
好調なカー・エレクトロニクス市場を背景に,今回のCEATECでは例年以上に車載機器/部品が数多く見受けられた。娯楽性を高める,小型化を追求する,性能をさらに高める,といったことを狙う展示がめじろ押しだった。
娯楽性を高めた車載機器では,パイオニアのカーナビと車載ロボットが多くの来場者の注目を集めた。カーナビは立体映像システムを組み込んだもの。自動車のインスツルメンツ・パネルの中央下側に通常の地図情報を映す液晶パネルを配置し,これとは別に中央前方に立体映像を映し出せる液晶パネルを設けた(図21(a))。例えば,地図情報に盛り込んだ建物や交差点の映像を,地図情報を表示する液晶パネル上に「浮いている」かのように立体的に映し出す。よりリアルに浮いていると人間が感じるように映像の陰影を工夫した上,映像の影があたかも地図情報用の液晶パネルに映っているかのように見せている。
この立体映像システムは,パイオニアが「3Dフローティングビジョン」と呼ぶもの。立体映像用の液晶パネルに小型レンズを並べたパネルを重ねている。小型レンズにより,立体映像用液晶パネルの画像が同パネルから5cm程度の位置で結像し,液晶パネルの画像が立体的に映るようにした。
車載ロボットは,自動車のダッシュボード上に設置して運転支援に使う(図21(b))。搭載したCMOSセンサを使って車両進行方向の風景を撮影し,交通信号の状況を常時監視する。例えば,赤信号を検知した場合にはロボットに搭載した発光ダイード(LED)が赤色に点灯する。青信号に変わると青色の点灯に切り替わる上,車両が発進しない場合は運転者側にロボットが振り向いて発進を促す。ロボットは加速度センサも搭載している。急加速や急減速といった走行があったときには,ロボットが両羽を広げて驚いたような動きをする。「運転者に『かわいいロボットをビックリさせてしまった』と思わせることで,優しい運転を心掛けてもらえるようにした」(パイオニアの説明員)という。
小型化を追求する車載部品としては,東光とミツミ電機が出展したアンテナが目を引いた。東光が参考出展したセラミック・アンテナは,GPS用の1.58GHz帯,電波ビーコン対応VICS用の2.5GHz帯,ETC用の5.8GHz帯の3波長に対応する(図22(a))。VICS対応のカーナビやETCは普及が進んでいるが,現状はカーナビ向けのGPS用アンテナ,電波ビーコン用アンテナ,ETC向けのアンテナを別モジュールで用意している。これらを1個にまとめることで,自動車へのアンテナの実装スペースを減らすことを狙う。
ミツミ電機は,個別に製造したGPS用アンテナとETC用アンテナを1モジュールに実装した(図22(b))。アンテナ特性は実用水準を確保しており,要望があれば製品化を検討するという。今後,電波ビーコンのアンテナも1モジュールにまとめることも考えている。今回のモジュールの台座部分は約70mm四方であり,仮に電波ビーコン用アンテナを加えて実装することになっても,寸法は台座内に収まる。
性能を高めた例としては,アルプス電気が広画角の車載カメラを,ルネサス テクノロジが画像処理能力を高めたカーナビ向けアプリケーション・プロセサを披露した。アルプス電気の車載カメラの特徴は,画角が190度と広いこと(図23(a))。従来は130度だった。直径17mmで非球面形状の広角レンズでまずは画角を広げ,続いて画像処理技術によって歪んだ画像を補正する。搭載するCCDの画素数を130万に高めたことで画像処理するデータ量が豊富になり,鮮明な映像を作り出せるようになったという。2007年初頭をメドに,サンプル出荷を始める予定。
そのほか車載カメラとしては,京セラが容積を従来品に比べて約半分に減らした試作品を出展した。25万画素の1/4型CCDを搭載する。詳細は未公表だが,光学設計や電子部品の実装技術,機構部品を工夫して小型化したという。
ルネサス テクノロジが,最大動作周波数が600MHzで1GIPS以上の処理能力の「SH7774」を使った画像処理を実演した。道路をとらえたカメラ映像から白線を認識すると同時に,別カメラで来場者の顔を認識する処理を,1個のSH7774で実行した(図23(b))。白線は,NTSC規格の映像の中から15フレーム/秒で認識していた。顔認識を同時に実行しなければ,30フレーム/秒まで処理能力を上げられる。
ルネサス テクノロジは,車内LANインタフェース規格「FlexRay」を採用した電動カートも展示し,今後普及が見込まれる駆動制御技術をデモンストレーションした。電動カートのステアリングとアクセル,ブレーキの各制御にFlexRayを使った(図24)。展示ブースでは各制御が良好に動作することを実演するとともに,実際に電動カートを走行させている映像をビデオで紹介していた。
搭載する電子制御ユニット(ECU)はセンサECU,ステアリングECU,アクセル/ブレーキECUの三つ。センサECUが検知するステアリング角度やアクセル開度,ブレーキ・ペダル位置のデータをFlexRayを使ってステアリングECUとアクセル/ブレーキECUに伝える。それらのデータを基にステアリングとアクセル/ブレーキをそれぞれ制御する。