製作所,松下電器産業の5社が発起人となって設立された。デジタル・テレビのWWWブラウザーで表示するHTMLの標準仕様を策定することが狙いだった。2003年10月に「ネットTV端末仕様書1.0版」を発行し,2005年8月にその拡張版である「同2.0版」を発行した。2.0版では,印刷機能,ファイルのアップロード/ダウンロード機能,WWWブラウザーの拡張機能を利用するためのプラグイン機能などを追加した。「ネットTV端末ストリーミングコーデック仕様」および「同プロトコル仕様」は現在策定中であり,2006年5月にその骨子を発行した。2007年4月に正式版を公開予定である。TVPSは,ネットTV端末仕様書で定められた仕様のうち,どの部分を必須とし,どの部分をオプションとするかはまだ決めていない。